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2022年1月の16件の記事

2022年1月31日 (月)

厳しい冬を乗り越え、春待つ苗木と森びと達!

  「光陰矢の如し」と言われますが、今日(1/31)で1月も終わりです。コロナ禍で森作業が自粛になって、足尾在住の筆者がその間の現場を点検・報告をすることになり、今日は2回目です。

 今日の松木沢は、やや風がありましたが青空が広がり、午後1時の気温は3℃でした。ただ、一日中”風花”が舞い、日本海側はまた雪が降っているのだろうと思う天気でした。

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 森びと広場の雪もかなり消え、臼沢や臼沢西の森の雪は完全になくなりました。立春も近いのですが、例年ですとこれからが雪が降る時期になります。まだまだ注意が必要です。

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 各所を点検したところ、森びと広場南側のビニールハウスエリアに立ててあるテントの屋根の一部に、雪解けた水が凍り写真の状態でした。押し上げようとしましたがビクともしません。

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 民集の杜内では2018年に植えた苗木が生長して横枝が重なり合い、かなり密状態になっています。春になり葉が広がると林床に陽が差さなくなり、生長の遅い木は枯れてしまう心配があります。枝落としなどの作業が必要です。民集の杜から森びと広場に戻る道路脇のアキグミの樹皮がシカに食べられていました。獣害対策も大切です。

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 臼沢の森では、冬枯れの中で鮮やかな緑のアカガシなど常緑広葉樹が、この時とばかりに陽の光をいっぱいに浴びていました。新松木や松木の杜では、コブシが花芽を付けて足尾の遅い春を待っていました。

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 私たちシニアも、新型コロナウイルスに“罹らない、染さない”を心がけ、森作業の再開に備えて体力と健康維持に努めていきましょう!

(報告 サポーター・橋倉喜一)   

 

2022年1月29日 (土)

太古の昔から植物の助けを借りて生きてきた私たち

 新型コロナウイルス「オミクロン株」が急拡大する中、1月27日に政府は「まん延防止重点措置」を34都道府県に適用、期間は2月20日までとしました。栃木県も新規感染者が4日連続で600人を超え過去最多を更新しています。そのため足尾の森作業も、スタッフ・サポーターの大事をとって中止をしました。

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(みちくさの庭で雪に埋もれるリンドウ)

 先日、毎日新聞(1/27朝刊)で「植物の力でコロナワクチン開発」と報じられていました。それは、「植物から抽出して抗原するもので、低コストで短期間に大量生産、冷蔵輸送が可能。すでに、カナダで承認申請され、日本でも臨床試験を実施中、今春にも厚生労働省に承認申請し、2022年度に実用化を目指す」としています。

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(2022年1月27日 毎日新聞朝刊より)

 日本でも昔からの知恵として、アオキ、ナンテン、ウメなどが薬として利用されてきました。足尾のクマも冬眠から覚めたら柳の芽を食べると聞きました。鹿や猿も木の皮を剥いで舐めています。

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 4月頃に広がる田園風景に点々と白い花のコブシの木が目につきます。そのコブシの蕾を干したものが頭痛、歯痛、鼻炎の薬効として用いられてきました。また、ホオノキやヤナギなどの樹皮は喘息や頭痛薬として実用されています。

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 (松木の杜・コブシの蕾)

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 (松木の杜・馬酔木)

 それは、森と共に暮らしてきた先人たちが「森の恵み」をいただく中で見つけてきた「生きる知恵」なのではないでしょうか。「良薬口に苦し」とも言われますが、苦みや渋み、舌先に感じる痺れ、匂いなど、人間が持つ「五感」も磨き上げてきたのだろうと思います。

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(みちくさの庭・ミント)


 コロナ禍で人との接触が制限され、ストレスの多くなった現代社会に生きる私たちですが、足尾の森作業に入り、木々に触れ、土を耕していると、普段は気づかない、風に乗って聞こえる沢の音や鳥のさえずり、木の葉や土の匂いなど、感性が研ぎ澄まされてくることを感じます。

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(民集の杜・2015年旭川MS会植樹)

 目に見えないウイルスの出現は、私たち大人に子や孫と一緒に自然に触れ森を大切にする心を育むことや、未来につながる人間の持続的な生存を可能にする自然環境を健全にしていく事が最も大切なことだと気づかされます。

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(臼沢西の植樹地を整備する強者たち)

 私たちにとって、「コロナワクチン開発」は、朗報には違いありませんが、人間のいのちの問題なので安全には細心の注意を払って、研究開発を進めて欲しいと願っています。

(運営委員 大野昭彦)

2022年1月27日 (木)

マレーシアで考えた持続的な開発

 前回、この欄に投稿してから3ヶ月、世の中変わらないのはコロナだけ、いや新型コロナウイルスは変異株のオミクロン株になり、さらに大変なことに。長野でもとうとう「まん延防止措置」がこの27日から始まることになりました。

 そうしたなか、2年前のちょうど今頃、マレーシアの義弟のところへ義母を伴い、10日ほど遊びに行っていたのを思い出しました。写真は現地のマーケットですが、今見ると誰もマスクをしていないのが奇妙に感じてしまいます。あの頃は平和でしたね。

1 向こうで感じたのは、とにかく人々がパワフルで、エネルギーに満ちていること。出歩いたのはクアラルンプール周辺とマラッカだけですが、土木工事はあちこちで行なっているし、都心の電車は10分おきにくるし、街中は夜中まで人で溢れていました。

 調べてみると、2020年の平均年齢はマレーシアが29歳、日本は48歳。私は日本の平均年齢を大きく押し上げているのですから、下手なことは言えませんが、まあそういうことです。

 もちろん問題もたくさんあると思います。多民族、他宗教国家ですから、それだけでも大変。また、空港へ降りるとき目に入るのが、アブラヤシの見事なまでの一成林。この実から精製されるパーム油は手頃な価格の植物油脂として、日本でも食品や化粧品など多岐にわたって使われています。世界での生産は85%近くがインドネシアとマレーシア。需要の拡大と農園のため伐採される熱帯林の現状を考えれば、持続的な生産と消費者側の賢い消費が求められます。パーム油に関してはRSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)認証がありますが、こうした取組みの進展を期待しています。

 マレーシアでは計画的な首都機能の移転も行われています。現在ではクアラルンプールから25キロほど離れたプトラジャヤへ多くの政府機関が移りました。写真は首相官邸です。

2 この土地にはもともとアブラヤシ農園があったとのこと。周辺には自然に囲まれた先進的な官庁街が整備されており、政府は低炭素グリーンシティを目指すとしています。写真のピンクモスクでは多くの人が礼拝に訪れていました。

3 環境問題を考えるには、国内だけでなく世界の状況へも目を配りたい。そのためには、他国を見るのも大きな手助けになります。まあ、そんなのは屁理屈で「海外へ行く自由が欲しい」というのが私の本音ですが。ちなみに冒頭に記した義弟はその後インドネシアへ転勤となり、日本には一度も戻れずにいます。(運営委員・井上 康) 

2022年1月24日 (月)

自然界に存在するあるがままの自分を知る森づくり

 今年の足尾松木沢は雪が多い。15年間以上も足尾松木沢に通っていた私の記憶でも初めての降雪。木を植えている森の草木にとっては有難いことにつながっているのか。春から夏にかけての草木の息吹が楽しみ。Img_2912 苗木を植える前の乾燥していた草地にはビロウドモウズイカ、セイヨウノコギリが目立っていた。今では探さないとその姿は見えない。除草したわけではないので、生きていく環境が合わなくなってきたと思う。

P6295440   ビロウドモウズイカ

 今年、足尾の森づくりでは植物遷移を体感することができないかと、石や岩の上で地衣類が生えている場所に苗木を植えていく。植える苗木は空気中のチッソを吸収できるヤシャブシ、ハンノキ等。植えた木々の生長と植物の芽生え、地衣類の生長と他の生物の観察を行っていく。P4112637

P1273258  土壌改良をせずに、砂と石ころだらけの状態での植物遷移が体感できるのかは不明だが、植物遷移の概念を身体で感じていきたい。気の遠くなる時間がかかると思うが、人間が自然界の一員であり、かつ消費者に過ぎない存在であることを実感できることを願って始めていく。(顧問 高橋佳夫)

2022年1月23日 (日)

新型コロナウイルス感染再拡大下での「いのちを守る」森づくり。 

 今年初めての森作業を1月19 日(水)に群馬県・栃木県のスタッフ・サポーターで行ったばかりでしたが、新型コロナウイルス「オミクロン株」の急速な感染拡大で、本日23日から2月中旬まで森作業を一時中断することになりました。その間、足尾在住の筆者・橋倉が、作業小屋、遊働楽舎“みちくさ”、植樹地などを週1回程度点検・報告を行います。

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 今日はその1回目で、その様子をお伝えします。

 今年の足尾は、雪の降る日が例年を上回るペースで推移しています。松木川両岸の山頂や北斜面には雪が残っており、森びと広場もまだ真っ白です。それでも中倉山を目指す人達で足尾ダム下の駐車場は満杯です。

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 森びと広場で出迎えてくれた雄鹿は、雪が消えた草むらに芽生えた僅かな緑の草を一心不乱に食べていました。雪が残っている“みちくさの庭”では、ミツマタはビロウドのような外皮が提灯のように蕾を暖め、鮮やかな黄色い花の開花を待っているようでした。厳しい冬を越すヒガンバナは雪の下から緑色の葉を見せてくれました。今年の花が楽しみなアジサイの枝先には、黒い殻を被った緑の芽が付いていました。

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       ミツマタ(上)とヒガンバナ(下)

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 “民集の杜”のイヌブナ(宮脇さん木)、ホウノキ(岸井さん木)はともに冬芽を付けていました。“天空の森”から私たちを見守るお二人の思いを引き継ぎながら、後輩と共に“山と心に木を植える”森づくりを今年も頑張っていきます。

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 一人で松木沢を歩いていると、こんな思いを抱かされた今日の松木沢でした。新型コロナウイルス感染に注意して森作業の再開に備えます。

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(報告 橋倉喜一)

2022年1月19日 (水)

2022年の足尾森作業がスタート!里親植樹地づくりに汗を流しました。

 本日1月19日は、毎月一度の育樹デー(作業集中日から改称)です。新型コロナウイルス「オミクロン株」の急な感染拡大のため、電車を利用しての森作業参加者には参加自粛をお願いし、栃木県と群馬県のスタッフ・サポーター10名が集まってくれました。

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 雪で白一色の森びと広場では、皆さん「今年もよろしくお願いします。」のあいさつから始まりました。今日の9時の気温はー1℃です。天候は快晴、雲一つありません。風も足尾にしてはそれほど無く、絶好の作業日和となりそうです。気になる雪は、道路には全くありませんでしたが、広場には10cmほどありました。本日作業予定の臼沢西の斜面に雪は見えません。

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 コーヒーを入れ打ち合わせを行い、予定していた臼沢西の土留め作りをすることにし、大ハンマー、小ハンマー、背負子、鉄筋、万納、スコップ、甲羅板を軽トラに積み込み、作業場に向かいました。

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 今日のメンバーは百戦錬磨のベテランばかり、各々がそれぞれの持ち場に就いて作業が始まりました。斜面は石ころだらけで、土留め用の板を押さえるための鉄筋を打ち込むと大きな石に当たり、打ち込めず鉄筋が曲がったりと、苦戦を強いられる場所もありました。それでも何とか、U段12枚・W段11枚・X段13枚、合計3段、36枚を完成させることが出来ました。運び上げた資材を使い切ると丁度12時でした。作業に区切りをつけ集合写真を撮影し、昼食のために下山しました。

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 下山すると松村宗さんと福原さんが、ハウスの前の雪かきをしてくれました。いつも気を使ってくれる二人です。有難うございます。そして、今日の差し入れもたくさんありました。林子さん、清水さん、橋倉さん、大野さん有難うございました。昼の気温は2℃、風も少し出てきて寒くなってきました。水道も水タンクも凍ったままで出てきません。水は多めに持参したので良かったです。

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 午後の作業は、民集、松木、新松木の杜の獣害柵の点検班、みちくさの庭の点検班、新植樹地に運ばれる黒土をならすトンボを作る班、それぞれの班に分かれて作業をすることとしました。トンボは角材と甲羅板を利用して3個作りましたが、少々重いようで改良の余地があるかも知れません。獣害柵には異常はありませんでした。

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 本日の、作業者は鎌田さん、松村健さん、松村宗さん、山本さん、橋倉さん、大野さん、福原さん、清水さん、林子さん、筆者加賀でした。今年最初の森作業でしたが、皆さん生き生きと作業が出来ました。お疲れさまでした。(報告:足尾スタッフ 加賀春吾)

2022年1月16日 (日)

ファンクラブの飛躍に向けた抱負を語り合う

 今年は寒気が日本各地を覆い、各地では例年にない雪が降っています。本日(1/15)は、久々に青空が見える天気に恵まれ、今年第1回森びと福島県ファンクラブの打ち合わせ会議を福島市内で行いました。新型コロナ感染拡大等でなかなか会えない森ともの仲間たち6名の感染予防対策での集まりでした。

2022115 今回はオンライン会議を試してみました。しかし、初めてのことでしたので基本設定がうまくいかず四苦八苦しました。30分遅れで会議は始まりました。オンラインでは森びと高橋顧問からの問題提起だけにとどめ、議論はその後行いました。「久しぶりです。みなさん元気ですか。」の一声に、久しぶりに会う出席者の表情に、慎重さが見えました。

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2022115_3髙橋さんからは、脱炭素社会を生き抜くためには、地球全体のシステムを調整する機能を健全にする活動をしていくことであり、地域でできる事を実行し、地球温暖化防止に向き合うシニア世代のアクションの大事さが話されました。

その後、今年度の福島県ファンクラブとしての事業計画について議論を深めあいました。➀森びと福島県ファンクラブの規約の見直しの議論及び総会までの計画について、規約見直しなどを決定する総会の日程と場所を決定して、会議は終わりました。

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2022115_6  桜井勝延さんは市長選で頑張っています 

本日参加された森ともの皆さんお疲れ様でした。また、問題提起していただいた森びと顧問の高橋さん、オンライン会議を操作していただいた小林さん、ありがとうございました。今後もよろしくお願いします。(森びと福島県FC代表 東城敏男)

2022年1月13日 (木)

森とともに生きる活動をスタートさせる2022年

 2022年、新年を迎えることができました。今年もよろしくお願いします。

 気候変動による異常気象は、毎年巨大化し、無関心ではいられない現状です。地球温暖化にブレーキをかけていくためには、二酸化炭素を吸収してくれる「木」を植え、森に育てていくことが必要です。やれることは小さいことかもしれませんが、人間は森とともに生きることを確認し、できることを拡げていきます。

202162005_2 2005年に植樹をした臼沢の森入口(2021年6月撮影)

 私が住んでいる鎌倉市は、植林地が33%と緑が豊かです。緑地は、生物多様性の確保や防災の役割もあるとともに市民が自然に親しむ貴重な場所です。現在、市民団体が手入れをしている緑地や里山があります。それらの人たちと自然環境の保全を一緒に活動ができていければと思います。

3_5昨年の熱海市での土石流による被害

Photo_4 神奈川県ファンクラブは、一歩一歩“山と心に木を植える”活動を拡げていきます。

(神奈川県ファンクラブ・増田富雄)

2022年1月12日 (水)

告知の協力要請がありました

 昨年7月にお亡くなりになった森びとプロジェクト最高顧問・宮脇昭先生(横浜国立大学名誉教授)を偲び、「宮脇昭先生を偲ぶ会」実行委員会から偲ぶ会が執り行われると、森びとに連絡がありましたので、以下に詳細を掲載させていただきます

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 なお、森びとプロジェクトが主催する催しではございません。恐れ入りますが、偲ぶ会へのお申込み・お問い合わせは、下記の実行委員会事務局までお願い致します。

 開催にあたり、コロナ株やオミクロン株への感染防止対策に万全の注意を払われるそうです。

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―記―

【日時】令和4年1月29日(土)

     開会 12時30分(受付開始12時、終了15時頃)

【場所】レンブラントホテル厚木

     神奈川県厚木市中町2-13-1

      小田急線「本厚木」駅下車 東口より徒歩5分

【会費】12,000円 *お食事代、記念品込み

 (最新刊『森をつくろう!』6,820円、DVD・資料・日本の植生図〔現存・潜在自然〕非売品)

*当日は、平服でお越し下さい。

*ご供花、ご供物の儀は固くご辞退申し上げます。

*会費は、同封の郵便振替用紙にて予めお支払いいただければ幸いです。当日ご持参の場

  合は、受付にお渡し下さい。

*準備の都合上、お申込みはお早めにお願い申しあげます。

*当日ご欠席で、書籍、DVD等の記念品のみご希望の方は、会の終了後、代金後払い(8,000 

 円)にてお届けいたします。記念品が到着しましたら、同封の郵便振替用紙にてお支払いくださ

 い。

 【お申込み・お問い合わせ】

   実行委員会事務局 藤原書店・山崎優子

   yyamazaki@fujiwara-shoten.co.jp

      〒162-0041 東京都新宿区早稲田鶴巻町523

   ℡03-5272-0301 Fax03-5272-0450

(運営委員・小林敬)

2022年1月11日 (火)

自然と人の豊かさを象徴する伊勢神宮の森

 昨年の話になりますが、伊勢神宮の神宮道場でお話をさせていただく機会があり、久し振りに内宮と外宮に参拝してまいりました。どちらも鬱蒼とした照葉樹の森に覆われていて、神が宿る神聖な場所であることを確信させてくれます。内宮の五十鈴川も祀られていて森と川の一体感は、美しい日本の原風景でもあります。

Photo伊勢神宮内宮の社殿と鎮守の杜

 私は植生学者なので、自ずと森に目がいきますが、森の主役はイチイガシです。日本の照葉樹林は沿海部のシイ・タブ林と内陸のカシ・モミ林に分けられますが、内陸のもっとも肥沃な土地に成立するのがイチイガシ林です。そのような豊穣の土地に伊勢神宮が祀られているのは偶然ではなく、自然と人の豊かさの象徴であるということです。参道から森を覗くとヤブツバキ、サカキ、ヒサカキ、カクレミノ、トキワガキ、バクチノキ、ヤマビワ、コバンモチ、カンザブロウノキ、ミミズバイ、バリバリノキ、イズセンリョウ、ハナミョウガ、ホソバカナワラビなど植物相もなかなか豊かで、長い年月を経た自然林でないとこのような種の多様性は保てないのですね。

Photo_3伊勢神宮内宮のイチイガシ

 

 私の知る限り、福岡の太宰府天満宮と大分の宇佐神宮にもイチイガシ林があり、豊かさの象徴になっています。伊勢神宮を始め、これらの境内にはクスノキの大径木もあって、ご神木になることも多いのですが、クスノキは中国か台湾から持ち込まれた樹種で、成長が速く立派になるのですね。

(運営委員会代表 中村幸人)

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