2026年10月26日 (月)

雨の足尾で出会った花たち。誰かに見せたいアサガオ、根づいたクロモジ

 「誰かに見せてあげたいと思っていたの。寄ってもらって観てくれて本当に良かった!」と、足尾に暮らすTさんが、うれしそうに話してくれました。

 10月25日(日)、帰りがけに立ち寄ったTさん宅で出会ったのは、午後3時を過ぎてもきれいな花を咲かせていたアサガオです。曇りや雨の日だったからこそ、朝から咲き続けていたといいます。

 雨の足尾で出会ったのは、アサガオだけではありません。草むらに隠れていたカワラナデシコ、元気に根づいたクロモジ。来訪者のいない静かな一日でしたが、自然の中には心を和ませてくれる発見が待っていました。

 午前8時30分。夜来の雨は止んでいましたが、足尾ダムの上には霧がかかり、気温は10℃。肌寒い朝でした。松木郷の草原では、雨に濡れたチカラシバが、かすかに紫色を帯びていました。朝日が差せば、もっと美しく輝くのに――そんな思いを抱きながら、静かな草原を眺めました。

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 この日、「銅親水公園」の駐車場に止まっていた車はわずか2台。天候も悪く、紅葉もこれからという時期だったため、訪れる人は少なそうです。「みちくさ」の留守番を武田さんにお願いし、橋倉は臼沢西の森で行われている柵の修繕作業に合流しました。

臼沢西の森へ向かう途中、眼下に見える「みちくさ」や雲集亭、作業詰所が、いつもとは違った新鮮な景色に見えました。しかし、現場では大量の岩が崩れ、シカなどの食害から植えた木々を守る柵がなぎ倒されていました。そこで、壊れた柵の外側に新たな柵を設置する作業が進められました。育ち始めた木々を守り、森の成長を支えるためには、植樹後もこうした手入れを続ける必要があります。修繕作業の詳しい様子は、森びとブログの記事をご覧ください。

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 正午ごろの「みちくさ」。気温は朝より上がったものの、昼食を終えるころには雨が降り始めました。外壁に目を向けると、カマキリが雨宿りをするように、必死に張りついていました。人にとっては肌寒く、活動しにくい天気でも、小さな生きものたちはそれぞれの場所で過ごしています。

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 この日は来訪者が一人もなく、少し寂しい一日となりました。そこで、武田と橋倉の二人は、10月上旬に仕込んでおいたカラタチの実のジュースを味見することにしました。材料はカラタチの実と氷砂糖、水だけ。口にすると酸味があり、そのあとに苦みも感じます。思い描いていた甘いジュースとは少し違う、野趣あふれる味わいでした。森の周辺には、普段あまり目を向けない植物にも、さまざまな恵みがあります。ただし、野生植物の実を利用する際は、種類の確認や食用の安全性に十分注意することも大切です。

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 午後、雨が小降りになったのを見計らい、「こころの園」の階段脇で草刈りを行いました。すると、草むらの中から、ピンク色の可憐な花が姿を現しました。カワラナデシコです。来訪者がなく、少しがっかりしていたところに、思いがけない出会いがありました。人が訪れるのを待つだけでなく、足元に目を向ければ、自然のほうからうれしい発見を届けてくれるのです。

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9 さらに、もう一つうれしい発見がありました。今市のSさんからいただき、「民集の杜・西」に二つに分けて植えたクロモジが、元気に根づいていたのです。クロモジは、香りのよい枝や葉でも知られる樹木です。松木郷では初めて植えた木が、新しい場所で根を張り、育ち始めていました。参加スタッフ全員でその姿を確かめ、これからの成長に期待を膨らませました。人から人へと託された木が、新しい土地で育っていく。こうしたつながりも、森づくりの大きな喜びです。

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 一日の終わりに、もう一つ思いがけない出会いがありました。帰りがけに足尾のTさん宅へ立ち寄ると、玄関脇から軒先へと伸びたツルに、たくさんのアサガオが咲いていました。午後3時を過ぎていたにもかかわらず、色鮮やかな花がいくつも開いています。昼間にはしぼんでしまうと思っていたので、驚きました。Tさんは、こう話してくれました。

 「今日は曇りや雨の天気だったので、朝からずっと咲いていてきれいなの。誰かに見せてあげたいと思っていたの。寄ってもらって観てくれて本当に良かった!」

花を大切に育て、その美しさを誰かと分かち合いたい。Tさんの言葉から、草花への深い愛情が伝わってきました。訪れる人がいないと寂しく感じていた一日でしたが、最後に待っていたのは、花を通じて人と人の心がつながるひとときでした。

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Photo_7 雨の足尾で出会った、チカラシバ、カワラナデシコ、クロモジ、そしてアサガオ。森の中で育つ木々を守り、草花の姿に気づき、その喜びを誰かと分かち合う。森づくりは、木を植え育てるだけでなく、自然を通じて人と人とのつながりを育むことでもあるのだと感じた一日でした。皆さんも足尾・松木郷を訪れ、季節ごとに変わる草花や木々の姿を探してみませんか。思いがけない出会いが、きっと待っています。

 この日の「みちくさ」の舎人は、武田と橋倉(筆者)でした。

臼沢西の森、里親植樹の木々が大きく育っています!

 木を植えてから年月がたつと、森はどのように変わっていくのでしょうか。足尾・臼沢西の森では里親植樹で植えた木々が大きく育っています。早くに植えたコブシは高さ約4メートル、幹の直径は約7センチに生長しました。周囲の木々の葉も赤や黄色に色づき始め、少しずつ森らしい姿へと変わっています。

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Img_9785 午前中は、臼沢西の森に設置している獣害柵の修繕に取り組みました。シカ等による食害から植えた木々を守るための柵です。現場では、落石によって柵が倒れ、修繕できない状態になっていました。そこで、壊れた柵をそのまま直せず、手前に新しい柵を設けました。金網や鉄筋などの資材を車に積み、全員で斜面を運び上げて作業を開始。新たに8枚の金網を設置しました。さらに、再び落石があった場合に備え、新しい柵と近くの大きな木をロープでつないで補強しました。資材を運び、斜面で作業を続けるうちに、みんな汗だくに。それでもこれから育っていく木々を守るため、一つひとつ作業を進めました。植えた木を大きく育てるには、植樹して終わりではなく、自然の力によって壊れた設備を直し、動物の食害から木々を守る。こうした地道な手入れが、森の生長を支えています。

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Img_9796 臼沢西の森は、コロナ禍で足尾に来ることができない方々のために行った里親植樹によって木々を育ててきた場所です。そこで目を引いたのが、早くに植えたコブシの生長です。幹の直径は約7センチ、高さは約4メートル。小さな苗木が年月を重ねてこれほど大きくなりました。周囲を見渡すと、まだ小さな木々の葉も赤や黄色に色づき、秋の訪れを知らせています。大きく育った木も、これから生長する木も、それぞれがこの場所の森をつくっています。練づくりは苗木を植えるだけでなく、その先の生長を見守り、次の世代へ森をつないでいくことでもあります。やがて木々が枝葉を広げ、多くの生きものが暮らす森へと育っていく。そんな未来を思い描きながら、私たちは森びと広場へ戻りました。

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 天気予報どおり、正午ごろから雨が降り始めました。昼の気温は20℃。天候に合わせて午後の作業を変更し、作業小屋で11月3日開催の中倉山のブナ保護の際に使用する植生袋づくりを行いました。植生袋には、黒土と草の種を入れます。これらを中倉山のブナの根元周辺に設置し、土壌の保護や植物の生育につなげる取り組みです。一つひとつ袋を準備する作業にも、貴重なブナとその周辺の自然を次の世代へ残したいという思いが込められています。

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Img_9828 作業の終わりごろには雨も小降りになり、「こころの園」の西側斜面の草刈りを行いました。草に覆われていた場所から姿を現したのは、黄色く色づいたヤマブキ。そして、可憐な花を咲かせるカワラナデシコです。草を刈ることで、見過ごしていた植物の姿が見えてきました。森の手入れはそこに生きる草花に目を向け、季節ごとの変化を見つけることが前提で、森づくりの楽しみのひとつです。

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 森びと広場では、桜や柿の木の葉が赤く色づき、イチョウの葉も黄色く染まってきました。足元に目を向けると、スギゴケやミズゴケの鮮やかな緑色が目に入ります。ふんわりとした苔の姿にも、雨の日ならではの美しさを感じます。臼沢の森も、これから本格的な紅葉の季節を迎えて森の賑わいをみせてくれます。植えた木が育ち、草花が顔をのぞかせ、季節とともに景色が変わっていく。こうした変化は、森を訪れてこそ出会える発見です。皆さんも、足尾・松木郷を訪れて、小さな秋を探してみませんか。植樹から始まった森がどのように育っているのか、ぜひご自身の目で確かめてみてください。

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Img_9850 この日の森づくりには、清水、大野、鎌田、加賀、田口、橋倉(みちくさから応援)、そして筆者の永島が参加しました。

2026年10月24日 (土)

雨の日の森で考えた、気候危機と私たちにできること

 大雨による浸水、海面上昇、そして地球温暖化。こうしたニュースに触れるたび、「この先、私たちの暮らしや自然はどうなるのだろう」と考えることはないでしょうか。

 10月24日(土)の足尾・松木郷は雨。朝8時30分、気温は13℃。山肌は雨に煙り、肌寒さを感じる朝でした。

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 雨が激しく、外での活動は難しい一日。訪れる人もいなかったため、室内で映像を観ながら、森のこと、地球の未来のことを考えました。最初に観たのは、森びとプロジェクトの10周年を記念して制作されたDVDです。足尾の荒廃した土地に木を植え、森を育ててきた歩みを振り返り、「すごいことをしてきたんだなぁ」と改めて感じました。木を植えることは、苗木を土に植えて終わることではありません。木々が育ち、さまざまな生きものが暮らせる環境をつくり、次の世代へ豊かな自然を引き継いでいくことにつながります。

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 続いて観たのは、2020年にNHK BS1で放送された「気候クライシス IPCC特別報告書からの警告」です。番組では、極地の氷が解けることによる海面上昇や、海岸の浸食で住む場所を移さざるを得ない人々の姿が紹介されていました。日本でも大雨による浸水など、気候変動は私たちの暮らしと無関係ではありません。

 災害から命や暮らしを守る備えは欠かせません。しかし、被害を受けてから対処するだけでなく、温暖化をこれ以上進めないために何ができるのかを考え、行動することも必要です。では、私たちに何ができるのでしょうか。社会の仕組みを変える取り組みも必要です。同時に、自然の変化に目を向け、森を育て、自然と共に生きる暮らしを考えることも、その一歩ではないでしょうか。

 今日は足尾で続けてきた森づくりを振り返りながら、自然を守る活動を未来へつなぐ大切さを改めて感じた一日でした。

    雨が少し小降りになったので、外に出てみました。時折、雄鹿が雌鹿を呼ぶ鳴き声が山に響き、猿たちが歩き回っています。雨に濡れた木々にも、秋の深まりが感じられました。今は桜の葉の赤やシラカンバの黄色が目を引きます。これからモミジやカエデ、カラマツなども色づき、山が鮮やかな秋色に包まれていくことでしょう。森の魅力は、紅葉の美しさだけではありません。季節ごとに変わる木々の姿、動物たちの声、雨の匂い。足を運んで初めて気づく自然の営みがあります。

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 日々の暮らしの中で、自然の変化を感じる時間はありますか。森を歩き、自然に触れることは、私たちの暮らしが自然に支えられていることを見つめ直す機会にもなります。自然を守ることを特別な誰かの活動にとどめず、自分たちの暮らしとつながる問題として考えてみませんか。秋が深まる足尾・松木郷へ、ぜひお越しください。散策の途中には、遊働楽舎「みちくさ」にもお立ち寄りください。

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 本日の「みちくさ」担当は、坂口と筆者・加賀でした。

実りは分かち合い。広場の柿はサルのごちそう、紅葉はこころの栄養。

 10月20日(金)、「松木郷」は青空に包まれています。“みちくさ”に着くと「足尾の8時の気温は5℃だった」と橋倉さんが朝の冷え込みを伝えてくれました。冷え込みのおかげで森びと広場では桜や柿の木が紅葉・黄色し色づきも良くなっています。

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 今日は、アジア太平洋資料センターのツアー参加者の皆さんが、足尾から渡良瀬川下流の谷中村につながる歴史探訪の旅で、旧松木村を訪れます。荒廃地となった渡良瀬川源流の「松木郷」で森づくりを行う森びとプロジェクトの活動を報告できる機会をいただきました。午前中は、会場となる“みちくさ”に参加者用の椅子を運び入れました。“

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 みちくさ”から広場に下りる階段に食べられた柿のヘタと皮が落ちていました。柿の木を見上げると食べかけの柿の実がぶら下がり、果実の数も減っていました。

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 折りたたみイスを軽トラに積み込んで、“みちくさ”に戻る途中で柿の木を見上げると食べかけの実が無くなっています。あれ?と思い、目線をあげると、なんと!大きなサルが果実を小脇に抱え、おいしそうに食べています。目線が合っても逃げません。「食事中です!」と言わんばかりに悠々と食べ続けます。

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 桜の花や実は集団で食べに来ますが、柿の実はボスのひとり占め状態でした。

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“みちくさ”に椅子をセットした後は、11月3日(火)に開催する「中倉山のブナを元気にする恩送り」で「孤高のブナ」の根を保護する黒土の準備を行いました。当日、中倉山に登り草のタネの入った袋に入れて貼り付けます。先日つくったものが12袋あり、植生袋60枚準備していますので、残り48袋をつくりました。1袋に2.5リットル、2㎏でした。

 中倉山の北側斜面にも豪雨の影響で土壌の流出がみられたようです。参加される皆さんと一緒に担ぎ上げたいと思います。

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 袋詰めを終えると、ボスザルは岩の上で中倉山を眺めて食後のひと休みでした。「ブナの実も食べに行こうかなぁ」と考えているのかな?。11月3日に一緒に行きましょう!

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 午後2時10分、予定通りアジア太平洋資料センターのツアー参加者の皆さんが“みちくさ”に到着しました。クロモジのお茶でリラックスしていただき、2005年から荒廃地の植生回復に取り組んできたことを報告させていただきました。

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 2005年、地球温暖化の影響が目に見えるようになり、ブレーキをかけるにはどうしたらいいか。横浜国大の宮脇昭名誉教授の指導を受け、ミズナラやコナラ、クヌギなどもともと足尾に生えていた樹種のドングリを拾い集め、苗づくりからスタート。

 冬場、エサのなくなったサルは芽の出たポット内のドングリを食べ、引き抜かれた苗が枯れ、植樹した苗木はシカに食べられ、雨が降らなければ枯れてしまうことなど、素人集団の森づくりはサルやシカ、自然と向き合わなければ木々を育て森をつくることは出来ないことを学びました。

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 人間の都合で森はつくれないことを教訓に、地球温暖化に歯止めがかからない状況と感じる今日も自然と向き合い、森びとスタッフ、会員や学生、足尾町民など多くのボランティアの皆さんの協力を得て、「森は友だち!」を合言葉に森づくりに汗を流していることを伝えさせていただきました。次回は森の手入れにご参加いただければ幸いです。

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 「こころの園」の菊の花にはベニシジミや多くの虫たちが蜜を求め集まっています。里に下りたのかトンボの数は減っている様子です。

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 “みちくさ”から「臼沢西の森」を眺めると紅や黄に色づき始めている様子が見えます。

 「松木郷」の紅葉はこれからです。みなさまのお越しをお待ちしています。

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 本日の森作業は橋倉さん、加賀さん、筆者清水でした。

(報告:清水 卓)

2026年10月22日 (木)

10年で幹回りが18cm成長!「孤高のブナ」がつなぐ命と、未来への願い

 10月20日、雨に打たれ、風に吹かれながらも、中倉山のブナは今年もそこに立っていました。足尾の煙害を生き抜いてきた「孤高のブナ」。厳しい自然環境のなかで生きるその姿を確かめ、これからも命をつないでいけるように、保護活動に向けた下見と作業を行いました。

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 天気は曇りのち雨のち晴れ。秋の山の天気は変わりやすく、準備を整えて出発すると、間もなく雨が音を立てて降り始めました。尾根に着くころには雨脚がやや強まり、しばらく天候の回復を待つことにしました。やがて風が吹き、雨がやみ始めたため、私たちは再びブナを目指して歩き出しました。途中の岩場では、秋の訪れを感じる景色を眺めながらひと休み。記念写真を撮り、さらに山道を進みます。天候に気を配りながら一歩ずつ進む道のりも、自然と向き合う大切な時間です。

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 やがて目の前にブナの姿が見えてくると、自然と気持ちが高まります。無事に到着し、さっそく木の周辺の状態を確認しました。ブナの根元にある岩場(ガレ場)を確認すると、雨水によって土が流されている場所が見つかりました。山の土は、木々を支え、根に水分や養分を届ける大切なものです。しかし、雨が降るたびに土が流されれば、長い年月をかけて育ってきた木の根にも影響が及びかねません。そこで、土がさらに流れ出すのを防ぐため、土留めを設置し、土を入れた袋を固定する作業を行うことにしました。

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 大きな木を守るためには、木そのものだけでなく、その木が生きる土や周囲の環境にも目を向ける必要があります。現場で変化を確かめ、できる対策を一つずつ積み重ねることが、ブナの命を未来につなぐことにつながります。

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 今回の下見では、ブナの成長も記録しました。幹回りを測ると168cm。10年前の記録は150cmでした。測定方法や測定位置などの条件をそろえて比較する必要はありますが、記録からは、この10年で幹回りが18cm大きくなったことが分かります。厳しい環境のなかでも、ブナは着実に成長を続けています。

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 さらに、地面には次の世代へと命をつなぐブナの実も確認できました。長い年月をかけて育った一本の木が実をつけ、その実から新しい命が育っていく。森の営みは、私たちの目に見える成長だけでなく、こうした小さな命のつながりによって支えられています。自然の力で育つブナを見守りながら、人の手でできることを続けていく。その大切さを、改めて感じる時間となりました。

14_2 続いて、もう一本の「希望のブナ」も観察し、成長の記録を取りました。木の高さは、外から見た目測で約168cmでした。そばに立つ木々の姿を確かめながら、親子の木がともに成長していることに、参加者一同、感慨を深めました。

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 昼食をとるころには、暖かな陽射しが差し込んできました。雨に濡れた山に光が戻り、張り詰めていた気持ちも少し和らぎます。山頂からは、私たちが活動の拠点としている作業小屋や、その上方に広がる臼沢の森を望むことができました。山々にも秋が訪れていることを感じながら、全員無事に下山しました。

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18 今回の下見では、雨による土の流出という課題を確認するとともに、孤高のブナの成長と、次の世代へ命をつなぐ実を確かめることができました。森を守ることは、木を植えることだけではありません。育った木を見守り、土や水の変化に気づき、自然が次の世代へとつながっていく環境を整えることも大切です。足尾の煙害を生き抜いてきた孤高のブナ。その姿は、自然の回復力と、長い時間をかけて命をつないでいくことの大切さを私たちに教えてくれます。

19 11月3日(火・祝)、中倉山の「孤高のブナ」を守る保護活動を予定しています。山の自然に触れ、一本の木が生きる環境について一緒に考えてみませんか。登山や森づくりに関心のある方はもちろん、ブナを守る活動に思いを寄せてくださる皆さんの参加をお待ちしています。参加をご希望の方は、森びとプロジェクト事務局までお申し込みください。一本のブナを守ることから、森の未来を一緒に考えていきましょう。

下見参加者:済賀・福原・山内・清水・永島・山田/文:山田

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