足尾の森と樹徳生の心をつなぐ『アカシアの樹』
8月23日に開催した『高校生の「森は友だち探し」』に参加した樹徳高校FM桐生放送委員会の生徒の皆さんが、9月3日(水)「防災の日」(9月1日)にちなみ、台風や地震などの災害について認識を深め、災害に対処する心構えを準備しようとFМ桐生でリスナーの皆さんに呼びかけました。
(2025年8月29日 FM桐生を訪問しました。FM桐生のリーフレットより掲載)
9月1日は1923年のこの日「関東大震災」が発生した日です。放送の中では「南海トラフ地震」や「首都直下地震」への警戒と備えも呼びかけられていました。
現在、地球温暖化によって世界各地で豪雨や干ばつ、山火事などの被害が発生し、住む家や多くの命が奪われています。桐生市では気温41度超える猛暑を記録し、ゲリラ豪雨は河川の氾濫、家屋の浸水などの被害を発生させています。
放送部の皆さんから1947年9月に発生した「カスリーン台風」の被害が大きかった地域の一つが桐生市であることが報告されました。堤防が決壊し渡良瀬川と桐生川を結ぶ新川(しんかわ)が氾濫。家屋が流され、多くの方が犠牲となりました。この時、樹徳高校も校舎が流出し廃校寸前という厳し状況に追い込まれたそうです。
その時、アカシアの木が学校の敷地に流れ着き、その流木から芽が出て根付き、生長して学校のシンボルツリーとなりました。(8月29日に学校訪問させていただきました)
この「カスリーン台風」は煙害によって木々を失った渡良瀬川上流を襲い、土石流によって川は増水、堤防が決壊し桐生市を含む下流域に大きな被害をもたらしました。あいつぐ台風被害によって治山・治水の重要性が国民全体に広く認識されるようになり、1950年に仁田元川、松木川、久蔵川の三川合流地点に「足尾ダム」建設が着工されました。
足尾の荒廃地の緑化で植えられた樹種は、ヤシャブシ、アカシア(ニセアカシア)、アキグミ、クロマツなどでした。春になると「臼沢の森」東側の斜面一面に植栽されたアカシア(ニセアカシア)が房状の白い花を咲かせます。
「カスリーン台風」から68年後、厳しい自然環境に耐え生き抜くアカシアの木を見守る生徒の皆さんが、松木川源流の森再生に取り組みます。「人間は森に寄り添って生きているんだよ」ということを伝えてくれていたのかと大きな縁を感じました。
松木の緩斜面の草地を耕すと砂と岩の多い土壌が表れます。黒土、腐葉土、バーク堆肥、炭を攪拌して植樹する土台を整えた「民集の杜北」に2016年から樹徳高校の先生、理科部・放送委員会の生徒の皆さんが体験植樹に参加してくれました。
(2025年8月23日 銅製錬の際に出た鉱滓カラミ。人間が草地に手を入れると森が蘇る。)
(2017年7月23日 体験植樹 大きく育つことを願い植えました。)
(2017年7月23日 民集の杜北 体験植樹 植樹地が広がりました)
森に入り、土に触れると、みんな笑顔になります。
(2023年8月21日 樹徳の杜 森の仲間(土壌動物)探し)
60cm程の苗木を植え、根本の乾燥防止に草をマルチング。一度植えると木々は動けないので草との競争になります。先輩が植えた苗木の生長を助ける後輩の皆さん。
(2017年7月23日 苗木の根元の乾燥防止と栄養になるマルチング)
(2018年8月5日 幼木が草に負けないように草刈り。草は根元にマルチング。)
生長するにつれ、森に住む生き物が増えていく様子を肌で、目で、耳で、五感で感じとる生徒の皆さん。
(2017年10月15日 環境学習 2005年~の「臼沢の森」を歩き”宝物”を探しました。)
(2017年10月15日 ”みちくさ”で、森の話を聞きました。)
(2023年8月21日 環境学習 森の友だちを探しました。)
(2023年8月21日 「樹徳の杜」でも木々の競争が始まり、樹高がのびてますよ。)
(2025年8月23日 樹徳の杜 見上げるほどの杜に生長 10mだ)
(2023年8月21日 川の生き物も増えたかな 松木川でひと休み。)
8月23日は、「森は友だち」であることを探し当てた皆さんと森の中で意見交換を行いました。
「自分が知らないところで、先輩たちが素晴らしいこと(森づくり)をやってきたのを知った。その森に触れることができて、いい経験になった」「生き物が好きだ。セミが鳴いたり、トンボを見たり、数十年前まで生き物がいなかった。自然と森びとの力強さだと思う」
(2025年8月23日 民集の杜西 苔むす森の中は涼しい。)
「10年で森になる。再生することに驚いている。教室では学べない。森を見て過去・現在・未来が学べる」
(2023年11月12日 森びと広場にホオノキを記念植樹しました。 冬、雪が多く降り、木の頭頂をサルに食べられてしまいました。)
(2025年8月23日 樹高は低くなったけど、枝を伸ばし大きな葉を広げています。)
(2025年8月23日 民集の杜西 多くの”宝物”を見つけました。 森は友だち!)
森に入ると、生物社会の一員だということを身体が、DNAが思い出させるのかもしれません。
FM放送の中では樹徳高校吹奏楽部の演奏による『アカシアの樹』(広瀬隼人 作曲)という曲が紹介されました。「人々が、傷つきながらも前を向いて一歩ずつ歩いている様子」を描いている荘厳な曲でした。
放送の最後に、「2016年から樹徳生が植えた苗木は、高さ10m以上に生長し、立派な森に育っていて感動しました。今後も植樹ボランティアを続け、地球温暖化防止に協力したいと思いました。」と足尾での環境学習の感想と未来に生きる子供たちのために地球環境を守る思いを伝えてくれました。
「森は友だち!」を合言葉に、多くの生き物の命を育む「母なる森」へと育てていきましょう。
J-Winds!
(報告 清水 卓)
コメント