カテゴリ「ふるさとの森づくり」の2096件の記事

2019年12月 4日 (水)

世界の公害問題と向き合う「パリ協定」始動年へ、“森に寄り添う暮らし”を世界へ

 当委員会は12月10日で設立15年迎える。12月8日(日)は15年間継続して支えてくれた方々へ15年間の感謝をお伝えする。

0552812_139 2005年春の第1回植樹祭

Photo 60数年前の土壌つくり

 天空の森で私たちの森づくり運動を見守ってくれている森びと設立メンバーの故・岸井成格さん、角岸幸三さん、宮下正次さん、竹内 巧さん、そして昨日(3日)には力強い握り拳で“現場、現場で森づくりを続けよう!”と激励してくれた宮脇昭さん。

20081 2008年本格的に植え始めたみちのくの植樹祭

 困難と言われた足尾銅山跡地の荒廃地に、この諸先輩たちと起ち、ふるさとの木による命の森づくりを始めた。その諸先輩たちの心の底には、「山を荒らさず、川を荒らさず、村を破らず、人を殺さざるべし」と詠った田中正造の魂があった気がする。

2014 2014年「民衆の杜」の植樹始まり

 その意志は15年前の設立日に示されていると思う。12月10日は田中正造が明治天皇へ、足尾鉱毒事件の解決を訴えるために直訴を決行した日である。直訴から一世紀以上過ぎた今、公害問題は世界中の公害問題になってしまった。

270221 南相馬市の鎮魂復興市民植樹祭へ相農生とサポート研修

 国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP25)の真っただ中で「感謝の集い」を開催する。「パリ協定」で約束した締約国の温暖化防止策では世界の気温上昇を2度以下に下げられない。2018年の二酸化炭素排出量は増え、温室効果ガスの濃度も濃くなった。

2013 生態豊かな森を子供たちへプレゼントしたい2013年

Photo_2 マレーシアにふるさとの木の森を2014年

 全ての生きもの命の営みの基盤であるこの地球をこれ以上温めてはならない。“温暖化防止は待ったなし!”と言われている。「森びと設立15年感謝の集い」では、今、森びとは何をするか、ということを鮮明にできればと願っている。(理事 大野昭彦)

2019年12月 3日 (火)

“落ち葉はゴミではありません”・・・「森びとの心構え」その⑥

2 2018年冬

 「枝揺れて ざわつく森に 冬将軍」。先月末の足尾・松木沢に雪が降った。この句はその様子を書いたブログを読んで詠ったものだが、“才能なし!”でしょう。

Photo  この時季、木々たちの足元を温めているのが落ち葉。15年間生きた木はどれ位の葉を落とすのかは数えたことないが、15年前に植えた樹高60㌢ほどの幼木の葉は150枚ほどだった。

Photo_2  落ち葉はゴミだ!として嫌がる人が多いが、新緑や紅葉の時の“春色や秋色に感動したこと、その感動で創作意欲をかきたてられたこと、そして友達や家族と楽しいひと時を過ごせた事などから、落ち葉を考えてみてほしい。

Photo_3足尾に生きているダニ

 葉は、春になると私たちの命に欠かせない酸素の生産に入り、熱くなると蒸散して気温の調整をしてくれる。世界各国の暮らしを脅かしている異常気象の原因である温室効果ガス(二酸化炭素)も吸収している。

Photo_4 ワラジムシ

Photo_5 ミミズの食餌中

 ここ数年、大雨の影響で土砂崩壊、土砂流出が日本のあちこちで起きているが、流されているのは私たちの命を育む土とその土を生産している生きものたちも被害にあっている。枯葉で焼いた焼き芋の味はこれからが楽しめる本番。落ち葉の灰は土と混ざり合って草木の栄養にもなっている。

 「森よ!わたしたちのふるさになっておくれ」。(理事 高橋佳夫)

2019年12月 1日 (日)

“言いたい事は言い、決めたことはやり抜く”・・・「森びとの心構え」その⑤

14 2014年「民衆の杜」

192014 2019年の「民衆の杜」

 自然界の森は天然更新でつくられているが、足尾銅山跡地のように荒廃地では気が遠くなる時間を要する。当会が森づくりをしている足尾・松木沢から見える中倉山の北斜面では春になると氷が解けて土砂が流れ、雨が降るとその度に土砂が流れて60年前に生やした草地が流されている。その斜面近くでは、土砂が流された地に緑化作業が行われている。岩に吹き付けられた草の種は3ケ月も過ぎると芽を出している。

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P3185561 毎年崩れ落ちる土砂

 私たちの森づくりは近代的な緑化とはいかない。傾斜が30度以上ある斜面の草を刈り、間伐材で階段を造り、下から穴を掘って土を入れ、苗木を植えた。そのための土を運び上げ、食害防止柵を支える鉄筋の支柱をも荷揚げしてきた。

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Pb095622  私たちはあるべき理論だけでは森が育たないということを学んだ。森作業に集う様々な意見や性格の違う“森とも”との議論の積み重ねと、決めたことは最後までやり抜くという“暗黙の森びとルール”を尊重するスタッフたちが森を育てた。

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2  宮脇先生の森づくりへの志を信じ、難しい荒廃地での本物の森を1年間に100日ほどの作業を15年間繰り返してきた。そこには仲間同士の“目配り、気配り、心配り”があって、スタッフたちの健康を管理し、怪我を防いできた。草刈りをするにも、機械を使うのか、鎌で刈るのか等の話し合いをする等、作業場の状況と担当者の技術力、その日の天気等をよみながら森作業を行ってきた。その繰り返しの15年間の知恵が、“森と寄り添う暮らしの心構え”となっている。(理事 高橋佳夫)

2019年11月29日 (金)

氷点下の中で育てる南相馬市・鎮魂復興の森の防潮堤苗木

 今日(11/29)の南相馬市の朝の気温は氷点下4度、手がかじかむ冷えでした。9時30分に応援隊スタッフは育苗場に集合、ホットコーヒーを飲みながら森作業の打合せを行いました。

1129  作業は、越冬対策として霜から苗木を守るためのネット張りを行いました。すでにポット内は寒さのため土の表面は霜で凍っていました。さらに苗木の整理・チェックや倉庫内の清掃及び道具類のメンテナンスとタンクへの給水作業を行い、本日の作業は終わりました。

1129_2 ポットに霜が

1129_3  12月15日には今年最後の年末の森作業が9時から行います。JR東労組の各地方からプレゼントされた貴重な苗木、群馬県から運んでくれた長井さんからいただいた苗木への思いを受け止めて、応援隊スタッフは苗木を育てます。

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1129_5  今日の作業の応援隊スタッフは、松林、岩橋、筆者でした。(報告 東城敏男)

“命を支える森は人間の都合ではつくれない”・・・・・「森びとの心構え」その④

 巨大台風や大雨で土砂が流され、甚大な被害をうけている私たち。足尾・松木沢の周辺でも土砂が流されている箇所がある。私たちが2005年から育てている「臼沢の森」は「土砂流出防備保護林」として栃木県に管理されている。お陰様でこの森では土砂流出がない。森内では大きな岩を幹がガードし、地表には苔が生えている。

Photo_5 間もなく「臼沢の森」にも雪が降る

Photo_6  苔は地に水分が少なければ生えていけない。この地には水分が多く含まれているのだろう。

Photo_7  これまで森づくりには私たちの反省がある。苗木を植えてから最低3年間位は周りの草を刈らなければ苗木は草との競争に負け、寒風吹く中でも獣害防止のチェックを怠れば苗木の幹はかじられる。ところが、私たちは色々な理由を付けて草刈りや獣害防止作業をいい加減にしてきた時があった。

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Cimg0201  人間の都合で苗木たちの生長を妨害してきた体験をしてきた。私たちの命の営みを支えている森を育てていくためには、足尾・松木沢の生きものたちの一員としての森への働きかけが必須である。そこには“命を育む人間の我慢・自己犠牲”が伴うようだ。

Photo_8 生存が不安定な地球を子供たちへ渡せない。(理事 高橋佳夫)

岩手山麓の「八幡平ふるさとの森」を見護る活動を話し合う

 昨日(11/28)、岩手山麓の八幡平の森の木々たちは間もなく深い雪に埋もれます。

Photo 昨年の岩手山

 今年3月、みちのく事務所を閉所しましたので、元所長の田中さん、秋田県ファンクラブの今村さんと「八幡平ふるさとの森」を育樹・観察する打ち合わせをしました。まずは、圧雪と凍結、寒風に耐えぬき、強酸性の土壌という厳しい環境にありながら生き抜いている木々たちに応える義務があることを意思統一しました。また、「半世紀前に失われた“光輝くわが故郷“を願った」元松尾鉱山の学校を卒業した児童の思い、毎年参加してくれた植林ボランティアの願いを裏切らないように、この森を育樹・観察していくことにしました。

Photo_2 春の岩手山

  そのための母体として「森びとファンクラブ」の結成と活動計画を今後話し合っていくことにしました。

Photo_4  盛岡市内から岩手山方面を眺めると、以前に見た岩手山の雄々しい姿が頭に浮かびました。

(報告 大野昭彦)

2019年11月28日 (木)

“命をつなぐ営みの循環を変えてはならない”・・・・・「森びとの心構え」その③

 当会の活動足尾・松木沢フィールドは雪が少ない。鹿にとっては餌を探しやすいのか、冬になると雪深い尾瀬の方から松木沢に鹿が集まる。禁漁区ということもあって、本格的な冬を迎えるこれからは鹿の群れに遭うことが多い。

2010 「松木の杜」2010年

201910 「松木の杜」2019年

 積雪が多い年には鹿の死骸が目に付く。春になると死骸から異臭が出て、その臭いで気分を害するので穴を掘って死骸を埋めてやったことがある。ところが翌日になるとその穴は掘り返され、死骸は何者かに食べられていた。その後は、死骸を埋めず、死骸は森の中へ移動している。

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3_1  3年~4年前にはキツネが「森びと広場」に顔を見せていたが、その後は足尾ダム周辺まで縄張りを拡げ、人がビニールを持っているとそれを奪おうとしているという。先月には、足尾町赤倉周辺のゴミ箱を漁っていた。

Photo_2  死骸の臭いは気分を害するとか、可愛いからと言って餌を与えてしまうと、生きものたちの命をつなぐ営みの循環を狂わせてしまうことに気づかされている。

3_2  生きものたちの複雑で、未知の絶妙なバランスが、私たちの暮らしに無関係ではないということを実感している。「食物連鎖」の頂点にいる私たちもこの循環のなかで生かされている。人間の都合も“ほどほど”にしなければ、”バチが当たる”事を覚悟しなければならない。“生物社会の一員に過ぎない”私たちである。(理事 高橋佳夫)

2019年11月27日 (水)

“森の恵みは独り占めにしない”・・・・・「森びとの心構え」その②

 15年間で7万本以上の木を足尾・松木沢に植えながら森に寄り添って生きる心を養ってきたが、“森びとの心構え”とはどのようなことか。「気候非常事態」とその対策は“待ったなし!”というこの世の中に生きる私たちにとって、それは大切な宝物のように思う。

2005 2005年の臼沢の草地

2019

2019_2 写真上:2019年の臼沢の森階段と下:臼沢の森の紅葉

 足尾・松木沢の森と草地には、間もなく冬将軍がやってくる。熊は冬眠に入るが、鹿は尾瀬の方からも積雪の浅い松木沢にやってくる。猿も寒風の中で命をつなぐ餌を探し求める。カワラヒワの群れはヤシャブシの実をついばみ、春を待つ。春になると、猿はいち早く桜の蜜を舐め、体力を回復させているようだ。

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7  森を育てている当会にとっては、鹿や猿そしてウサギ等から苗木を守らなければならない。寒風の中で、獣の侵入を防ぐ柵やネットのチェックと補強作業をやってきた。そこで気づかされたことは、完璧に獣害を防ぐということはできないということであり、森の恵みは独り占めにしてはいけないということであった。

Photo_2  私たちが植えた木々の樹皮や実を鹿や猿等が食べてくれることは、全ての生きものたちの命をつなぐ営みの循環を護っていることではないか、という事実に立つことができたからである。

2  そのように考えると、地球(森や海)は独り占めにしてはならないのではないかと思う。自然の恵みはすべての生きものたちの“共有資源”という視点に立って、“森に寄り添う暮らし(社会)”を考えてみたい。(理事 高橋佳夫)

2019年11月25日 (月)

晩秋の足尾・松木沢は心安らぐ世界

 11月23日、足尾に住居を移してから、ひとりで松木沢を歩いた。天気は、山々や草を見ると、秋の終わりを悲しむかのような、冷たい小雨の降る生憎であった。それが幸いして思わず立ち止まってしまう景色に遭えた。その景色は、中倉山や足尾ジャンダルムも、そして秋の名残の「臼沢の森」は霧に霞んで一幅の絵を見ているような錯覚に陥った。思わず「いいなぁ!」と呟いてしまった。

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 歩き始めるとヤシャブシの実から滴り落ちる雨、草紅葉の一角を占めるチカラシバの繊毛に溜まる沢山の雨滴、その上には紅葉の盛りを過ぎた緑、黄、赤のグラデーションを魅せているヤマモミジ。その下に目を落とすと、緑の苔の絨毯に舞い降りたモミジの葉、そのひとつ一つが心を和ませ、安らぎを与えてくれた。

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 一番心に染みたのは、「臼沢の森」に上る階段に降り積もった落ち葉だった。15年間の森づくりの辛さや悩んだ事が頭に浮かび、「ここまでやってきて良かった!」という喜びが胸を熱くした。

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 仲間が待つ「みちくさ」に戻ってくると、石にペイントした”オジサン達”が出迎えてくれる。そこに幾つかベンチが設置されている。今年は出遅れてしまったが、来年は一人のハイカーとして座って、松木の秋を満喫してみたい。

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 冬将軍が間もなくやってくる時の気がかりは、「みちくさ」前のクスノキだ。昨年は、松村宗雄スタッフの渾身の作である藁束で作った”モガリ”で冬の寒さをしのいできたが、今年は、その木が3メートルを超えた。

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 防寒対策は11月30日に行うというので、スタッフたちの和の技と「足尾isハートランド」のシンボルツリーとなってほしいクスノキへの情熱を楽しみにしている。(報告 橋倉喜一)

2019年11月24日 (日)

来月10日は森びと設立15年、支えてくれました森びとに感謝します

Photo 「臼澤の森」

Photo_2 「民衆の杜」

 明日から2週間もすると当会設立15年(12/10)である。足尾の森はこげ茶色の森から灰色に変わり、様々な寒風の声で合唱がはじまる。15年前は様々な歌声はなく、ヒューという草地の声だけだった気がする。

Photo_3 センダイムシクイ

Photo_4 ニホンカモシカ

Photo_5 バッタの仲間

 15年間で1万人以上の森ともに育てられている森では、ツキノワグマから目に見えない土壌動物たちの命をつなぐ営みがある。「臼沢の森」では大雨にも負けない機能を発揮し、土砂をガードしてくれている。コナラやカエデの仲間は実生が生え、いずれ来る森の主役の番を待っている。

2014 2014年の「松木の杜」

192019102 2019年の「松木の杜」

 当会の合言葉は「山と心に木を植える」としているが、1年間に100日以上も足尾の森作業をしているスタッフたちの心にも木が植えられている。価値観の違う大人たちが心をひとつにして15年間も森作業をしているのだから、そこには“森に寄り添って生きる人間の心構え”が培われてきた。

P6305453  常に、“目配り、気配り、心配り”を持って、自然に向き合いながら森作業を体験しながら積み重ねてきた“森びとの心構え”は、次世代に遺す大切な“森びとの宝物”のようだ。

15年間の森づくりを支えてくれた皆様に、心から感謝申し上げます。(理事 高橋佳夫)

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