2023年6月 1日 (木)

地球環境危機下で「いかに生きるか」を考えるシンポジュウム③

 5月27日のシンポジウムでは4名のパネラーからの報告を受けて、18名の参加者から質問や意見をいただきました。限られた時間の中ですので、発言をいただくことが出来なかった方もおりました。栃木県で足尾の森づくりに汗を流すYさんから意見が届きましたので紹介させていただきます。

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 「パネラーの皆様ありがとうございました。皆様が地球の環境危機に対して大きな危機感を持って毎日を過ごされていらっしゃることがヒシヒシと伝わってきました。私も少しは危機感を持って新聞を読んでいますが皆様の危機感と比べるとまだまだと感じてしまいました。

 本日のシンポジュウムのテーマ地球環境危機下で「いかに生きるか」についてですが私もこの機会に少し考えてみました。

 「人と自然との距離」が昔(私の子供の頃)と今とでは大きく離れてしまっている事です。特に都会では距離の離れは大きく、無いと言っていいほど離れてしまい身近の自然環境危機に鈍感になってしまいました。

 

Photo(東京都 品川区)

 私の体験している昔といっても私は昭和20年生まれですのでそんな遠くない昔です。

 小学校から中学校の頃は未だ家の周りには空き地や池、土も沢山ありました。そこで遊びといえば外でが当たり前で、家にいれば外で遊びなさいと叱られました。外では自然に触れ合える体験が出来る環境が身近にありました。

 田口則芳さんの生活されています秋田とは雲泥の差がありますが、公園も今のように人工的に整備されておらず、昆虫、魚(鯉)、ザリガニなど沢山採ることが出来ました。夏休みの宿題に昆虫採集の標本を作り提出したことを覚えています。そんな環境で遊ぶことが出来ましたが少しづつ家の周りの環境が変わってきました。まず隣にあった空地が無くなり、公園が人工的に整備され、池に近寄れなくなりました。大きな庭のあった家は宅地開発で小さく区画され木が切られ昆虫も採れなくなりました。そしてだんだん外で遊ぶ子供がいなくなり、道が舗装され土が無くなり、高層ビルが建ち空さえもなく無くなりつつあります。

2(秋田市 河辺岩見の清流)

 私たちの子供の頃は自然との距離が近く触れ合うことが出来ましたが、今の子供たちは特に都会の子供の周りには人工物ばかりで身近な所に自然がありません。親に連れられてお金を出して自然体験をする環境に育っているのが現在です。

 子供時代に自然と触れ合う体験の少ない子供に、自然への感受性が少ないと責められません。その子供たちが大人になっても引きずっていて自然への感受性が少ないのもしょうがありません。

 自然環境に関心が薄いのは自然の不思議さ、楽しさなどが想像出来ないからではないでしょうか。

 本やテレビで読んだり見たり聞いたりしても「生きている生物」を体感として肌で感じなければ知識として残るだけで感動は得られません。感動が無ければ自然に目を向けることはしません

 栃木県ファンクラブは幸いにも高齢者が多く子供の頃、遊ぶといえば外でお金を掛けず周りに沢山あった自然で育った人たちで自然から感動を受けた人たちばかりです。今の大変な作業を楽しそうに行っているのは子供の頃に自然と沢山触れ合った体験が忘れられないでいるからと思っています。

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(足尾 臼沢西の森 里親植樹の幼木たち)

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 我々が自然から受けた楽しい場を我々大人が壊したために自然の楽しさを体感出来ずにいる子供たちへ少しでもその場を提供し、パソコン以上に面白いことがあることを知って貰いたいと思っています。

Dsc013922(足尾・中倉山 孤高のブナ保護に協力する親子)

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私の生活も消費生活の拡大に満足を求めるのではなく、無駄な消費を省く生活でも満足できるような毎日を過ごしたいと思っています。」(栃木県・Yさん)

(報告:清水 卓)

2023年5月30日 (火)

地球環境危機下で「いかに生きるか」を考えるシンポジウム②

 27日開催のシンポジウムで司会を務めてくれたのは、JR貨物労組で書記をされている岩間祐美子さんです。初めてとは思えないほど、スムーズな進行で進めていただきました。

Photo さて、4名のパネラーから報告のあとは参加者から意見をいただきました。

 まず、田口さんと矢野さんの報告に対して、4名の方から意見がありました。

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「私の出身の北海道では5月なのに30℃を何日も超えている」「より豊かにより便利にする経済活動と楽をするための生活スタイルそのものが地球温暖化になっていく一つの要因だということをまざまざと感じています」「異常気象の中での勤務で倒れている方もいる。環境の変化に対応するためにサマータイムの導入や暑いピーク時間には休憩を入れる等、規制を考えていかなければならないと思います」(宮城県・Mさん)

「JRからの出向として設備関係で働いています。夏の線路上の温度は気温よりも10~12℃高いことはJRのレール温度計の数値で把握しています。夏場の線路上は過酷な状況下です。下請け会社ですけども、実作業をするので一番危険です。3K職場ですので、若者が入ってはすぐに辞めてしまう万年人手不足の状態。約8割が60~70歳が作業している実情です。熱中症を避けるために夜間に施工できないか考えますが、割増賃金が発生したり、照明等の機材の調達もあり、費用も伴い、それに見合った(JR会社との)契約ではないことが一番の原因です」「会社は安全第一と様々な場で言いますが、毎年熱中症に関わる事象が発生する中、事が起きればこまめな水分補給や適度な休憩と簡単に言っているだけではないでしょうか」(秋田県・Tさん)

「昔と違って今は降ると、川が氾濫する。原因は大雨と河川の管理がされていない。砂利やヤナギがあって水がスムーズに流れないことだった。昨年、要望書を提出した結果、今年2月に河川改修工事が行われた」(福島県・Mさん)

「退職をしてから町内会や地域の高齢者とのサロン活動を行っている。あわせて海岸防災林づくりをしている」「現役時代はネイチャークラブを通じて人づくりをしてきた」「CO2を削減するために、私たちができることは木を植えること」「家庭でもエネルギーを減らすためにできることとして、車を持たずに仙台駅までの買い物も健康のために4km歩いている」(宮城県・Aさん)

 人間活動と気候危機によって、職や生活を脅かしている現実はごく身近にあり、他人事ではいけないと感じました。

 続いて、鈴木陸郎さんの報告に対して、5名の方から意見がありました。

1 「人間がハゲ山にした足尾の荒廃地で森を育てています。そのハゲ山のひとつに中倉山があり、北側の斜面は今でもガレ場が残り、雷雨が降ると土砂が流れています。この山の生息の限界地点には一本のブナが生きており、樹齢を推測すると120年ほどですので、煙害で息絶えた草木の悲鳴や廃村に追い込まれた村びとの怒りや悲しみを宿していると思っています。ところが、150年前からの銅山開発では森や人を苦しめましたが、150年後の今は、異常気象で緑化してきた草木が大雨や雪融けで土砂が流され、このブナの根の露出が拡大しています。放置するとこのブナは枯れてしまうのではないかと不安になり、私たちは7年前から土を運び揚げ、草の根の力で土砂流出を防止しています。森に生かされていることを実感してもらおうと、継続していますが微力な活動では不安が消えません」「鈴木さんの石炭火力発電反対の公判闘争報告を聞いて感じたことは、異常気象によって生活が脅かされている現状にブレーキをかけるには、地球を温めている二酸化炭素やメタンガスの排出を削減し、同時にそれらを吸収ししてくれる草木を健全な状態にしていくことだと思います。そのような願いを登山者に届けたいと、ブナ保護を継続しています」(茨城県・Sさん)

「私の研究のテーマは、足尾・渡良瀬川流域における公害と環境再生に着目しています。去年の4月、足尾で森びとプロジェクトと出会いました。 森びとの皆様は、地球温暖化にブレーキをかけるために森を作り上げています。それだけでなく、自然の再生が困難な煙害地で何十年もかけて森を育んできました。気候変動を解決するためには、様々な政策や技術的な議論が必要だと思いますが、森の再生はその基礎的なステップではないかと考えています」「この間、中倉山でのブナ保護活動に同行させていただきました。毎回綾線を歩くたびに、胸に複雑な感情が湧き上がります。松木堆積場にはヒ素や鉛を含んだ銅の精錬カスの黒いカラミがまだ山積みされています。周りには木が植えられていますが、樹種が単一でほとんどがヤシャブシです。しかし、森びとの森も目に映ります。春は淡い緑、秋は赤や黄色に色づく、生き物たちが暮らす森です。そこで「希望」を感じます」「よく言われるのは、植物は地球の生産者であるということです。人々が植えた木は、一本の命にとどまらず、その種がさまざまな動物によって運ばれます。1本の木を植えることは、地球上に生きる生き物たちに、未来への希望を植えることでもあると考えています」「温暖化は今を生きる、私たちがくい止めなければならない課題だと思います。石炭火力発電所の排出する二酸化炭素は日本だけでなく世界に影響を与えることに気づいて欲しいです」(東京都・Kさん)

「4月23日に神宮外苑を散策しました。再開発計画では1000本以上の木が伐採されようとしています」「世界中で起きている気候変動に目を向けていかなければ、私たちと未来を生きる子どもたちの生きる場所がなくなってしまいます。これに逆行しているのが東京都の都市開発です」「場所は違ってもみんなと手を取り合いながら行動をすることで道を拓きたいと思います。市民パワーで脱炭素・エネルギー政策の転換を求めてまいります」(東京都・Hさん)

「2014年には東海道線で土砂流出があり、10日間不通。2018年には西日本豪雨で100日間不通となり、本州から九州までの荷物が運べなくなりました。2020年には熊本で豪雨があり、6か月間鹿児島には荷物が届きませんでした。2021年は特に災害が重なり、貨物輸送に大きな影響が出ました」「(気候変動により)荷主が輸送モードを貨物輸送から二酸化炭素を大量に排出する船・トラック・飛行機での輸送に戻ろうとしている。貨物輸送は二酸化炭素の排出量が船の2分の1、トラックの10分の1、飛行機に至っては27分の1と言われていて、輸送モードとしては二酸化炭素の排出が少ない。荷主が他のモードに移ることは、二酸化炭素の排出が増えてしまうことにつながり、負のスパイラルに陥ることを懸念しています」(静岡県・Nさん)

「小田原かなごてファームでは、農業をやりながら自然エネルギーをつくっていくということで、発電所を5つ持っており、発電所で作った電気を使って飲食店を経営していて、それは日本で初めて自分で作った電気を既存の送電線を使って自家消費をすることができるようになっています」「よく経営者は政治に口を出すなと言われますが、思いっきり口を出しまっくて、干されたりすることもあるんですが、それでもめげずに小田原で活動をし、実践しています」「再生可能エネルギーのメリットは核のゴミもない・二酸化炭素の排出もない・コストが安い・地域の活性化・心豊かな生活が可能」(神奈川県・Oさん)

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 二酸化炭素の削減を貫徹することなしには私たちの生存は不安定のままです。二酸化炭素の吸収力を上回らないような生活には、少しの我慢が生じることもあります。鈴木さんからは、闘いを通じて漁師からの励ましや若者、市民の参加を勝ち取り、学習を重ねてアクションを起こす。そして闘いを振り返り、次の活動へと、組織を強化しながら闘いの輪を広げてきた教訓的な報告がされました。同時に政治や世論が気候危機の危機感を共有するために、大きなムーブメントにする必要があります。仮に1.5℃目標を達成しても、気候危機による被害は今よりもっと甚大化すると予測されます。このシンポジウムで出会いをスタートに、連帯を深めていければと思います。 

 最後に神田涼さんの報告に対して5組(9名)から意見と質問がありました。

・樹徳高校生から先輩・神田さんの質問

 Q.「成長途中と成長後の二酸化炭素吸収量の具体的数値での違いは」

 A.(神田さん)「3~4倍は違っています」

 Q.「これからカーボンニュートラルを実現するためにどの程度二酸化炭素をを削減すれば良いのでし

   ょうか」

 A.(神田さん)「火力発電所の二酸化炭素排出量から見ていくと、現在の5分の1になれば今の森林の

         量で賄いきれる。そこからさらに車の排気ガスや新しい技術があれば7分の1まで落

         とせれば賄いきれる」

Q.「経済抑制によって起こる物価の変化や技術の停止のデメリットについてどのように考えています

  か」

A.(神田さん)「大胆な経済抑制ではなくて、だんだんと減らしていけば物価への影響は出ないかな。

        技術に関して言えば、政治任せになりますが気候変動抑制のための補助金があれば良

        い」

Q.「経済抑制のための法の制定や企業の取り決めを大人に行わせるために学生ができることはあります

  か」

A.(神田さん)「火力発電所反対の活動をしている方々がやっているように署名活動があります」

Q.「伐採した木をバイオエタノールの原料にする話がありましたが、木材の運搬や加工する際に多くの

  化石燃料を使用する点や多大なコストがかかるという問題点がありますが、何か改善点はあります

  か」

A.(神田さん)「今現在ない。大学の授業でも習ったのですが、どうにかしなくてはいけないねという

        締め方になっていました。そこに必要な化石燃料については、最初はかかってしまい

        ますが、1回バイオエタノールを作ってしまえば、そこからはバイオエタノールで機

        械を動かし、運ぶ分のエネルギーはそこで回していけます。コストに関しては政府や

        自治体からの補助金が出ないと難しいのではないかと思います」

「神田君の話を聞いてうれしかった。環境の問題は専門の人だけではなく、皆んなに知ってもらいたいこと」「ディベートでは、短期的な利益(試験のための勉強)と長期的な利益(環境等)の話が良く行われます。アメリカでは、生態系の中で動物がいなくなったらどうするか等のディベートが行われるが、アメリカが良いわけではない。災害については日本の方が良くできている。どっちが良いとは言えないが、もっと国際連帯・国際理解が必要だと思う」(栃木県・Zさん)

「先日、飯館電力株式会社を訪問しました。話を伺うと、原発は絶対稼働させないと。生活に欠かせない安全なエネルギーは自分たちで生産する。それを村の再生につなげるという理念と情熱を持っていました。今では、再エネの地産地消を進め、同時に脱原発・原発事故の風化の防止に取り組んでいました」「脱炭素社会がばら色のような希望の社会に見えるが、そこには政府の原発回帰や石炭火力発電継続ということが含まれており、気候危機に向き合っていかなければならない。まずはその現実を知ることから始まり、その原因、政治や企業の課題、そして我々に求められていることに背を向けてはならないことの大切さを学んだ」(福島県・Tさん)

「20年前まで小学校の教諭をしていました。学校は賢い子を育てるためにあるのであり、賢いというのは神田さんのような発言ができて行動できる子どもたちだと思います。大学生になって研究者になれという意味ではなく、足尾での体験を通して自分で一生懸命に考えて何故ということをどうしたら解決できるかを考える子どもたちをつくるのが教員の仕事だと思っています」「学校の仕事は、気づかせる・どうしたら良いか考えさせる・私たちは何ができるか考えさせることだと思います」(千葉県・Iさん)

「経済活動を自然界が温室効果ガスを吸収できる範囲内で活動を行っていく政治の仕組みを作っていかないと我々の運動の大きな壁になる」「2021年はコロナで経済活動が停滞して12億トンの二酸化炭素を削減することができた。2011年の東日本大震災後には全ての原発が稼働していなくても生活をすることはできた。よって経済活動を抑制することは可能です。ここに集った人たちが政治を変えるアクションを起こすことが重要」(群馬県・Tさん)

 神田さんの報告では、若者の視点から自分たちが何とかしなければならないとの決意が感じられ、大人も若者の未来に対して真剣に向き合っていった場となりました。

 また、アメリカのミシガン大学OGのキャッシー・ガスキンスさんよりアメリカで気候変動をどのように感じているかメッセージをいただきましたので紹介します。なお、キャッシーさんは2019年に森びとが足尾を訪れた彼女たちに環境学習をサポートが縁で関係が継続していました。「個人的には、私は自分や家族のエネルギー消費に敏感でいようと努めています。私たち一家は最近、四季すべてを味わえるミシガン州から引っ越しました。引越先は毎年1年のうち10か月も温暖な気候のテキサス州です。幸いにも、昨年12月に氷の嵐が襲来した時、私達はミシガン州に帰省していました。しかし、1週間後にテキサス州に戻った際に、まだ電気や水道が止まったままでした。昨年は2月に約210人が亡くなった冬の嵐に始まり、数か月後には全く同じ地域が観測史上で最も暑い夏を経験しました。テキサス州のインフラ設計は、こうした気温の乱高下に係るエネルギー消費が考慮されていません。現状では、テキサス州は化石燃料の産出で全米1位です。しかし、テキサス州は風力発電の供給ナンバー1にもなりました。テキサス州の住民は変革に向けて前進中です。そして、より清廉、より信頼できる複数のエネルギー源を望んでいます。」 (翻訳:弘永裕介サポーター)

May_2019_you_and_mr_t まとめに立った清水卓(事業協会森づくり主任、森びと副代表)より「温暖化を抑えることも、SDGsを冠に付けて“環境にやさしい商品”とうたって購入を促されたり、ガソリン車からEV車、電池自動車への買い替えなど、企業が利益を得る方向に誘導されています。経済活動・生産活動を支えているのが私たち労働者・市民です。インフルエンザやコロナ感染で経済活動が抑えられたことが紹介されましたが、本質は私たちの意志で経済活動を抑えるということだと思います。少しの我慢を伴いますが、企業が莫大な利益を得て、労働者・市民の暮らしが疲弊するということがあってはならないと思います。どのような社会を創造していくのか、その社会の主役は誰なのか、次世代の若者たちが輝く脱炭素市民社会を共に考えていければと思います」「日本政府は2050年の温室効果ガス排出実質ゼロを掲げ、2030年代にガソリン車の新車販売禁止を打ち出しました。それに伴い化石燃料からの転換を図る企業が増え、5月4日の毎日新聞の記事を見ると、ENEOSが和歌山製油所の閉鎖を有田市に宣告しました。製油所には従業員約450人に加え、協力34社の約900人の雇用を支えていました。自民党の国会議員が動いて、再生可能エネルギー施設をつくることになったようですが、いつ稼働するか見通しは立たず、閉鎖後の雇用は100人程度にまで落ち込むと伝えています。また、ホンダのエンジン部品製造拠点の栃木県の真岡工場も2021年に閉鎖が発表されており、自動車産業の雇用者数は1000万人に上ります。ですから、脱炭素社会への移行は、働く者にとっては雇用の問題であり、家族を含めた命の問題だといえます。そして、公平な移行を求めなければなりません。公平な移行とは、気候変動対策に伴う産業構造の変化の際に、誰も取り残さないこと。つまり、失業・働きがいの喪失や地域経済の衰退を招くことなく構造転換を目指す指針です」4名のパネラーの皆さんの報告、参加者からいただいた意見を通じて、私たちが生きているこの地球・社会で起きている現実が共有できたかと思います。大きな転換点に立っています。どのような脱炭素市民社会をつくりだしていくのか、本日参加された皆さんと地域の皆さんと、お茶を飲みながら語り合う場なども設けていただきながら、この地球環境危機下で「いかに生きるか」を考えていければと思います」と話がありました。

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 最後に、一般社団法人日本鉄道福祉事業協会・田城郁代表理事より、4名へのパネリスト、参加者へのお礼が述べられ、「定款では、労働者が案して暮らせる環境を守るための森づくり事業ということで認可を受けました。脱炭素社会に少しでも近づけることが日本鉄道福祉事業協会の社会的責務だと肝に銘じながら、森びとプロジェクトをはじめ思いを同じくする方々に学びながらともに歩んでいきます」と閉会の挨拶がありました。Photo_2 様々な現場で感じている現実に対して私たちの考え方を語り合うこそ、異常気象におびえて生活する不安や危機感そして無力感を脱する一歩になります。今回のようなシンポジウムにとどまらず、地域での「お茶会」や志を共にする方々との連帯・連携の輪を大きくし、行動を起こしていくことが大切なことだと思いました。ありがとうございました。

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(報告:小林敬)

2023年5月29日 (月)

地球環境危機下で「いかに生きるか」を考えるシンポジウム①

 27日、一般財団法人日本鉄道福祉事業協会との共催で、地球環境危機下で「いかに生きるか」を考えるシンポジウムを開催しました。東京の目黒での会場の他、Zoomによるオンラインで北は北海道、南は九州から計150名の参加者が集いました。

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 主催者あいさつに立った森びとプロジェクト桜井代表からは「シンポジウムの題名は、地球に生きる全ての人に課せられた課題」「温暖化や脱炭素社会の問題は世界的にも政治的にも議論開催されているが、COP27にも象徴されているように、会議は進めるけれども具体的に温暖化防止が追い付いていないのではないか」「地球環境危機を人間が大きく叫ぶ一方で、声を出せない動植物の命が失われている現実もある」「今の生活が生きて行く上で大丈夫なのか問われている」等が話をされました。Photo_2 まず、4名のパネラーより、異常気象に脅える現場の生の声を報告していただきました。

 1人目は秋田県で農業を営む田口則芳さんです。「3年前に会社を立ち上げて、自分で生産したものは自分で販売していくスタイルで食糧生産に励んでいます。今食糧生産をとっても海外から多くのものが輸入され、多くの燃料を消費し、二酸化炭素を大量に排出しています。一番は私たちが生きて行く上で地産地消、自給率は100%を目指していきたい」「秋田では水害、雨が降ると集中豪雨で毎年のように川が氾濫し、田んぼに水が上がり、去年は果樹園が山崩れによって砂利で埋まってしまいました。もう収穫ができないところまで追いやられています。これは私たちの暮らし方がより便利に、もっと快適にという社会の仕組みをもう一度ここで深く考えていかないと、子供たちに責任を持った社会をおくることはできないと思っています」等、地球温暖化が原因と思われる農業被害状況と地域環境の変化について報告がありました。

Photo_3 2人目は、JR東日本で働く矢野雅之さんです。「線路内の草刈りは暑い季節に行うので天気予報で最高気温は何℃だと気にはしますが、今日は暑いなというレベルでした。しかし、先輩から『コンクリートや線路は直接温められ、天気予報の温度と実際の線路付近の温度は全然違うぞ』『線路付近は40度を超える時もある』と教わり驚きました。正直『天気予報の温度』=『現場の温度』と思っており、先ほど延べと通り天気予報の気温しか気にせず、命にかかわる温度の中で作業をしているという事に無自覚でした。また、現場の対策としては水分をとる、塩飴をなめる、体調を見て作業する、です。休憩も気が付いた誰かが『じゃあ休憩しようか』と言わない限り作業は行われます。現場任せであり、中止にする明確なルールはありません。ルールがないことに対しての危機感のなさも無自覚でした」「鉄道魂という言葉がありますが、精神論がまかり通ってしまっているのではないでしょうか。そういう意識の中で働かざるを得ない、会社からすればどんな環境でも働いてくれる社員がいてくれて万々歳ではないでしょうか。働く側から体温を超える中での作業をどうするのか、命を守るための対策(ルール)を考えていかなければなりません」「ある職場では、命の危険があるにもかかわらず草刈りをして『いくらコストカットが出来ました』とアピールをしています。命よりもコストカットが優先されており、知らず知らず会社の利益が優先されています」「労働時間の決まりがあるが体温を超える労働における法規制はありません。真面目な社員は暑かろうが一生懸命働き命を落としてしまいます。命の危機を認識し、声をあげ歯止めをしていかなければなりません。今の現状をきちんと把握し、鉄道業だけでなく屋外で働くすべての労働者を守る為にも法整備など要求していきたいと思います」等、報告がありました。

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 3人目は、横須賀石炭火力発電所建設中止訴訟原告団団長の鈴木陸郎さんです。「横須賀石炭火力発電所は、1号機が完成し、この6月にも営業運転が始められようとしています。2号機が完成されて稼働されると年間726トンの二酸化炭素が排出されます。この量は石炭1日1万トンを燃やし、2万トンの二酸化炭素が排出されることになります。2万との二酸化炭素は、ドライアイスにすると10トントラックで毎日2000台分という膨大な量です。また石炭灰が約1割発生し、一日1000トンの石炭灰が出ます。このほかPM2.5をはじめ大気汚染物質が放出され、改善の途上にある大気環境が悪化することが懸念されます」「私たちは気候危機の打開は世界が協調して取り組まなければ解決できない問題と考えて、この世界の流れに逆行している石炭火力発電所の運転開始に対して、地元の市議会が何らかの意思表示をするべきであるとして、稼働の中止と再エネ100%を目指す決議、議会としても意思表示を求める請願を提出しました。結果は6対32で否決されましたが賛同署名をすることで、地域に入っていろいろな方と対話する貴重な経験になりました」「気候危機は裁判で解決できるとは思われないし、裁判所だけに期待するわけにもいかない」等、学習会や報告会、セミナーなどの広報活動を通じて漁師や、世界の流れに逆行する石炭火力発電所建設に若者たち、市民が参加したたかう基盤と行動をつくりだしてきた報告がされました。

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 最後4人目は、群馬県樹徳高校のOBで名古屋大学4年生の神田涼さんです。「現在、名古屋大学農学部で炭を使った重金属汚染土壌の浄化についての研究をしています。簡単に言うと足尾銅山のような鉱毒の被害を受けた場所をきれいにしよう!というような研究をしています。実は、高校の頃に部活動の一環として今回のシンポジウムの主催である森びとプロジェクトさんが行っている足尾の植樹に参加させていただいたことがあり、そこでの経験がきっかけとなりこのような研究をさせていただくことになりました」「温暖化対策の一つであるカーボンニュートラルを実現するためには、2つの大事なポイントがあります。まず一つ目が、木を切って資源として使うことが大事になってきます。植物が最も二酸化炭素を吸収するのは成長していくときで、苗から木材として収穫するまでの間が一番成長するタイミングなので、どんどん木を切って苗を植えていけば効率的に二酸化炭素を吸収することが出来ます。また、この切った木をそのまま放置しておくと生態系の中で分解されてまた二酸化炭素に戻ってしまうので分解される前に木材として使ったりバイオエタノールの原料にしたりしてこの図のサイクルが保たれるようにする必要があります。2つ目のポイントとしてはそもそも人間の活動によって発生する二酸化炭素の量を減らす、ということです。現在言われているように化石燃料の使用を0にすることももちろん大事です。バイオエタノールなどを化石燃料の代わりに使うことで、元々大気中にあった二酸化炭素が燃料となるため、新たに大気中に出ていく二酸化炭素を0にすることが出来ます、しかし、それでも排出する二酸化炭素が多すぎれば森林による吸収量を上回ってしまい、結局大気中の二酸化炭素が増えてしまいます。」「経済活動の抑制によって温室効果ガス排出量は少なくでき、ある程度の経済の抑制なら可能なのではないでしょうか?僕たち若者世代がどれだけ頑張って新技術を開発して温室効果ガス排出量を減らそうがその分経済活動が増えてしまってはいたちごっこになってしまいます、そもそもの経済活動を抑えれば特に努力することなく割と簡単に温室効果ガス排出量を減らせるんです、配布資料の中にもある通り気候変動はもう非常事態宣言を出してもいいほどにまでなっています、法律での規制でも良い、企業同士の協定でも良い、経済活動を抑制していくことが一番の近道になる、と僕は信じています。」と大人への問題提起をしてくれました。

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(報告:小林敬)

2023年5月25日 (木)

時々晴れ、緑さわやかな足尾の森作業

本日の足尾の朝、8時40分の気温は13度、曇り空でした。Cimg0025

ゲート担当をしていると、8時20分ごろ高齢と思われる二人連れの方がゲートに来たので「おはようございます」と話しかけました。すると、これまで中倉山には4回登っているという事でした。今日は、中倉山のつつじが満開と聞きつけ見に行くとのこと。

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思わず、先日「孤高のブナ」の種を拾い育てた幼木「希望のブナ(愛称)」を植えましたので見守ってくださいというと。新聞に出てましたので「知ってます」と応えてくれました。それを聞いて、4月29日の森びとプロジェクトの歴史的なブナ保護活動に協力してくれた方々への感謝と遣って良かったと思いました。

 8時30分過ぎには、今日の参加者4人の確認できたので作業小屋に向かいました。いつものようにコーヒーを飲みながら打ち合わせを行いました。

午前中は、二人一組になり、石刻みと幹ガード外しに分かれて作業をしました。各杜の出入り口に置いた石に「民集の杜」と字を彫りました。グラインダーでは字の曲線を掘るのが大変でした。丸みのある所などは、松村健さんがタガネを使って、森づくりの思いを込めながら手彫りしました。

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一方の鎌田さんと加賀さんで約40本のシラカバの幹ガード外しを行いました。幹ガードの小さな穴から枝や葉を出していたので大変でした。数本が幹ガードを外すと幹が「お辞儀」をしているようになっていました。午後に竹や鉄筋などで添え木をする事にしました。

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昼食後、4人で先日ミツマタ、アセビを植えた所を点検し「みちくさ庭」の東側斜面や広場を観察し、「エコ散歩」に来る方の心に木を植えるための構想を話し合いました。その後は、午前中のやり残し作業と外した幹ガードや鉄筋、単管など軽トラで運び片付けました。

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作業小屋の前のビニールハウスが強風のためかシートが破れ・剝れていたので、新しいブルーシートを張りました。

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今日の足尾の花一輪Cimg0054_2  

本日の森作業は、鎌田、松村健、加賀、そして大野でした。                  (報告者は大野)

2023年5月20日 (土)

つめたい海風と雨の中での森作業

 本日(5/20)は朝から小雨が降り続き、霧も発生していたため視界もよくありませんでした。前回(5/2)の第2回植樹会場に10時に集合し雨カッパ着用で、打ち合わせを行いました。つめたい海風と雨によってヒンヤリとした中での作業でした。

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2023520_3 軽トラックから刈払機を下ろし、草刈り・枝払い作業の準備・点検を行いました

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2023520_7<森の中には、ヤブツバキなどの実生が育っていました。>

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2023520_9 今回の作業は「小雨決行」との事前連絡があったため応援隊スタッフも万全な体制で作業にとりかかってきました。作業終了後の達成感は笑顔と満足感の素敵な集合写真でもありました。広大な森は、草刈り作業を通じていろいろと発見できお互いのコミュニケーションも深まることもできました。今日はひんやりとした天候のため、岩橋事務局が事前に用意したホット麦茶を飲みながら休憩タイムを取りました。参加したスタッフから小雨での草刈り作業は大変でしたが暑くもなくよかった。一昨日は伊達市は体温に近い36.2度の猛暑日。温暖化によって地球がおかしくなってきています。5月27日の地球環境危機下で「いかに生きるか」を考えるシンポジウムには参加者のみなさんと一緒に考え学び共有していければとの話も出されました。第2回植樹会場は80%の草刈り作業を終了し育苗場へ向かいました。

 終了後、筆者は6月11日に開催する南相馬市鎮魂復興市民植樹祭の現地を見に行きました。

22023520 2年前に植樹した幼木は海風にも負けず立派に森へと生長していましたが、コロナ禍等で下草刈りなどのメンテナンス作業が行われていませんので今後の検討課題としていきたいと思います。

2023520_10 会場の準備・植樹会場準備は5月中旬から始まります。万全な体制で応援隊は、植樹祭実行委員会のスケジュールに基づき取り組んでいきます。全国の植林ボランティアのみなさんをはじめ多くの参加をお待ちしています。<写真の左側の盛土が今回の植樹会場です。その脇の右側は第9回植樹祭会場(2021.10・24)です。今回の開催場所は、原町区北泉地内海岸防災林1500名ー20000本の植樹予定です。

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今日の参加者は、松林代表、菅野副代表、小川事務局、岩橋事務局、筆者・東城でした。森びと宮城県ファンクラブの林代表も参加していただきました。さらにシラカシ200本の苗木のプレゼントもありました。ありがとうございました。草刈りと育苗・育樹作業にも力を入れていきます。

小雨の中大変お疲れさまでした。

           (報告 東城敏男)

2023520_11 <追伸>私たち森びと福島県ファンクラブと南相馬市鎮魂復興市民植樹祭応援隊の代表は、5月18日に飯舘電力株式会社を訪問し意見交換・交流を深めてきました。キッカケは、7年前に「原発に頼らない暮らしを考える市民フォーラムin南相馬」にパネラーとして参加していただいた会津電力会社の佐藤彌右衛門さんとの関わりでした。快く受け止めてくれ今後も情報発信と再生可能エネルギーによるメリットについても話し合うことができました。忙しい中、千葉副社長、米澤副社長、大変ありがとうございました。今後もよろしくお願いします。

                                                                         

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