“森の恵みは独り占めにしない”・・・・・「森びとの心構え」その②
15年間で7万本以上の木を足尾・松木沢に植えながら森に寄り添って生きる心を養ってきたが、“森びとの心構え”とはどのようなことか。「気候非常事態」とその対策は“待ったなし!”というこの世の中に生きる私たちにとって、それは大切な宝物のように思う。
足尾・松木沢の森と草地には、間もなく冬将軍がやってくる。熊は冬眠に入るが、鹿は尾瀬の方からも積雪の浅い松木沢にやってくる。猿も寒風の中で命をつなぐ餌を探し求める。カワラヒワの群れはヤシャブシの実をついばみ、春を待つ。春になると、猿はいち早く桜の蜜を舐め、体力を回復させているようだ。
森を育てている当会にとっては、鹿や猿そしてウサギ等から苗木を守らなければならない。寒風の中で、獣の侵入を防ぐ柵やネットのチェックと補強作業をやってきた。そこで気づかされたことは、完璧に獣害を防ぐということはできないということであり、森の恵みは独り占めにしてはいけないということであった。
私たちが植えた木々の樹皮や実を鹿や猿等が食べてくれることは、全ての生きものたちの命をつなぐ営みの循環を護っていることではないか、という事実に立つことができたからである。
そのように考えると、地球(森や海)は独り占めにしてはならないのではないかと思う。自然の恵みはすべての生きものたちの“共有資源”という視点に立って、“森に寄り添う暮らし(社会)”を考えてみたい。(理事 高橋佳夫)
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