新たな10年の森づくりへ、志と情熱を振り返る
冬山の森は静かな眠りに入っていますが、特に今日は風もなく静かです。静寂な中で忙しそうに飛び回っているのが鳥たちです。カワラヒワが群れて飛来し、ヤマハンノキの実に隠れている小さな虫たちを探していました。これからはツグミ、シメ、ベニマシコ等が姿を見せ、冬山の森はこの鳥たちの楽園になります。
この楽園は森が支えていますが、楽園は人間の傲慢な欲の追求で地獄となってしまいます。1902年、足尾松木村は廃村になってしまいました。その周辺の山の木々は枯れ、土砂流出によってはげ山になりました。はげ山に草や木が生えるのは何百年もかかることでしょう。莫大な税金が投入されて治山・緑化工事が人々によって半世紀以上続けられると、やっとそこには草が生え、根によって土砂は動かないようになり、少しずつ土が堆積されます。
来年は足尾・臼沢の斜面に木を植えて10年になります。斜度30度以上ある斜面は写真の様に一面イネ科の草だらけでした。
この草だけの斜面の草を刈り、階段を造り、植林できる環境をつくってきました。
2005年5月、1千人以上の森ともがこの草地を森にしようと植林ボランティアをしてくれました。
しかし、秋になるとシカ、ウサギ、サル等によって植えた苗木の頭部99%以上が食べられてしまいました。
話には聞いていましたが、自然の力を信じて食害対策に挑戦しました。対策方法は何度も失敗を繰り返しましたが、肝心な事は“完璧を追求しない”ということでした。
頭部を食べられた幼木は写真の様に、全ての苗木は元気な新芽をだしてくれました。根と土がしっかりしていればいのちは繋がっていることを実感させられました。幼木の新芽に触って見て、涙がでました。
夏には草を刈り、60㌢程の幼木に太陽のエネルギーを与えてきました。
今年5月、この森の観察会に集まった皆さんにコメントしている宮脇昭先生の笑顔が忘れられません。
栃木県の土砂流出防備林に指定されているこの地は、写真の様に木々が岩をしっかりガードしていました。来年からもこの森がいのちの源になって、未来のいのちを育む森に育ていければと願っています。
昨日は冬至でしたので、今日から少しずつ日照時間が長くなります。鳥も人間もこの自然のなかで生かされていることが最高の幸せではないでしょうか。(理事 高橋佳夫)
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