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2010年8月の12件の記事

2010年8月30日 (月)

現場に立って森の掟をつかみ取る

P8291509  森の中には寛容という風が吹いていますが、それは厳しい森の掟に支えられているようです。私たちの先達はこの掟を破らず、この寛容に感謝して森と相利共生していたようです。こんなことを学んだ「森びと実践ゼミナール」が28日~29日に開催されました。

 森びとインストラクター修了生を対象にした実践ゼミは、当委員会アドバイザー・竹内巧さんの紹介の新潟県上越市大島区田麦にある「ぶなの森園」で開講しました。ゼミには15名の森びとが受講、ゼミの初日は「植生調査と生物多様性」をテーマにした講義と質疑・討論の座学、2日目は「ぶなの森園」での植生調査の森内実習が行われました。講師は、国際生態学センター研究員・矢ヶ崎朋樹博士(環境学)、講義内容は矢ヶ崎研究員の実践を基(ラオスでの植生調査、福井県等での植生調査)にした植生調査の核心点でした。

 P8291515 森内実習は朝6時30分に「ぶなの森園」に入り、多雪地域の民族植物学的調査を基にした植生調査を11時まで行ってきました。実習では、森を調査していくには森への人間のかかわりの歴史を抜きにできない、という調査の核心点を学ぶことができました。

帰路の電車の中でゼミを振り返って感じたことは、自然(森)には寛容という風が吹いており、それは厳しい森の掟に支えられているということでした。帰宅して教材に使った宮脇昭著『4千万本の樹を植えた男が残した言葉』を読み返して思ったことは、私たちの命の根源は人間と自然(森)の相利共生環境が整っているか否かにかかっている。片方だけの利益、すり寄って一方だけの利益を得るという関係では生態系は低下してしまう。私たちが幸せを実感できる最低の環境は自然(森)と人間双方の利益に結びつく関係を築き上げる努力が私たちの掟だ、ということでした。大山温泉「あさひ荘」の皆さん御世話になりました。

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2010年8月27日 (金)

動物の嗅覚力を忘れてはならない

2010_0826_110349dscf7337 26日の足尾の気温(10時頃)は30でしたが、風もあり作業は順調に進みました。ところがちょっとした油断が動物たちにも私たちにも害を与えてしまう状況をつくってしまいました。

 午後は松木の杜の草刈りと臼沢の階段整備、新しい小屋の作業をしました。作業を終えて小屋に戻ってくると、お昼に食べた弁当を包んでいたビニールやカップラーメンの空容器・蓋などが床に散乱していました。午後の作業に行く際はゴミ用の段ボールに廃棄しましたかが、全てのドアを開けっ放しで作業に出かけましたので小屋に小動物が入り込んであさった様です。小動物の隠れられそうなところを探しましたがそれらしき動物は見あたりませんでした。食べ付けない物が食べられると覚えさせては大変です。暑いから、少しぐらいの時間なら、とちょっとした油断で大変な状況を生み出してしまうのだと反省しました。

また、松木の杜の桑、サクラ、エノキなどの葉がシカに食べられていました。侵入口は松木の杜の入り口を少し左に進んだ所のネットが垂れ下がっていたところでした。これで3回目ですので私たちは人為的ではないかと思っています。何故なら、鹿とはいえ柵のポールを曲げてまでネットを垂らすことは不可能だろう、と思っているからです(鹿の食害と向き合ってきた専門家に相談中)。この付近には新しい鹿の足跡がありましたので今朝までシカが松木の杜に入っていたことが伺えます。畑も若干荒らされており、担当の松村さんは少し落胆していました。(報告:小林敬事務局員)

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2010年8月25日 (水)

森の悲鳴が国会に響く

P8240599 「日本の森を元気にする議員連盟」の皆さんが森の悲鳴を聞きました。森の木々は“レモン汁のような土壌では木は生きていけないよ”と言う悲鳴をあげていました。場所は宮城県180万人の水を貯水する刈田郡七が宿町の森と山形県置賜郡小国町の森です。

P8241506 ナラ枯れ現場の視察は8月23日~24日に行われました。視察をした議員連盟は今野東会長(参議院議員)、黒岩宇洋幹事長(衆議院議員)、松浦大悟事務局長(参議院議員)、相原久美子事務局次長(参議院議員)、田代郁幹事(参議院議員)の5名でした。

現場を案内してくれた皆さんは水守人の会のメンバーと七が宿町役場の方でした。23日は午後から水守人の会代表・佐藤光夫さんからナラ枯れ現状と2002年から始めている炭撒きとその効果報告が行われました。夜は懇親会が開かれ、梅津輝男町長、水守人の会メンバーとの意見交換が行われました。24日は朝から炭撒き現場を視察し、同行してくれました大森禎子先生(元東邦大学教授)のアドバイスを受けました。昼は古くから伝わるそばを食べ、七が宿町の名産のひとつを味わいました。その後、国道113号線を山形県置賜郡小国町へ向かい、途中、高畠町から小国町にかけて森の悲鳴(ナラ枯れ)を聞いてきました。

P8241507 帰路のバス内で今野東会長は、「話には聞いていたが実際に見てみるとことが大事と思った。色が重なり合って綺麗に見える山ですが、これが悲鳴だと感じて山を見上げると恐ろしい風景に思えた。森はいのち、この源の森の再生ができるのであればそうさせたい。国の方策としてできることは早めにやり、議連としては提言や関係省庁との交渉をしていきたい。」と述べていました。

一日中案内してくれました佐藤さんご夫妻、町長選挙前の忙しい中を案内してくれました町役場・平賀さん、山田さんありがとうございました。また、梅津町長の奥様、お茶と美味しいキュウリご馳走様でした。

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2010年8月21日 (土)

世界で森づくりが求められている・できることを実践しよう

P8010031 中国四川省で発生した洪水で何万人が水害に遭っています。隣国のパキスタンでも豪雨による川の氾濫で被災した何万人もの国民が何もしてくれない政府に怒りをぶつけていました。このようなニュースを見ていると森づくりは国際的な緊急政治課題であり、世界の人々の意識改革が私たちに求められているようです。

そんな中、森びと神奈川県ファンクラブは8月9日~10日に西丹沢・檜洞丸のブナ林の調査活動に入りました。今回の調査は山崎誠衆議院議員と学生研究者3人と共に計6人で行いました。標高1,500mの石棚山稜分岐のブナ林は枯れが多く、葉も小さく、木が弱っていることが一目瞭然でした(報告:田岡事務局スタッフ)

2010_0804_094110dscf7296 来週には「日本の森を元気にする議員連盟」の皆さんがナラ枯れ視察に南東北の森に入ります。今月下旬には「森びと実践ゼミナール」が新潟県で開講されます。ゼミでは多雪地帯の植生調査の実習と生物多様性の認識を深める講義・討論が行われます。このゼミでは日本の森の現状を正確に把握する実習と世界的な政治課題を評論家でなく、課題克服のために実践できる森びとインストラクターを目指します。

新潟県上越市のブナの森でもミズナラの立ち枯れが目立っています(写真下・8月2日撮影)。

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2010年8月19日 (木)

緑の基盤を作った「足尾のカモシカ」さんの問題提起

P8181461  私たちは“山と心に木を植えよう”を合い言葉にして多くの皆さんとスクラムを組み、足尾・松木沢周辺でいのちの森をつくっています。この森づくりができるのは半世紀前から始まった木が生える基盤づくりがあったからです。

 昨日、当委員会のアドバイザー・村上壮亮さんに会ってきました。村上さんは元林野庁職員で20代から足尾で治山・緑化事業に携わってきた方です。当時の異名は「足尾のカモシカ」であったそうです。当初の作業ははげ山となってしまった石ころだらけの岩場に木を植えられる基盤作りでした。岩場に転がる石を踏みつけて測量する作業は石の上で安定していることが重要なこと。カモシカは岩場を飛び跳ねても身体は安定し岩場を移動していた様です。村上さん以外の職員は石の上で動けなくなり、作業ははかどりませんでした。そんな中、村上さんは身体を安定させて岩場を飛び跳ね、測量ははかどったそうです。

 土団子→植生版→植生帯を岩場に貼り付けて草の種とヤシャブシ等の苗木を植えてきた村上さん。半世紀経った現在、混植をせずに根が浅いヤシャブシ、ニセアカシヤを植えてきたので、「半世紀前から作ってきた土壌が流されないか」と心配していました。

 村上さんの話を聞き、松木沢地区の森づくりと共に多くの方々の苦労で緑が増えた足尾の森を、私たちはその足元を振り返る大切さを教わりました。5周年を迎えた私たちの課題をひとつ増えました。村上さんありがとうございました。

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2010年8月18日 (水)

“命をかけて森を救った感じだ”、猛暑の中で草刈り

 「日本の気候は亜熱帯に変わってしまったのではないか」というニュースが流れた昨日。足尾でも最高気温が33℃でした。昨日は猛暑の中、JREU大宮の皆さん28名が草刈りをしてくれました。皆さんはバスをチャーターしてのボランティアでした。事務局から作業上の注意や熱中症対策、虫さされ注意などをお願いした後、皆さんは2008年に植樹した臼沢の会場左側斜面と下側左側の斜面、そして松木の杜の草刈り作業に取りかかりました。

照りつける日差しの中での作業は斜面を登るだけで大汗です。松木の杜は草の背丈が高いので苗木の周りを鎌で刈り取り、その後を刈り払い機で草を刈りました。草が生い茂り苗木を探すのに一苦労でしたが、細い苗木に蜂が巣を作り、またカマキリ、バッタ、クモ、蝶など様々な生き物が飛び出してくるたびに生態系が豊かになっていることを実感しました。

Dscf3078 昼食は木陰にシートを敷いて弁当を食べました。午後は臼沢の森の草が生い茂っているため、全員で草刈りをしました。15:00頃には草刈りを完了し下山しました。直後には雨が降り、栃木県内各地では激しい雷雨となりました。
 Dscf3042 皆さんはバスで宇都宮に移動、生ビールを飲みながら「反省会」をしました。組合員の皆さんからは、「子供と植えた木が自分の背丈より高くなった。足尾に来て人間的に成長した」、「自然を壊した人がやるべきだが、悲惨な事態を知った人から行動すべきことの大切さを実感した」、「自分たちの植えたところがこれだけ成長しているとうれしいが、これには見えない苦労があることに気付いた。今後は後輩を連れてきたい」、「木の命をいっぱい救った。沖縄のひめゆりの人たちは命どぅ宝という。豊かな海は森がつくっている。熱中症の危険もある中、私たちは命をかけて森をつくった感じをした一日だった」などを語ってくれました。

28名の皆さんははつらつとしたいい顔をしていました。暑い中の草刈り作業をしてくれた皆さんありがとうございました。

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2010年8月16日 (月)

高原に咲く心の花

P8140563  夏の高原を訪れると多くの方は一気に咲く山野草の花の美しさや可憐さに感動します。その可憐な美しさを求めてハイキングや登山そしてドライブをする方は増え、高原の花は人の心を和ましているようです。先日、私は吾妻郡六合村に住む山口さん宅を訪れ、故・雄平さんの偉業を伺ってきました。

山口さん宅は標高1千㍍の所にあり、家の前に広がる地で奥さんは雄平さんの遺業を引き継いでいました。竹かごと鎌を持って草を取っていた奥さんは突然訪れた私を温かく迎えてくれました。「上がってお茶でも飲んでいきなよ」と、私は一人で生活している家に上がらせて頂きました。

P8090509 コマクサ(写真上)はご存じのように森林限界の砂礫地に生えて薄いピンクの花を咲かせています。シラネアオイは木陰で時々差し込む日差しがある地を好んで生きています。大きな紫色した花を咲かせて神秘さを漂わせているシラネアオイ。雄平さんはコマクサとシラネアオイを種から育て、自然界の力に負けない苗木に育てたところで適地に植えてきました。シラネアオイは10万本を植えるとして何十年間も苗をつくり、植えてきましたが7万数千本を植えたところで他界してしまいました。奥さんはこの遺業を引き継ぎ、雄平さんの目標を達成したいと草を取っていました。

シラネアオイは小動物に食べられる前に種を取り、唐松林を間伐した地に蒔く、コマクサは厚さ30㌢の砂礫地を作り、小さな種を採取して蒔きひとり立ちできる苗を育ててきた雄平さん。現在もその意思と苗づくりを地道に行っている奥さん。すべて無償で国・県そして村有地に提供し、多くの方々に感動を与えている奥さんと故・雄平さんの生き方に接した私は山口さんご夫妻の生き方に脱帽でした。

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2010年8月14日 (土)

本物の森づくりに責任をもつファンクラブ起ち上げ

P8060336  夏休みで子どもたちが田舎の森やキャンプ場の森でいのちの大切さを育んでいる様子をニュースで見ているとホットします。立秋を過ぎたブナ帯(800㍍以上)の生物たちは越冬の準備をしているようです。足尾の小さな森ではクリやコナラ、アキグミが実を付け、生物たちに元気を与えているようです。ミツバの葉を一生懸命食べているキアゲハもさなぎで越冬する準備に忙しそうです。小さないのちの足尾の森では毎年、生態系が豊かになっているようです。

P8100520 今月8日、東京都内に住む森びとインストラクター18名が「森びと東京ファンクラブ」(名称・森びと武蔵会)を起ち上げました。当日は賛同した9名が足尾に参集して午前中は草刈りを行い、午後はファンクラブ立ち上げの会則や今年の活動について話し合いました。

 会の主旨は、宮脇昭先生指導の森づくりを足尾で行い、本物の森づくりをする仲間を募り、本物の森づくりを地域に繋げ拡げていこう、というものです。当面は5年間育て上げてきた足尾の森をさらに積極的に育て、今年は足尾の主木であるブナの実にいのちを吹き込むことにしました。松井富夫会長(第1期インストラクター)、高杉俊徳事務長(第2期インストラクター)を先頭にして会の運営をしていくことになりました。(報告:松井、高杉)

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2010年8月 9日 (月)

常に現場(森)に立って“変化”を感じる

P8020058_2 ロシアでは猛暑による山火事等によって被害が拡大し非常事態宣言が出され、ロシアへの渡航警告を発した国もあるほどです。また、中国では豪雨とそれによる土砂流出で何千人もの犠牲者が出て軍隊が救出に当たっています。先月、日本でも九州北部、中国地方では土砂災害で尊い生命が奪われました。大型トラックが何台も流された会社の方は「想定外だ?」と言っていました。

亡くなった方、被災した方々は「想定外」の異常気象に驚き、自然の脅威に震えているのではないでしょうか。“想定外の恐ろしさ“と言われてもなかなか想像・予知できるものではありません。でも人は森に生かされているという意識を具現化してみると自然(森)の変化に気づくかもしれません。 

 P8010220 宮城県七が宿町の佐藤光夫さんから“真夏の紅葉”が届きました。それは山形県小国町へ向かう途中から見たナラ枯れの写真です。この写真を森の”変化”だ、“森が悲鳴をあげている”と佐藤さんは感じました。「NPO法人水守人の会」の代表・佐藤光夫さんは森の衰弱に危機感をもち、数年前から炭を撒いて森を元気にしています。佐藤さん写真ありがとうございました。

 足尾森びと広場では7日と8日、事務局員とJREUの組合員の皆さん、東京のインストラクター数人で臼沢の森の草刈りをしました。一年ぶりに臼沢の森に入って草刈りをした方もいたようですが、現場に入ってみて若木も人間と同じで猛暑の中で草に覆われては暑苦しいのだ、ということに気づいたようです。

 色々な自己都合理由で現場に立つことを怠れば、自然(森)の変化、社会の変化そして家族や職場の変化に気づかないようです。自分で植えた幼木が自立できるまで育樹する責任を持つことが自然の恵みに感謝することではないでしょうか。長崎の平和の鐘に黙祷です。

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2010年8月 6日 (金)

丹沢の森を元気にするために起ち上がろう!

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8月4日、森びと神奈川ファンクラブは西丹沢・ゴーラ沢出合~展望園地(標高1,100m)~檜洞丸(標高1,600m)間を散策し、ブナの森の状態を見てきました。この散策は今月10日に予定している丹沢のブナ枯れを何とかするための場所選定をするためです。

朝5時過ぎ、ツツジコース登山口を出発し、ゴーラ沢出合を越えるときつい登りの尾根が始まりました。2時間後、展望園地に着くと富士山が眺望できると言われている展望台はあいにく雲に覆われており、その姿を見ることができませんでした。この先は急な勾配が続き、クサリ場や階段もありペースが落ちていきました。もう少し早い時期だとこの辺りではツツジやシロヤシオなどを見ることが出来るようです。やがて稜線と合流し、オオバイケイソウを保護するための木道を歩き、10時に檜洞丸の山頂に到着しました。

2010_0804_103307dscf7308 頂上付近はブナの原生林になっていますが、稜線部を中心に枯れているものが多く全く元気のないブナが存在していました。多くのブナは柵の内側にありました。この柵は神奈川県がブナの保護植生のために柵を設けたものらしいです。

今回、ブナに囲まれた「西丹沢の名山」と誉れ高い檜洞丸のブナ枯れの現実を目の当たりにしてきました。丹沢は1980 年頃からブナの衰退や枯損が発生しています。原因は大気汚染、ブナハバチなどと言われています。今後、元気な丹沢のブナ林を取り戻すために何をしていくのかを議論する材料を得た日となりました。ロシアでは猛暑による山火事などで非常事態宣言か出されていますが、日本でもそうならないように今から日本の森を元気にする対策を執らなければならないと感じました。

昨日は衆議院議員会館を訪れ、山崎誠衆議院議員にナラ枯れの状況を報告し今後の対策と10日に実施する調査内容を議論しました。(小林事務局員発)

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