樹々の紅葉と「孤高のブナ」から元気をもらい「希望のブナ」の生長を観察
11月3日(日)に開催した「足尾・中倉山のブナを元気にする恩送り」には39名(登山班35名、地上班4名)のボランティア、森びとスタッフが参加し、「孤高のブナ」の根を守る活動と昨年4月29日に植林した「希望のブナ」の観察を行いました。台風21号の影響で雨の心配がされましたが、前日夜に雨も上がり、快晴の下で開催することが出来ました。
朝6時30分の気温は6.3℃と寒く、まだ薄暗い「仮設駐車場」に森びとスタッフが集合し打ち合わせを行い、参加者を迎える体制につきました。大野運営委員、橋倉スタッフが足尾ダムゲートにスタンバイ。参加者を確認後、「足尾に緑を育てる会」様からお借りした松木川を渡った右側の広場(仮設駐車場)に誘導しました。
駐車場では乾燥させた黒土と草の種子の入った袋(植生袋)のセットを山頂に運んでもらうよう黒土5ℓ入りを60袋準備。加賀スタッフ、山田サポーターが受付けを担当し、山内サポーターが参加者の体力に応じて黒土の荷揚げをお願いしました。
到着順に7時頃から順次中倉山登山口を目指して出発しました。紅葉を見に日光に行く観光客で道路が混雑し、集合時間に間に合わない参加者の到着を待ち、最後尾を山内サポーターが努めました。
40分ほどで登山口に到着。登山口からはつづら折りの急坂が続き、昨日の雨で登山道がぬかるんでいないか一歩一歩確かめながら、小石や落ち葉で滑らないように慎重に登りました。今回は登山経験者が多く、不慣れな方をサポートし、休憩を取りながら登りました。
最初の尾根に到着し、木々の葉が紅や黄に色づいているのが見え、目の前のツツジにはピンクの花が咲いていました。休憩と水分を補給し出発。直登の坂を上ると遠くに「孤高のブナ」が見えました。
紅葉の遅れを心配していましたが、中倉山の南斜面の木々が黄色や紅に色づき、参加者の皆さんから「素晴らしい眺めですね」と自然が織りなす「風景」を堪能しました。
南斜面の迂回コースのミズナラの林を抜け、視界が広がると斜面の上に「孤高のブナ」、斜面下に「希望のブナ」が目に飛び込んできました。
10時40分、最後尾のグループと山内サポーターが到着し、済賀スタッフの司会で保護作業を開始。山田・山内サポーターの説明と実演を受けた後、二人一組となり種の入った袋に黒土を入れ、ブナの根が伸びる東側の「崩壊地」に張り付けていきました。雨で流されないように針金のペグを刺し、地面と接着するように踏みつけました。気温は20℃に上がっていました。
11時過ぎには作業を終え、南斜面を下がり「希望のブナ」の観察を行いました。獣害防止柵のおかげで食害もなく、枝は10㎝程伸び、樹高は120㎝に。緑だった葉も黄色から茶色に変化し、冬の備えに入りました。
森びとプロジェクトより筆者・清水からお礼を述べさせていただきました。その後、ブナの保護活動への協力・助言をいただいている林野庁日光森林管理署・中村昌有吉署長より挨拶をいただき、参加された中から、群馬県水上町の松原さん、宇都宮市の北岡さん、神奈川県の大津さん茨城県古河市の小林さんより感想をいただきました。
「山登りをやっている人は自然に関心ある人は多い。お役に立てればと思い参加した。体力の続く限り来年も参加したい。」「森びとスタッフからブナ保護活動を知り参加しました。人間が壊した自然を人間の手によって蘇らせる、元の原状に戻していくことを、山岳ガイドを通じて次世代の子供たちに伝えている。何か力になればと参加しました。」「黒土が重く、しんどいなという気持ちで登っていましたが、景色も素晴らしく、孤高のブナを見て今後も守り続けていかなければならないと思いました。」
「孤高のブナ」の生きる中倉山の山頂に立つと、100年前に人間の経済活動によって発生させた公害によって荒廃した山肌が目に入り不安になります。眼下には廃村に追い込まれた松木村跡とボランティアの手で育てられた広葉樹の色づく小さな森が育ち未来への希望が膨らみます。
参加された皆さんと、次世代の子供たちが生きることが出来る「地球」環境を残さなければならないという思いを合わせることが出来ました。「孤高のブナ」の“無言の語り”に耳を傾け、「人間のいのちと自然環境を大切にする心を育む森づくり」を進めていきましょう。
午後3時には参加者全員が下山し、怪我人もなく終了することが出来ました。「中倉山のブナを元気にする恩送り」に参加いただいた皆さま、大変ありがとうございました。
次回の開催は2025年4月29日(土・祝日)の計画です。ご参加をお待ちしています。
(報告者:清水卓)
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