心に植えた森づくり15年の宝物・・・その②
足尾・松木村跡地の森は人がつくっている。現地で草木と向き合っているのは、「足尾スタッフ」と呼ばれるシニアが中心で、1年間に延べ約100日も現場に入っている。15年前に60歳だった方は75歳になった。40年間以上も労働現場で働いてきたシニアだから、培った知識や技量は様々で、その上、性格や価値観も多様でそれぞれに自信をもっていた。森づくり活動から去っていった方もいるが、森づくりは全員が初挑戦であった。
「ふるさとの木による命の森づくり」等は考えてもみなかったこと。宮脇昭先生からは、穴を掘らされ、その土の匂いを嗅ぎ、土も舐めて「木は根、根は土がいのち」という事を教えられた。苗木は、煙害でハゲ山になる前の木々の実を探し、収集した実をポットに蒔いて育てた。3年後には、その苗木を草地に穴を掘って植えた。植えた幼木は、翌年、幹と枝と葉が食べられた。根が残っていたので、食べられた苗木はほぼ全てが芽を出したくれた。
苗づくり、草刈り、獣害防止、植樹祭準備など全てが初挑戦だった。知識を持ち寄り、森作業から教えられたことを話し合ってきた15年間。何が正しいのかは分からない。良いと思ったことは実行に移した。この繰り返しの森づくり。どんぐりを蒔いて育て、幼木を植えて、ひとり立ちできるまで苗木を支えてきた。
苗木が枯れても仕方ない、苗木が食べられても仕方ない、何もしなければ森は育てられない。何もしなければ知恵も湧いてこない。このチャレンジ精神を貫き通したスタッフが育てた森は、これから何百年間も私たちの命を育む土台になってくれる。
この時季、15年前の草地が森になって、松木村跡地を訪れる方々に秋の紅葉を楽しませ、生きものたちの生息地となっている。(理事・高橋佳夫)
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