中倉山「無言の語り木」(孤高のブナ)を元気にする恩送り
本日11月3日(火)は、『中倉山「無言の語り木」(孤高のブナ)を元気にする恩送り』を行いました。
煙害の影響で、今も”孤高のブナ”の生きる北斜面は表土がなく、風化した岩山となっています。大雨が降るとわずかに残る土壌も流出し、煙害に耐え120年以上生きているブナの根がむき出しとなってしまいます。当会は「無言の語り木」(孤高のブナ)を守ろうと、林野庁の指導もいただきながら、根を守る活動を行っています。
昨年は、林野庁の皆さんや宇都宮ハイキングクラブ、森ともの皆さんと一緒に、黒土と植生袋を背負い上げ、根がむき出しとなった斜面に植生袋を貼り付けましたが、今年は、コロナ禍でもあり、感染拡大防止の観点から、今回は森びと関係者10名で行うことにしました。
各自、10リットル入りの黒土を背負い、登山口を9時に出発。一路ブナを目指しました。登山口からは九十九折の急斜面、すぐに汗が吹き出します。小休止を取りながら登り、1時間ほどで最初の尾根に到着しました。
ここから中倉山の尾根を眺めると、一本スクッと立つ木が見えます。これから会いに行く孤高のブナです。
息を整え、尾根筋を更に上ります。青空が広がり、南側の山々の紅葉が目に飛び込んできます。疲れも一気に吹き飛びます。
登り始めから2時間。11時に待望のブナと再会です。
荷物を下ろし、早速、植生袋づくりです。2人1組となり、10リットルの黒土で草のタネが入った植生袋を2つ作ります。
ブナの根が伸びる北斜面を確認すると、むき出しとなっている根を見つけました。昨年貼り付けた下の段です。
出来上がった20 袋を斜面に貼り付け、鉄の杭で止めました。土壌流出地からすると猫のひたいほどかも知れませんが、木にとって大切な根端を守ることが出来ました。
ブナは葉を落とし、冬に備えています。
気候変動によって巨大化する台風や豪雨に耐え続けるブナは私たち人間に「暮らしの転換」を訴えているように思います。
2年前から張り付けた植生袋からは草が生え、もとの草地と一体化しています。引っ張っても取れず、土壌をしっかりと抑えつけていました。芽が出るとシカにたべられ、それでも根を張り、芽をはやす姿に涙が出そうになりました。
中倉山を愛する登山者のみなさんの“ブナを愛する心”にも感謝申し上げます。
作業を終え、森びとを代表して清水理事がお礼の言葉を述べ、ブナをバックに記念撮影を行いました。
南斜面に座り、紅葉する山々を眺めながら昼食です。ひと味プラスされます。
昼食を終え、下山の途につき、尾根筋から北側の松木方面を眺めると、荒廃地の中に小さいながらも紅葉する森が見えます。当会が15年前から多くのボランティアの皆さんと育てた森です。
松木川上流部の荒廃地に森が蘇るまでには、どれほどの労力と年月がかかるのでしょうか。人間が壊した自然は人間の手で直さなければなりません。一人の力は小さいですが、多くの森ともの皆さんとこれからも木を植え、いのちの森を育てたいものです。
下山は膝を痛めやすく、70才を超える先輩スタッフにはこたえます。背負う荷物を分担し、休みながら歩き、無事登山口までたどり着くことができました。
「ブナを元気にする恩送り」に参加していただいた森ともの皆さん、お疲れ様でした。横断幕作成に協力をいただきました、JREU大宮の皆さんありがとうございました。
本日の参加者は、松村宗さん、山本さん、清水さん、宮原さん、菅野さん、小柴さん、木村さん、 太田さん、野澤さん、筆者・小川でした。
(報告・小川 薫)
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