2025年11月 9日 (日)

風雪に負けず「ブナの森」を目指して保護活動。

 11月3日(月)に開催した「足尾・中倉山のブナを元気にする恩送り」には38名(登山班32名、地上班6名)のボランティア、森びとスタッフが参加し、「孤高のブナ」の根を守る活動と「希望のブナ」(2023.4.29に植林)の生長観察を行いました。

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 今回は橋倉スタッフの呼びかけに応えてくれた足尾在住者3名が参加してくれました。慣れない登山のため早めに出発したいと、朝6時に足尾ダムゲートに到着。山田スタッフのサポートで登山口に向かいました。

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 「足尾に緑を育てる会」様からお借りした松木川を渡った右側の広場(仮設駐車場)に、乾燥させた黒土と草の種子の入った袋(植生袋)のセットと資材を準備し参加者を待ちました。

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 6時の気温は4度と寒い朝となりましたが、6時50分頃から順次参加者が到着し、植生袋を1個~3個、体力に応じて荷揚げしてもらいました。

 7時30分に参加者全員が出発。仁田元川沿いの道路を歩いていると雨が降り出したため、カッパを羽織り登山口を目指しました。このまま活動を継続できるか不安になりましたが、同行していた日光森林管理署・中村署長から「山の尾根筋が明るくなってきたので、じきに雨は上がるでしょう」というコメント通り、登山口に到着すると雨が上がりました。

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 8時20分、登山口で待っていた皆さんに合流し、濡れた登山道で滑らないように、みんなでゆっくりと登りました。雲間に青空が見えるようになり、最初の尾根に出ると低気圧の影響か風が強くなりました。

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 中倉山の南斜面の迂回路を歩くと南側の山々が紅や黄に染まり、見事な紅葉に参加者の皆さんから「きれいだなー」と感嘆の声が上がりました。10時40分には、全員が到着。

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 尾根に立つと飛ばされるような強風です。4月29日のブナ保護時は風速15mでしたがそれ以上の体感です。風に当たるとすぐに手がかじかみます。“ビュービュー”と風切音が聞こえ「孤高のブナ」は大きく枝を揺らしていました。

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 風を避けるため南斜面に下がり、山内さんと山田さんの指導で植生袋に黒土を入れる作業を行いました。

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 その後、北斜面の崩壊地に移動し植生袋を張り付けました。松木川源流の山が白い雲に覆われてきたと思ったら雪が吹きつけてきました。みなさん寒さをこらえながら袋が飛ばされないようにペグを打ち付け、51袋を張り付けることが出来ました。

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 根の保護活動終了後は南斜面に下がり、地面のむき出しになった場所と草地に水を流し、豪雨が降った時の違いを実演しました。むき出しの地面では小石が流され、土砂が流出する状況がわかりました。一方の草地では、水が吸収され土砂の流出を抑えていることがわかりました。2017年から根を保護し土砂の流出を抑える活動を行っていますが、少しづつですが斜面の崩壊を食い止めることが出来、カラ松が生えだすなど森の再生の可能性を見ることが出来ました。

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 4月29日の観察では「希望のブナ」の樹高は120㎝でしたが、147㎝に生長していました。生長の速さに、温暖化がブナの生長にも影響しているのかと心配になりました。

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 生長観察後、森びとプロジェクトより筆者・清水からお礼を述べさせていただきました。その後、ブナの保護活動への協力・助言をいただいている日光森林管理署・中村昌有吉署長より挨拶をいただきました。

 

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 今回、「孤高のブナ」の命名者である元毎日新聞記者・浅見茂晴さんが参加され、「孤高のブナ」が私たちにどんなことを伝えているのかをうかがいました。

 「15年ぶりに足尾に入り緑が根付いていた。コツコツやってきたことが緑の回復につながっており驚かされました。いつか“孤高のブナ”の“弧”が取れてたくさんのブナが生える様子を見たいと思います。そういう日が来ることを確信だけは持っています。これからも活動を続けていきます。」と話していただきました。

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 その後、参加者の足尾在住者の木藤さんと、40年前荒廃地の緑化に取り組まれた日光森林管理署署員の吉江さんより感想をいただきました。

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 今回は谷川岳の自然保護活動と重なりブナ保護活動に参加できなかった“みなかみ山岳ガイド”を行っている松原さんから、谷川岳にある「肩の小屋」の老朽化したトイレの現状を聞きました。年間4万人もの登山者がいる人気の山ですが、設置から30年以上経過し、トイレ数も少なく汚泥の処理、維持管理にも苦労されている状況のようです。

 『誰もが、気持ちよく使える「人にも環境にも優しい」トイレを!』と群馬県みなかみ町が整備プロジェクトを立ち上げ取り組んでいることに協力したいと、参加者の皆さんに賛同をいただきカンパをいただきました。松原さんを通じて町に届けたいと思います。賛同いただいた参加者の皆さまありがとうございました。

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 12時に下山を開始し、怪我人もなく終了することが出来ました。「中倉山のブナを元気にする恩送り」に参加いただいた皆さま、大変ありがとうございました。

次回の開催は2026年4月29日(水・祝日)の計画です。ご参加をお待ちしています。

(報告者 清水 卓)

2025年11月 8日 (土)

2030年の「松木郷」を彩る森を描いた手入れ

 今日の足尾の朝はフロントガラスが凍るほどの冷えでした。松木沢に着くと足尾グランドキャニオンが迎えてくれました。その様子を見ると、厳冬を迎え打つ逞しさが感じられました。20251108 今日は、森づくり20年記念行事をつくりだしてくれたスタッフ、サポーターが集う明日の準備とその進め方を話し合いました。4月から今月までの間、20年間に木を植えてきたシニアから若者たちを小さな森に案内してきたことを振り返り、2026年から本格的に始める「母なる森」づくり構想へ活かしていける意見交換ができるようにと、その素材を話し合いました。20251108_2 その後は、病気になったサクラの伐採、「森びと広場」周辺に植える紅葉やカエデを移植する場所決めと移植本数を確かめました。また、足尾町民が高齢化で管理できない浅間神社の「本坪の鈴」を広場に吊るした意味を看板に明記していく準備をしました。20251108_3 意見では、41、8℃という最高気温を観測した日本の今年、二酸化炭素排出量が過去最高だった昨年度の地球上、北極の海氷面積が過去最少を観測した今年前半、そして「パリ協定」の目標である気温上昇を1、5℃以下に抑えられないことが確実になったという気象現象下で生きているということを忘れない「標(しるし)」としての「本坪の鈴」等、色々な声を出し合っていこうとなりました。20251108_4

20251108_5上・写真は「臼沢の森」の紅葉
(今日の森作業は、清水、大野、報告は髙橋佳夫)

2025年11月 3日 (月)

中倉山ブナ保護の準備が整いました

 昨日(11月2日)は、足尾町の中倉山の稜線にある「孤高のブナ」保護活動の準備です。3日前の夜は足尾町も大雨が降り、昨日は強い風が吹き荒れました。

Dsc00657作業小屋の温度計は8℃でしたので、 薪ストーブに火を入れて暖をとりました。 

Dsc00658登山口までの道の状況が心配でしたので、3日の中倉山ブナ保護に参加者の皆さんが安心して通れるように田城さんと2人で登山口に向かいました。井戸沢下流ダムでは、山からの水が多く流れて砕石でいっぱいです。早速、通るときに靴が濡れないように砕石を整理して水の流れを変更しました。

Dsc00659_2 更に、セメントの道を進むと、倒木が多くあり道の脇に移動しました。

Dsc00660 もっと多くの障害物を想定していましたが、少なくて安心しました。

森びと広場に戻り、すでに乾燥した黒土がビニール袋に入れてくれていました。それを、もう一枚のビニール袋に種の入った袋を入れました。合計で60袋を作ることができました。他の準備資材と共に筆者の車に乗せました。

Dsc00661次回の保護活動に向けて、黒土を移植ごて等で細かく砕き、早く乾燥できるように作業をしました。

Dsc006623日は、多くの皆さんと一緒に中倉山の稜線に立つ「孤高のブナ」の保護活動が出来ることを楽しみにしています。本日の作業者は、橋倉さん、田城さん、坂口さん、大津茂美さんと筆者でした。(報告者:済賀正文)

2025年11月 2日 (日)

過ごしやすい「みちくさ」でした。

11月2日(日)は三連休の中日で好天に恵まれました。東武日光駅前は、紅葉に彩られた日光を楽しむ人々で溢れかえり、足尾へ向かう道もいろは坂方面へ向かう車で渋滞していました。遅れを見越して先に出発してくれた田城さんも30分遅れでの到着となり、「みちくさ」は少し遅れてのオープンとなりました。

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気温は11時半時点で16度と少し肌寒く、お昼頃からは雲と風が出てきて、なんとなく人がこなそうな雰囲気になりました。相方の田城さんは、明日のブナ保護活動の準備に入り、私はお掃除をしつつ誰かが通るのを待ちます。

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お昼を過ぎてそろそろ誰も来ないかなと諦めかけた頃、近くで観察会に来たという横浜からの方が訪れ、少ししてからその仲間の皆さんも連れてきてくださいました。「ツキノワの会」という、足尾や秩父で長年、自然の保護観察活動をされている団体のメンバー6名の皆さんでした。皆さんすぐに「みちくさ」看板のクマによる傷跡に気づかれ、とても楽しそうに観察されていました。それにしても、「毛が付着している」と気づくあたり、さすがの観察眼ですね。クマを始めとする動物たちのことをいろいろ教えて頂きましたが、もう少しお話をお聞きしたかったです。次回はぜひゆっくりとお立ち寄りください。

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動物の絵を描くプロの方もいらして、可愛らしいカモシカ、ツキノワグマ、アナグマの絵を描いてくださいました。ありがとうございます!

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ほぼ同じタイミングで、東京からお越しのSさんご夫妻が「松木村跡を見たい」と、みちくさの更に奥にある墓石のあるところまで行かれ、帰りに立ち寄ってくださいました。「足尾に来るのは二度目です。銅山・公害の歴史を学び、多くの方々の力で緑化が進んでいることを知り、感謝と感動の気持ちでいっぱいです。次回は(静かに)中倉山のブナを見に来たいと思います」と記帳してくださいました。中倉山のブナ保護活動は、次回は来年4月に実施予定です。ウェブサイトもぜひチェックしてみてください。初夏の時期もお勧めですので、ぜひ季節を変えてお越しください。

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今月を終えると「みちくさ」は冬季閉鎖期間に入ります。残りの営業日は、11月3日(月)、16日(日)、23日(日)、24日(月)です。少し寒くなりつつありますが、植樹地の木々たちがちょうど紅葉の見頃を迎えています。薪ストーブが灯るかもしれない「みちくさ」へ、ぜひ足をお運びください。(舎人 田城・小黒)

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強風に負けず「JRFUの森」を手入れ。木々の生長に笑みがこぼれる。

 11月1日(土)、足尾・松木郷は前夜からの雨も上がり、青空が広がりました。9時の気温は13度、広場の木々は葉を落とし始めていました。

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 今日は、7月に続き今年2回目となる森作業にJR貨物労組の皆さんが来てくれました。2009年に「臼沢の森」上部の急斜面に植樹を行い、以降、「JR貨物労組の森(愛称)」の育樹活動を行っています。

 ウサギやシカの食害にあい、なかなか木々が生長できず苦労しながら森作業を続けている貨物労組の皆さんですが、昨年から幼木1本1本に幹ガードを取り付け食害防止に取り組みました。

 今日の作業は、午前中は7月に刈り残したエリアの草刈りと幹ガード取り付け。植樹地上部(尾根)の獣害柵の修繕。午後は「民集の杜東」の案内です。

 9時に組合員の皆さんが森びと広場に到着し、作業小屋でミーティングを行いました。

 初めての参加者4名を含め13名が参加してくれました。大野さんから1日の作業計画を提案し、さっそく「JR貨物労組の森」に向かいました。

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 「臼沢の森」入り口で、獣害防止の亀甲金網や鉄筋、幹ガード、鎌などを分担しながら背負いあげました。急斜面の階段を休み休み登り植樹地に到着。

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 下から上に草を刈っていくため、組合員の皆さんが横一列に並び草刈りをスタートしました。やはり人数が多いと草刈りのスピードも速いです。北側の草刈りを終えた後は南側に移動し草刈りを行いました。

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 幹ガードは永島さんと済賀さんがペアを組んで行いました。草に埋もれた幼木を探しながら取り付けました。

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 獣害柵の修繕は加賀さんと筆者、組合員の協力を得て行いました。

 尾根沿いの獣害柵上部を補強したビニールの獣害防止ネットが劣化して外れたり、柵が大きく破られていました。幅1mの長さ30mの亀甲金網を北の端から南の端まで取り付けました。

 北の端から針金で止めていきますが、低気圧の影響で松木川上流から強風が吹きつけ飛ばされそうになりました。急斜面で足元は草で滑り、金網につかみながら針金で縛り付けていきました。南端の取り付け終えるまで風は止まず、足を踏ん張りながら作業を行ったため腰が痛くなりました。

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 11時40分に作業の目途がついたので作業を終了し下山することにしました。

 植樹地を眺めると木々の生長が確認できます。斜面南側は森になりつつありますが北側は食害で木々が少ないため、「来年は補植をしたい」と森づくりの希望の声が上がりました。

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 作業小屋に戻ると、大野さんが自家製の味噌と野菜(ダイコン、ニンジン、ゴボウ)を使った豚汁をつくりふるまってくれました。「冷えた体が温まった」と皆さん笑顔になりました。ごちそうさまでした。

 午後は、「民集の杜東」を散策しました。モミジがうっすらと紅葉しはじめました。林床には苔が広がり、杜の仲間となった「フユノハナワラビ」を鑑賞しました。木々が生長する様子を見て、「JR貨物労組の森」が生態系豊かな森に生長する様子を想像しました。

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 その後、参加された皆さんから、森の手入れや森を散策した感想をいただき意見交換を行いました。

初めて参加した方からは、

・はげ山が森に返っていて、人間の力ってすごい。鉄の柵を持って山を登り、草を刈った。森づくりは一筋縄ではいかないと実感した。森を守れる一人になれた。

・初めて登った。険しく、こんな絶壁でやっていたことに驚いた。柵の修繕をやったが風が強く飛ばされそうになった。壊すのは簡単だが戻すのは大変。継続していかないと戻らない。継続していく。

 そして、JR貨物労組を代表して関東地本・菊地委員長から「参加人数が多く、植樹地全体の草を刈ることが出来た。斜面の北側が食害で木が生えていない。来年は補植をしたい。若手と一緒に、仕事で疲れた心と体のリフレッシュも兼ねて植樹をする。」と抱負と強い決意が語られました。

JR貨物労組のリーダー、若手の皆さんお疲れさまでした。そして、貴重な水の差し入れありがとうございました。

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 気候変動の影響は鉄道にも被害を与えています。河川に架かる鉄橋が流されたり、線路の道床が削られ列車の運行に支障をきたしています。この夏は大雨が駅に流れ込み浸水する被害も出ています。

 仁平先輩と一緒に、二酸化炭素を吸収し、酸素を供給してくれる森を育て続ける貨物労組の皆さん。「森は友だち!」を合言葉に、地球環境と人間(生物)の命を大切にする心を育む「母なる森」づくりを行っていきましょう!

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本日の森作業参加者は、永島さん、大野さん、加賀さん、済賀さん、JRFUから伊藤さん、岡さん、中島さん、菊地さん、東城さん、梶村さん、吉岡さん、兼子さん、守屋さん、吉井さん、菊田さん、中村さん、山崎さん、筆者・清水でした。

(報告:清水卓)

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