晩秋の足尾・松木沢は心安らぐ世界
11月23日、足尾に住居を移してから、ひとりで松木沢を歩いた。天気は、山々や草を見ると、秋の終わりを悲しむかのような、冷たい小雨の降る生憎であった。それが幸いして思わず立ち止まってしまう景色に遭えた。その景色は、中倉山や足尾ジャンダルムも、そして秋の名残の「臼沢の森」は霧に霞んで一幅の絵を見ているような錯覚に陥った。思わず「いいなぁ!」と呟いてしまった。
歩き始めるとヤシャブシの実から滴り落ちる雨、草紅葉の一角を占めるチカラシバの繊毛に溜まる沢山の雨滴、その上には紅葉の盛りを過ぎた緑、黄、赤のグラデーションを魅せているヤマモミジ。その下に目を落とすと、緑の苔の絨毯に舞い降りたモミジの葉、そのひとつ一つが心を和ませ、安らぎを与えてくれた。
一番心に染みたのは、「臼沢の森」に上る階段に降り積もった落ち葉だった。15年間の森づくりの辛さや悩んだ事が頭に浮かび、「ここまでやってきて良かった!」という喜びが胸を熱くした。
仲間が待つ「みちくさ」に戻ってくると、石にペイントした”オジサン達”が出迎えてくれる。そこに幾つかベンチが設置されている。今年は出遅れてしまったが、来年は一人のハイカーとして座って、松木の秋を満喫してみたい。
冬将軍が間もなくやってくる時の気がかりは、「みちくさ」前のクスノキだ。昨年は、松村宗雄スタッフの渾身の作である藁束で作った”モガリ”で冬の寒さをしのいできたが、今年は、その木が3メートルを超えた。
防寒対策は11月30日に行うというので、スタッフたちの和の技と「足尾isハートランド」のシンボルツリーとなってほしいクスノキへの情熱を楽しみにしている。(報告 橋倉喜一)
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