カテゴリ「森の声」の168件の記事

2009年10月15日 (木)

森の出来事を真剣に観よう!

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 先週、みちのく事務所から「今年はブナの実が取れない」という連絡がありました。ほぼ同時期に秋田県のインストラクターからも、「白神周辺ではブナの実が取れない。12湖周辺を案内しているガイドの方からは、ブナの花が咲いていた頃に寒かったので実が熟しない」、という話がありました。ブナの実を撒いてブナの苗木を育てようとしていたみちのく事務所では苗木づくりで苦慮しています。多分、ブナの実を餌にしているツキノワグマやネズミ達は越冬する前の食探しに必死になっているでしょう。Pa122601 そんな中、足尾・松木の杜ではクワノキ、ユキツバキゃヤブツバキの葉が、松木の杜内の小豆の葉が何物かによって食べられています。今年5月下旬に植えた苗木が、越冬前にして食害に遭っています。
 ところで「シイナ現象」という現象が起こると言われています。樹木に実がなってもその実が形ばかりで、栄養価の低い実になっている、と言われています。この実を食べて越冬する動物達からすれば、このような時季には必死になるのが当然です。
 植物の三大栄養素はチッ素、リン酸、カリと言われていますが、チッ素は葉の栄養、リン酸は実の栄養、カリは幹や根の栄養源になっています。土壌中のリン酸の活動が鈍ってしまうと、ブナの実の栄養価は低下します。このような現象が「シイナ現象」と言われているそうです。木は根、根は土が命でかすら、「シイナ現象」は土壌が弱り、土壌の微生物が生きていけなくなっているのかもしれません。栄養価の低いドングリが日本の森に蔓延してしまうなら、生物が生きていけなくなってしまいます。今、森の出来事を真剣につかみ取り、その対策を講じる大切な時のようです。

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2009年10月13日 (火)

どんなに頭が良くても、お金持ちでも創れない木のパワー

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 今日は久しぶりの休暇をとり、I(女性)さんと事務局員のKさんで軽登山をしました。秋晴れの下で黒斑山(2404㍍)を登り切り、計り知れない自然のパワーを満喫しました。
 ブログではIさんの木に寄せる気持ちを紹介してきました。そのIさんがはじめて足尾の育樹に来てくれた7月、Iさんは高価な登山靴を履いてきました。彼女は、「山(森)が好きで一度は山に登ってみたいのでこの登山靴を買いました」、と言っていました。単独登山は危険が伴うので一度案内しようと、ということで今回、黒斑山を登りました。
 そんなIさんを向かえてくれたのが、雲ひとつない秋晴れと浅間山、そしてカモシカでした。この地に立たないと見られない浅間山の力強さです。その浅間山は噴煙を少し上げいました。外輪は天然林のカラマツの葉が黄金色に輝いていました。その鮮やかな黄金色を眼下にして、紅茶をいただきました。下山途中、「ギィー」という声がしたので立ち止まると、目の前にカモシカが餌を食べていました。カモシカは冬を間近に向かえてコメツガの葉を食べていました。「食事の邪魔をするな!」という顔をしていましたので、「お邪魔しました」、と言ってその場を去りました。
 4時間ほどの登山でしたが、素晴らしい秋晴れで得たことは、私たち人間がどんな技術を行使しても絶対に創りだせることのできないカラマツの黄金色に感動し、その自然の秋色に近づこうとさせる木のパワーにも感謝することができました。Iさん、Kさんお疲れ様でした。

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2009年10月 1日 (木)

若者が創りだす森と生きる文化

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 先月29日、早稲田大学キャンパスを歩きました。目的は、第2回「森と生きるキャンパスフォーラム2009in早稲田」の会場である「井深大記念ホール」の下見です。早稲田大学校内を歩いたのは20代に早稲田際を見に来たとき以来でした。学生運動が盛んな当時の雰囲気とは違って、学生達のゆったりした表情には驚きました。            
 会場の下見をした後は早稲田大学平山郁夫ボランティアセンターを訪れ、フォーラムへの参加をお願いしました。話し合いの結果、フォーラム第2部の活動報告には「一学一山運動」実行委員会から出場してくれることになりました。事務局長の外川さん、森林インストラクターの和田さん、ありがとうございました。
 これで活動報告者全員が確定しました。学生は早稲田大学の学生、学者は農学博士の小川眞先生(大阪工業大学)、森びとからは宮下正次理事です。この3人からは、衰退している日本の森を元気にするための問題提を受けます。若者たちが森と付き合って生きていくことのできる環境づくりを目指して討論を創りだします。今日の足尾は爽やかで、草刈りがはかどりました。

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2009年9月25日 (金)

里山にも酸性雨の被害・ナラ枯れで悲鳴をあげている樹木

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 会津若松市内の里山は衰退していました。ナラ(コナラ、ミズナラ)枯れが相当進展し、ナラは悲鳴を上げていました。木に活かされている私たちは、早急に恩返しをしなければならないようです。
 当委員会は昨日(24日)から本日(25日)にかけて会津地方のナラ枯れ調査を行いました。昨日の調査は西会津町のナラ枯れ(白骨化したミズナラ)、本日は会津若松市内のナラ枯れを調べました。西会津地方(山都町、反口地区)のミズナラの枯れは白骨化した幹が天を突いている様子があちこちで見られました。会津若松市内の里山(飯盛山周辺)ではコナラ、ミズナラが胴ぶき(恐怖の芽)を精一杯出して、助けてくれ!と悲鳴を上げている様子でした。また、東山ダム湖の山肌を見ると、枯れた広葉樹(ミズナラ?)が100本以上見られ、これを見ていた私たちはこのままではこのダムは貯水ダムでなく砂防ダムに変身してしまうのではないか、と心配するほどでした。
 飯盛山の周辺の里山のナラ枯れは一刻の猶予もない、という状況のため、私たちは早速、ミズナラを元気にするために炭を撒く計画を検討し、調査に同行してくれた福島県、宮城県のインストラクター3名を中心にして実行していくことにしました。
 今回の調査にアドバイスしてくれた森林管理署の皆さん、会津若松市役所の皆さんありがとうございました。調査結果の概要は後日、発信します。

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2009年9月21日 (月)

自然(森)の力を改めて実感!

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 当委員会は今年で足尾の森づくりを始めて5年が過ぎました。臼沢の地には小さな森が形成され、豊かな生態系が育まれているようです。これも年間100日以上の育樹・育苗活動に汗してくれましたボランティアのお陰です。皆さんに心から感謝いたします。
 事務局は17日、臼沢の森周辺の植生調査を行いました。森づくり5周年を向かえた小さな森の様子を記録に残そうと、矢ヶ崎さん(国際生態学センター研究員)と星さん(矢ヶ崎さんの友人)の協力を得て阿蘇沢地区と臼沢の森を調査しました。
 この調査は当委員会が来年発行する「森づくり5年報告」(仮称)に向けたものです。阿蘇沢では足尾銅山製錬所から排出された亜硫酸ガスに負けずに生きているミズナラ周辺の植生を調べ、臼沢の森では5年前に植樹した会場とこれから植樹する会場の植生を調べました。
 臼沢の森に立った私たちは爽やかな秋風を身体に感じながら、人間の地道な森づくりがいのちの森へと育まれていることを実感しました。木を植えると葉が出て、葉を餌にする昆虫が集まり、葉を住処にする昆虫が集まり、落ち葉になっても落ち葉を餌にする分解動物達が集まり、土壌を豊かにしてくれます。また、小さな森には昆虫を餌にする小動物たちが集まり、極めつきはアリや蜂を求めてツキノワグマが訪れるようになりました。間もなく小さな森では美しい紅葉が見られ、自然の力で私たちの心が癒やされます。

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2009年9月16日 (水)

現代人は森を軽く見ている

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 第2回「森と生きるキャンパスフォーラム2009in早稲田」開催準備が始動しました。開催日は11月29日(10時から17時)、会場は東京・早稲田大学国際会議場「井深大記念ホール」です。今日はこのフォーラムの第1部・講演(テーマ:「日本人の木の文化の再認識」)の講師予定の浦川治造さんに会ってきました。
 浦川さんは千葉県君津市黄和田畑仲ノ台に住んでいます。住まいはJR内房線木更津駅から久留里線に乗り換えて、終着駅の上総亀山下車、バスで30分のところです。70歳の浦川さんは東京アイヌ協会名誉会長をされ、アイヌの伝承文化を絶やさない運動を推進している方です。
 講演の依頼をしている話の中で浦川さんは、鳩山民主党連立政権に対して「要望書」を提出する準備をしていることを話してくれました。浦川さんは、アイヌの伝承文化を伝える古老への援助やアイヌの復権を実現したい、と熱く語ってくれました。
 講演依頼は快諾していただき、浦川さんとの話は昼から午後4時頃まで続き、森を元気にさせる話や政治問題、環境問題などの意見交換ができました。フォーラムでは、アイヌ人の森の文化(森に生かされている)を参加者の皆さんに掴んでいただければ幸いです。
 浦川治造さん、長時間お付き合い下さってありがとうございました。

2009年8月19日 (水)

日本の森を元気にさせよう

P8182312  「さど 島の新聞」(37号・7/28付)が東京事務所に送られてきました。郵送してくれたのは牧れいかさん。彼女は私たちがナラ枯れ調査で佐渡島を訪れた時、精力的に島を案内してくれました。彼女は佐渡の自然と文化をこよなく愛し、守り続けている方です。
 「島の新聞」の8面には、「炭でよみがえる枯れ木」という見出しで彼女の投稿(2回目の)が載っています。記事には、「松枯れ、ナラ枯れ対策には、現在行われている薬剤の樹幹注入よりも、枯れ始めた樹木の根元に炭を撒いて土壌を中和させるほうが有効です」と書いてあります。そればかりでなく、米どころ佐渡の資源(廃棄物となっている籾殻等)を活かして炭を生産し、佐渡の森を元気にしようと起ち上がっています。記事の最後には、「松枯れ、ナラ枯れに対する炭の効用を佐渡でも実証し、松枯れ、ナラ枯れに心を痛めている人々とともに、できることから行動していきたい」と文を結んでいます。(ナラ枯れ・炭撒きについての問い合わせは、090-4200-2337 牧さん宛に)
 ナラ枯れに心を痛めている方々は日本各地にいます。また、その原因を研究している学者の皆さん、そして日本の森を元気にしようと、酸性化した土壌を何とかしたいと炭を撒いている皆さんが各地で汗を流しています。しかし、多くの皆さんは日本の森が危機的だという認識にないことも悲しい事実です。嘆いていても日本の森は元気になりませんので、当委員会はできることから始めている新潟県佐渡島の皆さんと共に日本の森を元気にさせるアクションを始めています。(写真下:佐渡の衰退しているブナ)牧さん、元気を届けていただきありがとうございました。

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2009年8月16日 (日)

蝶を追う親子が育む自然と人とのつながり

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 敗戦64年目の昨日、私の60年間を振り返るきっかけをつくるために、パートナーと一緒に湯ノ丸山(2101㍍)を登頂しました。地蔵峠からの登りは緩やかな山道で、クガイソウ、マツムシソウ、ノハラアザミ、シモツケソウ等の可憐な姿を見ながら約1時間程歩きました。
 登山者の多くは家族連れで、網を持って蝶やトンボを追っていた親子、花を見ながら子に何かを話しかけいる親を見ていると、このように小さい時から自然に触れ合うことは自然や地球そして人間とのつながりを育むことになるのか、と感じました。
 下山途中では、「絶滅危惧Ⅱ類にあるミヤマシロチョウを守っています」、と言ってパンフレットをいただきました。その方は湯ノ丸牧場から湯ノ丸山に僅かに棲息しているミヤマシロチョウを調査・保護していました。パンフレットには、この蝶の生息地は標高1400㍍以上の比較的高い渓流沿い、稜線、牧場などの疎林だが、この地は開発や植林、過度の採取などによって失われてしまったそうです。
 私の幼い頃は自然のど真ん中で遊んでいましたので、自然とのつながりは食(田植えや稲刈り、麦踏み、キノコ取り、山芋掘りなど)、小鳥やウサギの飼育で感じていました。しかし、地球とのつながりを実感できたのは恥ずかしながら40歳過ぎてからでした。下山しながら思ったことは、自然と触れ合っただけでは趣味の域に留まってしまうので、そうではなく体験したことを振り返えり、様々な疑問を探って観るということを幼い頃から養っていくことが大切だ、ということでした。
 今週末の「森びと親子自然教室」では、湯ノ丸山で出会った親と子の自然との触れ合いを参考にして森の宝物を探してみます。

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2009年8月14日 (金)

日本の森は元気がない

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 今月7日夜、東京都文京区内で「平成 熊あらし」という映画を観ました。上映前に岩崎雅典監督は、「2006年、ツキノワグマは5,185頭捕獲され、そのうち4千頭以上が捕殺された。豊かな森のシンボルだった熊が、今なぜ人里に出没するようになったのか。そこには複雑な関係が絡んでいる。人は、熊とどう付き合えばいいのか、を考えてほしい」、と挨拶された。
 映画に出演していた自屋マタギの工藤さんは、「8年前からブナの実が森全体で豊作になるという状況でなくなった。これは人間の影響だ」、と話していました。この時季、ツキノワグマは蟻や蜂を食べ、間もなくウワミズザクラ、ミズナラやブナの実を食べて冬眠に入ります。足尾の「森びと広場」対岸の松木川沿いには熊が木を剥いで蟻を食べた跡があります。以前、テレビで足尾の熊が赤く熟したアキグミの実を食べている様子を見ました。
 越冬する熊、冬眠中に出産する雌熊にとってはそれに耐える栄養豊富で十分な餌が必要になります。実のなりが少ない、実のなる周期が長い、実がなってもミネラルが乏しくては、熊は生きていくために必死なります。映画を観て、背に腹は変えられず、人間との境界線を越えざるを得ない現状はマタギの工藤さんが言うように、「人間の影響だ」と思いました。
 ナラ枯れ調査を2回行って実感したことは、森があっても木は元気がなく、衰退している森になってしまっている、これは人間が犯したものだということです。そのような気持ちを大切にして、12日には事務局メンバー、JREUのOBの皆さん、そして今月も東京から駆けつけてくれた井本さんたちが苗床の草取りをしてくれました。ありがとうございました。

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2009年7月31日 (金)

人間のプライドを棄てて、森の悲鳴に応えよう

P7300109  集中豪雨によって自然災害が発生し、各地で犠牲者が出ています。日本で降っている雨の酸性度(1984年~1992年調査)はpH4.8~pH4.5と言われています。この雨が日本各地で何十年間も降り、地中に浸透しています。木や魚などの生き物が耐えられる酸性度はpH5.2と言われています。そうすると森の中にある湖に棲んでいる魚、森の土から養分を吸って生きている樹木は、何十年間も耐えて生きていることになります。
 小国町貝少地区から採取した土を蒸留水に入れ、2時間程経った上澄みをpH器で測ってみましたらpH4.5~pH4.7でした。この土は地上から20㌢程下のものです。貝少地区の樹木は生き物が耐えられる酸性度以下の土壌で生き続け、その姿は全ての生物達のためにこれからも精一杯生き続けていこう、というしています。それがナラ枯れとして無惨な姿になったり、幹に「恐怖の芽」を出して悲鳴を上げて衰退している樹木です。2回のナラ枯れ調査を行い分かったことは、衰退した幹にはカシナガが侵入していることは確かですが、枯れた原因はカシナガでなく、樹木が悲鳴をあげなければならない土壌に原因があることでした。
 調査を行ってみて、樹木の悲鳴を複眼的に聴く謙虚な姿勢が大切であることが分かりました。人間の都合で悲鳴を聴のでなく、森に生かされている一員として土壌の応急処置を急がなければ、と考えさせられました。P7290093

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