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2023年8月28日 (月)

地球温暖化にブレーキをかけたい!組合員の希望(植樹)が命の森になった。

 8月27日にJR東労組(以下、JREUと略す)本部の佐藤委員長をはじめとするリーダーが森の生長観察に来てくれました。JR東労組の組合員は、2005年から始めた森づくり活動をサポートし、植樹地の開墾・階段づくり・黒土の荷揚げ・獣害柵の設置、植樹と育樹を長期間手伝ってくれました。

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 待ち合せは足尾ダム10時、森びと広場の「うんしゅう亭」に皆さんを案内し、オリエンテーションを済ませた後、小林運営委員の案内で「森の観察」に出かけました。現地の天気は晴れ、10時の気温は28℃でしたが、気温は徐々に上昇し、移動するだけで汗が出ました。

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Dsc03422   最初に向かったのは「民衆の杜(北)」。2014年にJREU千葉の組合員が植樹した森を観ていただきました。この植樹には、下村副委員長や武田スタッフも参加しており、足尾に訪れた長谷執行委員共ども植えた当時の苗木(40㎝程)が今では樹高4mを越えていたことに驚いていました。皆さんは杜の中を飛び交うチョウやトンボ、木の葉が食べられた跡、しっとりとした落ち葉の積もる地面など、目に見えない生き物の息づかいを感じているようでした。

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 「民集の杜(北)」の東側の銅精錬の滓の堆積場の斜面の現在の写真と植樹祭当時の現場を見比べると木々の生長は素晴らしいものです。木々は、荒廃した土地であっても人間が少し手を加えることによって生長し、風や鳥たちが新たな種を運び、生態系豊かな杜にしてくれることが実感できました。

P5212297 (2016年5月 足尾・ふるさとの森づくり)

 続いて、「臼沢の森」に向かいました。森の入り口までのなだらかな登り道を歩きましたが、皆さんは汗だくでした。気温を計ると34℃。「臼沢の森」が目の前に迫ってくると、皆さんは木々の生長に圧倒され、丸太の階段を上りました。

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 “山と心に木を植える活動”の提唱者である故・松崎明さんと故・宮脇昭さんが2006年に対談した場所につくられた「М&mベンチ」に座った皆さんは、しばし森の機能を体感しているようでした。足元を見ると、大きな岩の落下をくい止めている木々、積もる落ち葉、根に水を貯めミネラル豊かな水を川から海へと流している様子を頭に描いているようでした。

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 2006年当時のこの現場からは正面に中倉山が見えていましたが、今では木々に遮られ見えなくなっています。その木々を見上げると、葉っぱの間から光が刺しこみキラキラと光る葉の美しさを改めて感動している様でした。「空気がうまい!」と深呼吸した皆さん、松木川から吹く風が林内を吹き抜け火照った身体を冷やしてくれていました。温度計を見ると27℃でした。天然のクーラーの素晴らしさ驚いている様子でした。

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 気候変動の影響は、気温上昇による氷河の溶解、海水温度の上昇による豪雨被害・干ばつ・山火事として世界中の人々に被害を与えています。人間の経済活動は人間を含めた生物の命と生活を破壊している現実を考えてみると、私たちの生存基盤そのものを危うくしているのではないかと危機感を持ちます。天然クーラーの中で皆さんは、故・松崎明さんと故・宮脇昭さんが語り合った「公害の原点」と言われる足尾銅山跡地での森づくりの意味と社会的な意義を捉え返してみました。 

M (松崎明対論集 バチが当たるぞ! より)

 次に、「臼沢西の森」へ移動。コロナ過での「里親植樹」を担ってくれたシニア世代のボランティアとJREUのOBが、岩だらけの通路を歩きながら、急斜面での植樹地づくりのご苦労話を聞いていた皆さんは、感謝の念を表されていました。上部から対岸の中倉山北斜面と上流に広がる荒廃地を眺め、一度壊した自然を回復するには100年、1000年単位の時間と労力がかかることを実感していました。未来を生きる子供たちや次世代の皆さんの命を支える“希望の森”が着実に育っていることも体感できたようです。

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Dsc03455_2  午後は、森を観察した感想を聞かせていただき、意見交換を行いました。JRの労働現場では、体温を超える気温下での屋外作業や駅構内の草刈り、電源を落とした車両内の清掃が行われていることや、豪雨によって鉄道の走る斜面の崩壊、河川の決壊によって線路が土砂に埋まり、流されていることが報告されました。働く者の命と安全が第一であり、働き方を考えると同時に、災害が起きる根本にも目を向けなければならないことを足尾の森を歩き気づかされたことが話されました。

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 土砂崩壊は人間の暮らしに影響を与えますが、地面の下の生物社会を揺るがす事態であること。温室効果ガス削減と自然エネルギーへの転換も行われていますが、温室効果ガスを吸収する森を守り育てなければ激化する豪雨と気温の上昇を抑えること。「地球温暖化」から「地球沸騰化」へと気候変動への認識を転換しなければならない中で、私たちは、働く者の安全・健康・雇用、利用するお客様のいのちを守るために、「人間の都合」から物事を考えるのではなく、「生物社会の一員」の視点から社会現象を考えていく意識の転換が求められているのではないかということを共有することができました。Img_3813_2

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 足尾の荒廃地での「いのちを守る本物の森づくり」に参加された組合員の皆さん、ご家族の皆さん。皆さんの情熱と希望は足尾の森に宿っています。ぜひ、多様な生き物たちが暮らす命の森に生長しつつある森の散策にお越しください。そして、この森が百年も千年も生長できますように、私たちと共に、森の手入れをしていただければ幸いです。私たちは足尾でお待ちしています。

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 お忙しい中、足尾の森を観察していただいた、JREU本部・佐藤委員長、下村副委員長、長谷執行委員、JREUバス関東本部・井上議長ありがとうございました。森びとスタッフは清水、小林、加賀、武田でした。(報告・清水 卓)

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