10年で幹回りが18cm成長!「孤高のブナ」がつなぐ命と、未来への願い
10月20日、雨に打たれ、風に吹かれながらも、中倉山のブナは今年もそこに立っていました。足尾の煙害を生き抜いてきた「孤高のブナ」。厳しい自然環境のなかで生きるその姿を確かめ、これからも命をつないでいけるように、保護活動に向けた下見と作業を行いました。
天気は曇りのち雨のち晴れ。秋の山の天気は変わりやすく、準備を整えて出発すると、間もなく雨が音を立てて降り始めました。尾根に着くころには雨脚がやや強まり、しばらく天候の回復を待つことにしました。やがて風が吹き、雨がやみ始めたため、私たちは再びブナを目指して歩き出しました。途中の岩場では、秋の訪れを感じる景色を眺めながらひと休み。記念写真を撮り、さらに山道を進みます。天候に気を配りながら一歩ずつ進む道のりも、自然と向き合う大切な時間です。
やがて目の前にブナの姿が見えてくると、自然と気持ちが高まります。無事に到着し、さっそく木の周辺の状態を確認しました。ブナの根元にある岩場(ガレ場)を確認すると、雨水によって土が流されている場所が見つかりました。山の土は、木々を支え、根に水分や養分を届ける大切なものです。しかし、雨が降るたびに土が流されれば、長い年月をかけて育ってきた木の根にも影響が及びかねません。そこで、土がさらに流れ出すのを防ぐため、土留めを設置し、土を入れた袋を固定する作業を行うことにしました。
大きな木を守るためには、木そのものだけでなく、その木が生きる土や周囲の環境にも目を向ける必要があります。現場で変化を確かめ、できる対策を一つずつ積み重ねることが、ブナの命を未来につなぐことにつながります。
今回の下見では、ブナの成長も記録しました。幹回りを測ると168cm。10年前の記録は150cmでした。測定方法や測定位置などの条件をそろえて比較する必要はありますが、記録からは、この10年で幹回りが18cm大きくなったことが分かります。厳しい環境のなかでも、ブナは着実に成長を続けています。
さらに、地面には次の世代へと命をつなぐブナの実も確認できました。長い年月をかけて育った一本の木が実をつけ、その実から新しい命が育っていく。森の営みは、私たちの目に見える成長だけでなく、こうした小さな命のつながりによって支えられています。自然の力で育つブナを見守りながら、人の手でできることを続けていく。その大切さを、改めて感じる時間となりました。
続いて、もう一本の「希望のブナ」も観察し、成長の記録を取りました。木の高さは、外から見た目測で約168cmでした。そばに立つ木々の姿を確かめながら、親子の木がともに成長していることに、参加者一同、感慨を深めました。
昼食をとるころには、暖かな陽射しが差し込んできました。雨に濡れた山に光が戻り、張り詰めていた気持ちも少し和らぎます。山頂からは、私たちが活動の拠点としている作業小屋や、その上方に広がる臼沢の森を望むことができました。山々にも秋が訪れていることを感じながら、全員無事に下山しました。
今回の下見では、雨による土の流出という課題を確認するとともに、孤高のブナの成長と、次の世代へ命をつなぐ実を確かめることができました。森を守ることは、木を植えることだけではありません。育った木を見守り、土や水の変化に気づき、自然が次の世代へとつながっていく環境を整えることも大切です。足尾の煙害を生き抜いてきた孤高のブナ。その姿は、自然の回復力と、長い時間をかけて命をつないでいくことの大切さを私たちに教えてくれます。
11月3日(火・祝)、中倉山の「孤高のブナ」を守る保護活動を予定しています。山の自然に触れ、一本の木が生きる環境について一緒に考えてみませんか。登山や森づくりに関心のある方はもちろん、ブナを守る活動に思いを寄せてくださる皆さんの参加をお待ちしています。参加をご希望の方は、森びとプロジェクト事務局までお申し込みください。一本のブナを守ることから、森の未来を一緒に考えていきましょう。
下見参加者:済賀・福原・山内・清水・永島・山田/文:山田

















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