晴天下「孤高のブナ」に恩送り。初春を待ち冬芽を付けた「希望のブナ」
11月3日に開催した「中倉山のブナを元気にする恩送り」には35名(登山班31名、地上班4名)のボランティア、森びとスタッフが参加し、「孤高のブナ」の根を守る活動を行いました。
朝6時30分に橋倉スタッフが足尾ダムゲートにスタンバイ。参加者を確認後、「足尾に緑を育てる会」様からお借りした松木川を渡った右側の広場(駐車場)に誘導しました。
駐車場では乾燥させた黒土と草の種子の入った袋(植生袋)のセットを山頂に運んでもらうよう黒土10ℓ入り16袋、5ℓ入り15袋を準備。加賀スタッフ、山内サポーターが受付けを担当し、参加者の体力に応じて荷揚げをお願いしました。
到着順に7時頃から順次中倉山登山口を目指して出発しました。先頭は済賀スタッフ、7時半の最後尾は山内サポーターが努めました。
40分ほどで登山口に到着。登山口からはつづら折りの急坂が続くので、小石や落ち葉で滑らないように慎重に登ります。慣れない登山で体力を消耗してしまった参加者の女性の荷物をJREU大宮山岳部の大川原さんに背負ってもらい、こまめに休憩を取りながら励ましの声をかけ登りました。
最初の尾根を越え直登の坂を上ると遠くに「孤高のブナ」が見えました。中倉山の南斜面の木々が黄色や紅に色づき、疲れを癒してくれます。「あと少し、待っててくれよ」と歩き出し、南斜面の迂回コースを進み、第一展望台に到着。遠くには山々が連なり、残念ながら富士山を拝むことは出来ませんでしたが、眼下には素晴らしい紅葉が広がっていました。
紅葉の美しさを瞼に収め、一路稜線を目指します。ミズナラが葉を落とし、斜面と登山道には落ち葉が積もっています。ザクザクという音が続きます。
ミズナラの林を抜け視界が広がると「孤高のブナ」と一緒に、先着された皆さんが笑顔で迎えてくれました。半年ぶりの再会です。今日も凛とした立ち姿を見せています。
11時頃、最後尾のグループと山内サポーターが到着し、済賀スタッフと山内サポーターの説明と実演を受けた後、二人一組となり種の入った袋に黒土を入れ、ブナの根が伸びる東側の「崩壊地」に張り付けていきました。雨で流されないように針金のペグを刺し、地面と接着するように踏みつけました。
11時半に作業を終え、森びとプロジェクトより筆者・清水からお礼を述べさせていただきました。その後、ブナの保護活動に参加された中から、宇都宮市の北岡さん、下野市の関谷さん、栃木市の生沢さんより感想をいただきました。
11月になっても気温25度を超える「夏日」を観測する異常な気候に「地球沸騰化」が現実味を帯びてきます。人間の経済活動によって100年前は煙害によって山の木々が枯れ下流域に公害被害を与え、麓の松木村は廃村に追い込まれました。現在は人間の排出する温室効果ガスによって温暖化に歯止めがかからず、豪雨や干ばつ、山火事など世界中で災害が発生。人間を含む生物の命が奪われ、生存の危機にさらされています。
4月29日の「恩送り」で中倉山南斜面に植えた「孤高のブナ」のDNAを持つ幼木「希望のブナ」は葉を茶色く染め、枝先に冬芽をつけています。山頂の厳しい風雪に耐え、春に備えて冬支度です。
むき出しになっていた「孤高のブナ」の根は多くのボランティアの皆さんのおかげで草に守られた土の布団をかぶり、厳しい冬を耐えてくれることでしょう。
昼食をとり下山。山頂から見る松木川北側の森びとの植樹地(臼沢の森、民集の杜)は、紅葉が始まりました。散歩がてら、もみじ狩りはいかがですか。
午後3時20分に参加者全員が下山し、怪我人もなく終了することが出来ました。“無言の語り木”の叫びに耳を傾け、「恩送り」に参加いただいた皆さま、大変ありがとうございました。
(報告者:清水卓)
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