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2023年5月29日 (月)

地球環境危機下で「いかに生きるか」を考えるシンポジウム①

 27日、一般財団法人日本鉄道福祉事業協会との共催で、地球環境危機下で「いかに生きるか」を考えるシンポジウムを開催しました。東京の目黒での会場の他、Zoomによるオンラインで北は北海道、南は九州から計150名の参加者が集いました。

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Zoom

 主催者あいさつに立った森びとプロジェクト桜井代表からは「シンポジウムの題名は、地球に生きる全ての人に課せられた課題」「温暖化や脱炭素社会の問題は世界的にも政治的にも議論開催されているが、COP27にも象徴されているように、会議は進めるけれども具体的に温暖化防止が追い付いていないのではないか」「地球環境危機を人間が大きく叫ぶ一方で、声を出せない動植物の命が失われている現実もある」「今の生活が生きて行く上で大丈夫なのか問われている」等が話をされました。Photo_2 まず、4名のパネラーより、異常気象に脅える現場の生の声を報告していただきました。

 1人目は秋田県で農業を営む田口則芳さんです。「3年前に会社を立ち上げて、自分で生産したものは自分で販売していくスタイルで食糧生産に励んでいます。今食糧生産をとっても海外から多くのものが輸入され、多くの燃料を消費し、二酸化炭素を大量に排出しています。一番は私たちが生きて行く上で地産地消、自給率は100%を目指していきたい」「秋田では水害、雨が降ると集中豪雨で毎年のように川が氾濫し、田んぼに水が上がり、去年は果樹園が山崩れによって砂利で埋まってしまいました。もう収穫ができないところまで追いやられています。これは私たちの暮らし方がより便利に、もっと快適にという社会の仕組みをもう一度ここで深く考えていかないと、子供たちに責任を持った社会をおくることはできないと思っています」等、地球温暖化が原因と思われる農業被害状況と地域環境の変化について報告がありました。

Photo_3 2人目は、JR東日本で働く矢野雅之さんです。「線路内の草刈りは暑い季節に行うので天気予報で最高気温は何℃だと気にはしますが、今日は暑いなというレベルでした。しかし、先輩から『コンクリートや線路は直接温められ、天気予報の温度と実際の線路付近の温度は全然違うぞ』『線路付近は40度を超える時もある』と教わり驚きました。正直『天気予報の温度』=『現場の温度』と思っており、先ほど延べと通り天気予報の気温しか気にせず、命にかかわる温度の中で作業をしているという事に無自覚でした。また、現場の対策としては水分をとる、塩飴をなめる、体調を見て作業する、です。休憩も気が付いた誰かが『じゃあ休憩しようか』と言わない限り作業は行われます。現場任せであり、中止にする明確なルールはありません。ルールがないことに対しての危機感のなさも無自覚でした」「鉄道魂という言葉がありますが、精神論がまかり通ってしまっているのではないでしょうか。そういう意識の中で働かざるを得ない、会社からすればどんな環境でも働いてくれる社員がいてくれて万々歳ではないでしょうか。働く側から体温を超える中での作業をどうするのか、命を守るための対策(ルール)を考えていかなければなりません」「ある職場では、命の危険があるにもかかわらず草刈りをして『いくらコストカットが出来ました』とアピールをしています。命よりもコストカットが優先されており、知らず知らず会社の利益が優先されています」「労働時間の決まりがあるが体温を超える労働における法規制はありません。真面目な社員は暑かろうが一生懸命働き命を落としてしまいます。命の危機を認識し、声をあげ歯止めをしていかなければなりません。今の現状をきちんと把握し、鉄道業だけでなく屋外で働くすべての労働者を守る為にも法整備など要求していきたいと思います」等、報告がありました。

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 3人目は、横須賀石炭火力発電所建設中止訴訟原告団団長の鈴木陸郎さんです。「横須賀石炭火力発電所は、1号機が完成し、この6月にも営業運転が始められようとしています。2号機が完成されて稼働されると年間726トンの二酸化炭素が排出されます。この量は石炭1日1万トンを燃やし、2万トンの二酸化炭素が排出されることになります。2万との二酸化炭素は、ドライアイスにすると10トントラックで毎日2000台分という膨大な量です。また石炭灰が約1割発生し、一日1000トンの石炭灰が出ます。このほかPM2.5をはじめ大気汚染物質が放出され、改善の途上にある大気環境が悪化することが懸念されます」「私たちは気候危機の打開は世界が協調して取り組まなければ解決できない問題と考えて、この世界の流れに逆行している石炭火力発電所の運転開始に対して、地元の市議会が何らかの意思表示をするべきであるとして、稼働の中止と再エネ100%を目指す決議、議会としても意思表示を求める請願を提出しました。結果は6対32で否決されましたが賛同署名をすることで、地域に入っていろいろな方と対話する貴重な経験になりました」「気候危機は裁判で解決できるとは思われないし、裁判所だけに期待するわけにもいかない」等、学習会や報告会、セミナーなどの広報活動を通じて漁師や、世界の流れに逆行する石炭火力発電所建設に若者たち、市民が参加したたかう基盤と行動をつくりだしてきた報告がされました。

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 最後4人目は、群馬県樹徳高校のOBで名古屋大学4年生の神田涼さんです。「現在、名古屋大学農学部で炭を使った重金属汚染土壌の浄化についての研究をしています。簡単に言うと足尾銅山のような鉱毒の被害を受けた場所をきれいにしよう!というような研究をしています。実は、高校の頃に部活動の一環として今回のシンポジウムの主催である森びとプロジェクトさんが行っている足尾の植樹に参加させていただいたことがあり、そこでの経験がきっかけとなりこのような研究をさせていただくことになりました」「温暖化対策の一つであるカーボンニュートラルを実現するためには、2つの大事なポイントがあります。まず一つ目が、木を切って資源として使うことが大事になってきます。植物が最も二酸化炭素を吸収するのは成長していくときで、苗から木材として収穫するまでの間が一番成長するタイミングなので、どんどん木を切って苗を植えていけば効率的に二酸化炭素を吸収することが出来ます。また、この切った木をそのまま放置しておくと生態系の中で分解されてまた二酸化炭素に戻ってしまうので分解される前に木材として使ったりバイオエタノールの原料にしたりしてこの図のサイクルが保たれるようにする必要があります。2つ目のポイントとしてはそもそも人間の活動によって発生する二酸化炭素の量を減らす、ということです。現在言われているように化石燃料の使用を0にすることももちろん大事です。バイオエタノールなどを化石燃料の代わりに使うことで、元々大気中にあった二酸化炭素が燃料となるため、新たに大気中に出ていく二酸化炭素を0にすることが出来ます、しかし、それでも排出する二酸化炭素が多すぎれば森林による吸収量を上回ってしまい、結局大気中の二酸化炭素が増えてしまいます。」「経済活動の抑制によって温室効果ガス排出量は少なくでき、ある程度の経済の抑制なら可能なのではないでしょうか?僕たち若者世代がどれだけ頑張って新技術を開発して温室効果ガス排出量を減らそうがその分経済活動が増えてしまってはいたちごっこになってしまいます、そもそもの経済活動を抑えれば特に努力することなく割と簡単に温室効果ガス排出量を減らせるんです、配布資料の中にもある通り気候変動はもう非常事態宣言を出してもいいほどにまでなっています、法律での規制でも良い、企業同士の協定でも良い、経済活動を抑制していくことが一番の近道になる、と僕は信じています。」と大人への問題提起をしてくれました。

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(報告:小林敬)

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