苦労した思い出が喜びに変わった「森の観察」
10月6日(日)、足尾は雨が降ったり止んだりの天気でしたが、木々にとっては恵みの雨となる1日でした。今日はJR東労組のサークル「ネイチャークラブ」会員の皆さんが足尾の森の観察に来てくれました。
13時20分に、北は青森県、南は神奈川県から参加された24名を乗せたバスが松木郷に到着。森びとの看板前に集合していただきオリエンテーションを行いました。
加賀スタッフよりスタッフの紹介と観察の行程が述べられ、筆者(清水)より松木郷廃村の歴史と先人の苦労の上に私たち森びとプロジェクトの森づくり活動があることを伝えさせていただきました。足尾での森づくり初期にポット苗づくりや臼沢での植樹環境整備、植樹に参加された組合員の皆さんは、看板前から見上げた臼沢が森になっていることに驚いた様子で、早速、臼沢に向かいました。
第1ゲート手前で、紐が落ちているのかなと手を伸ばすと、まだ肌の赤いシマヘビの子供で、参加者一同を歓迎してくれているようでした。
臼沢の森入口までは緩やかな道ですが、結構息が切れます。丸太の階段をM&mベンチのところまで登り、森の観察を行いました。宮脇昭さんと松崎明さんが対談したころは対岸の中倉山を眺めることが出来ましたが、15mもの木々たちが密集した森を眺め、苦しかった準備作業を思い出し、生長した森に驚きと喜びを感じていました。黒土や階段作りに参加した方からは「久しぶりの足尾で、日本のグランドキャニオンが森になっていた。重たい黒土を背負子で担ぎ上げ、『強制労働』と言った自分を思い出しました。その黒土によって生長した森を見て、このために苦労したのかと捉え返すことが出来ました。」「10数年前に足尾の森づくりに参加し、気になっていた。今回参加してものすごい森になっていた。ドングリを拾って育てた。つくることで自然を考えるきっかけになった。」
初めて参加した方からは、「木々が育たなかった臼沢で、細い木が落石を止め森が水を蓄えている。森をつくることで良い循環になっていることを感じた。」と感想が述べられました。時折シカの鳴き声が森内に響き、樹皮が食べられ枯れてしまった木も見受けられることから、この森に生きる動物たちの姿も想像することが出来ました。
次に、緩斜面の「民集の杜北」に移動しました。2014年から植樹を開始した「民衆の杜北」はまだ幹が細く木々同士が競争しあい生長している森です。虫に食べられた葉や大きな石を転がした跡など、この森でも生き物の姿を想像することが出来ました。コウゾやヤマナラシ、ネムノキなど、植えた樹種以外に活着した樹々もあり、人間が手を加えた森に鳥や風、虫たちなど自然が加勢してくれるとことを観て回りました。自然界のつながりから、私たち人間も生物社会の一員であることを感じ取っていただきました。
亜硫酸ガスの排出が止まり植林活動が始まって60年以上経過した今でも草地の広がる松木郷。「糺の森」に入り、岩がむき出しとなったジャンダルム方面を眺め、世界各地で起きている豪雨災害や干ばつ、山火事、日本国内でも台風10号や東北、能登半島豪雨などによる洪水、土砂崩壊によって多くの人々の暮らしと命が奪われていることを考えました。
「ネイチャークラブ」の皆さんはこれからも「山と心に木を植える」を合言葉に、労働現場である鉄道の線路が流され、駅設備が浸水、強風によって運行がストップするなど、厳しさを増す地球環境の現実に危機感を高め、職場の皆さんと話し合いを行い、利用者の皆さん、働く仲間の皆さんの安全と命を守ることを第一に活動を進めていく決意を新たにされました。
今回参加できなった会員の皆さんと一緒に、秋の紅葉、春の新緑を観察にお越しください。
「森の観察」の案内は、加賀さん、済賀さん、みちくさ担当の橋倉さん、山田さん、筆者清水でした。
(報告:清水 卓)
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