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2017年3月 3日 (金)

足尾アルプス・中倉山のブナの“つぶやき”

 わしは年齢不詳。記憶にあるのは、この地の北斜面に棲んでいたダケカンバやミズナラ等の森の家族全員が衰弱し、土砂と一緒に松木川に流されていった時の叫び声だ。今から100年以上前の事だよ。だから100歳以上ということは確からしい。わしらの仲間では100歳はまだ若造だ。

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 ちなみに胴(幹)の直径が45㌢、背丈は10㍍程あるかなあー。現住所は中倉山頂上の稜線上だ。なんせ標高1.500㍍以上の地だから、わしらが棲むには厳しいところだ。

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 今年の冬はとくに厳しい。わしらの大切な足の指(※ 根端)が凍傷を患い、根が骨折しているからだ。少し位の寒さにはわしらの「知恵」でなんとかなるのだが、地中で栄養を探し当て、身体(幹)を支えてくれる足(根)が痛めつけている。とくに、松木川を見下ろす北斜面では土砂が流れ、足指(根)が露出している。仁田元川の南斜面は笹の根が斜面を覆っているから、この根と根端の共生が難しい。

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 3年前の新聞で「孤高のブナ」と紹介され、その後、NHKTV(栃木県内)でも動画が報道されてからは、わしに会いに来る登山者が多くなり、今も続いている。有難いことだが、その度に足元が踏み固められて困っている。土が硬くなっては、足指(根端)の働きが鈍ってしまうからだ。酸素や水の通りが悪くなってしまうのじゃぁー。

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 わしらが弱ってしまえば数年に一回オープンするブナのレストランが開店できず、ゾウムシやツキノワグマに申し訳ない。さらに、森の仲間たちのいのちの基盤である土壌をガードすることが難しくなってしまう。これに輪をかけて、1時間に100㍉以上の雨でも降ったら、わしらの力ではこの土壌は支えきれない。

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 生物社会の一員(人間)として、わしらのために“恩送り”事業を本気になってくれないか。もう、わしらの力でこの大地を守っていくには“待ったなし”だよ!。何とかわしらも頑張るから!・・・。(写真:2/26撮影)

(※)「根端」:「根の最端部のことで根が伸びる部分。長さは種類によってさまざまだが、数十分の1㍉(シロイヌナズナ)から2㍉(トウモロコシ)まで。色は白色。優れた感覚能力をもっている。小さな植物1個体でも、その根系には1,500万以上の根端がある。数多くの変数をたえず計測し、例えば、根の成長を正しい方向に導く機能、水、酸素、養分を探して土のなかを探検する機能等をもっている。」(NHK出版『植物は「知性」をもっている』より)(理事 髙橋佳夫)

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コメント

真冬の中倉山のブナを拝見させていただきました
 ブナの呟き身にしみました ブナを守りたいです そして同じ生物社会の一員として恩送りを
しなくてはならないと痛感しました

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