無言の語り木「孤高のブナ」のDNAを後世に残したい
本日3月26日(日)の足尾の天気は、昨日から降り続く生憎の雨でした。森びと広場の9時30分の気温は8℃と肌寒い1日となりました。10時前には中倉山調査とベースキャンプ担当のスタッフ・サポーターの皆さんが、遊働楽舎“みちくさ”に集合しました。高橋顧問が一足早く“みちくさ”入りし、薪ストーブに火を入れ、やかんにお湯を沸かしてくれました。ドリップコーヒーを淹れ、コーヒーを飲みながら本日の作業打ち合わせを行いました。
当初の予定は中倉山の無言の語り木「孤高のブナ」保護と子孫を残すための植栽地の確認登山でした。足尾銅山の煙害に耐え、松木村廃村の歴史を見続けたブナの実を松村宗雄さんが拾い、幼木に育ててくれました。
ブナは300年ほど生きるといわれていますので、この先も100年、200年と生き続けてほしいと願っていますが、気候変動による自然の猛威は年々激しくなり豪雨になると北斜面の土砂流出が続きます。 ブナがいつまで生きられるかわからない中、ブナのDNAを持つ子孫を後世に残したいと願い林野庁日光森林管理署に相談をさせていただきました。本日は日光森林管理署・徳川署長に同行いただく予定でしたが登山道での滑落なども想定し、来週に変更しました。木々を失った松木川源流の山に雨が降ると岩を崩しながら斜面を流れてきます。今日も松木川は茶色い水が流れ、足尾ダムの落水も茶色になっていました。
打ち合わせ後、まず最初に中倉山に移植するブナの幼木の根回しを行いました。「みちくさの畑」に植えられたブナの幼木の根を痛めないよう慎重に根の周りを掘り上げました。根回し用の“わらこも”(藁を縦横に編みこんだ敷物)の上にブナの幼木を置き樹高と幹回りを調べると、樹高130cm、根元の幹回り直径が2cm、根の長さは60㎝でした。根を痛めないように“わらこも”を巻き、前日に掘り上げるよう埋め戻しました。
南側の「みちくさの庭」のミツマタは間もなく開花です。黄色い小さな蕾をつけた花が数珠なりです。
その後“みちくさ”に戻り、4月29日の「中倉山のブナを元気にする恩送り」に向けて、北斜面の崩壊地に張り付ける植生袋と黒土の他、ブナ幼木植樹に必要な保護資材、荷揚げに協力してくれるボランティアへの呼びかけなど準備の打ち合わせを行いました。
打ち合わせに熱が入り、12時30分に昼食をとりました。昼食後は、4月から始まる“みちくさ”のオープン日、舎人(みちくさ担当)体制について打ち合わせを行いました。
2020年12月以降、新型コロナウイルスの感染拡大から、松木渓谷を訪れるハイカーの減少と、感染予防のため、栃木県・群馬県のスタッフ・サポーターで舎人を担当してきました。政府から「緊急事態宣言」が出されている期間は“閉舎”としてきました。今後、マスク着用の緩和(個人の判断)や2類から5類への移行など、大きく人の流れが変化していくことが予想されます。コロナ前は、多くのハイカーやクライミング、釣り人が松木渓谷を訪れてくれました。訪問者がコロナ前に戻るかはわかりませんが、気候危機に対する関心は高まっていると感じます。
これまで土、日、祝祭日に遊働楽舎“みちくさ”をオープンしてきましたが、桜の開花時期、シロガネスミレやヤマユリなど花咲く時期、新緑や紅葉、オオルリやキビタキ、ホオジロの鳴き声が響く時期、エゾハルゼミ、ヒグラシ、アブラゼミの鳴く時期など、松木の里に生きる動植物の息吹を感じる時を発信し、その時期に合わせたオープンができないか、舎人(スタッフ・サポーター)の意見を聞きながら検討していこうなど、熱い話し合いが出来ました。
本日の参加者は、高橋さん、松村宗雄さん、橋倉さん、済賀さん、林子さん、筆者清水でした。
(報告 清水 卓)
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