“言いたい事は言い、決めたことはやり抜く”・・・「森びとの心構え」その⑤
自然界の森は天然更新でつくられているが、足尾銅山跡地のように荒廃地では気が遠くなる時間を要する。当会が森づくりをしている足尾・松木沢から見える中倉山の北斜面では春になると氷が解けて土砂が流れ、雨が降るとその度に土砂が流れて60年前に生やした草地が流されている。その斜面近くでは、土砂が流された地に緑化作業が行われている。岩に吹き付けられた草の種は3ケ月も過ぎると芽を出している。
私たちの森づくりは近代的な緑化とはいかない。傾斜が30度以上ある斜面の草を刈り、間伐材で階段を造り、下から穴を掘って土を入れ、苗木を植えた。そのための土を運び上げ、食害防止柵を支える鉄筋の支柱をも荷揚げしてきた。
私たちはあるべき理論だけでは森が育たないということを学んだ。森作業に集う様々な意見や性格の違う“森とも”との議論の積み重ねと、決めたことは最後までやり抜くという“暗黙の森びとルール”を尊重するスタッフたちが森を育てた。
宮脇先生の森づくりへの志を信じ、難しい荒廃地での本物の森を1年間に100日ほどの作業を15年間繰り返してきた。そこには仲間同士の“目配り、気配り、心配り”があって、スタッフたちの健康を管理し、怪我を防いできた。草刈りをするにも、機械を使うのか、鎌で刈るのか等の話し合いをする等、作業場の状況と担当者の技術力、その日の天気等をよみながら森作業を行ってきた。その繰り返しの15年間の知恵が、“森と寄り添う暮らしの心構え”となっている。(理事 高橋佳夫)
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