2025年5月 1日 (木)

森づくりの原点

森づくり20周年を迎える関連で、昔のデータを漁っていたのですが、故宮脇昭先生の言葉で気に入ったフレーズを自分なりにまとめた「昭語録」なるファイルがでてきて、懐かしさとともに、今読んでも全く錆びていない先生の言葉にまた力を頂きました。

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まずは大きな奇跡の話から。

「今、自分が生きていると言うことは、生命発生以来40億年、一度も遺伝子の伝達が切られなかったと言う証明です」
「生きていることは天文学的な奇跡」
「愛する人のために今残せるもの、それは緑なのです」

つづいて森を知る方法。

「見えるものを見て、それから見えないものを見る。つまり、心で見る、現場で見る」
「目で見、匂いを嗅ぎ、なめて、触って、調べろ」
「都市にも村にも、ふるさとの木による、ふるさとの森がある。現場を見ましょう。机の上でなく、現場、現場、現場」

そして植え方のヒミツ。

「その土地のホンモノの木は、厳しさに耐えて長生きします」
「植物は混植、密植が自然。好きな物だけを集めない。混ぜる、混ぜる、混ぜる。混ぜた中から本物が育つ」
「最高条件は、やがて自身を滅ぼす。最適条件がいいのです」

最後は矜持。

「木は自ら育つことに生命をかけています。私も森を育てることに生命をかけています」
「木は根で勝負。人は腰が勝負。だから、歩く、歩く、歩く」
「本気になって出来ないことは無い」
「人類に、最低限のユリカゴとして、本物の森を残したい」

出典も明らかではないので、もしかしたら間違って記録しているものもあるかもしれません。そしてもっとたくさんの紹介したい言葉がありますが、今日のところはあと少しでお終いにします。

「一番難しい荒廃地である足尾・臼沢の森づくりができれば、どこでも森は作れる!」

あの当時、折に触れて「足尾から世界へ」(どこでも〇〇から世界へ!とおっしゃっていましたけれども笑)と言っていたその言葉通り、今では先生の植え方による植樹方法は世界中で評価され実践されています。

「では君は何をやっているんだ?それが正しと思うなら、それをやりなさい」

辿るべき森づくりの原点はこの辺りにあるのかもしれません。(運営委員 小黒)

2025年4月30日 (水)

強風に耐える「孤高のブナ」の厳しさを体感し、「希望のブナ」の生長を見守る。

 4月29日(火)に開催した「足尾・中倉山のブナを元気にする恩送り」には48名(登山班43名、地上班5名)のボランティア、森びとスタッフが参加し、「孤高のブナ」の根を守る活動と2023年4月29日に植林した「希望のブナ」の生長観察を行いました。

 前日の雨も明け方に上がり、快晴の下で開催することが出来ました。

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 朝6時に足尾ダムゲートに到着し松木川源流を眺めると、中倉山から虹が伸びていました。今日参加するボランティアの皆さんと「孤高・希望の親子ブナ」をつないでくれているように感じ、寒い朝でしたが心が温かくなりました。

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「足尾に緑を育てる会」様からお借りした松木川を渡った右側の広場(仮設駐車場)に森びとスタッフが集合し打ち合わせを行い、参加者を迎える体制につきました。大野運営委員、橋倉スタッフが足尾ダムゲートにスタンバイ。参加者を確認後「仮設駐車場」に誘導しました。

 駐車場では乾燥させた黒土と草の種子の入った袋(植生袋)のセットを山頂に運んでもらうよう黒土5ℓ入りを60袋準備。加賀スタッフ、山田サポーターが受付けを担当し、山内・深津サポーターが参加者の体力に応じて黒土の荷揚げをお願いしました。到着順に7時頃から順次中倉山登山口を目指して出発しました。

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 登山口に向かう道路には、雪の多かった冬場に餓死したと思われるシカの遺体が雨で道路に流されていました。動物たちが足尾の冬を生き抜く厳しさを垣間見ることが出来ました。

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 40分ほどで登山口に到着。登山口からはつづら折りの急坂が続き、昨日の雨で登山道がぬかるんでいないか一歩一歩確かめながら、小石や落ち葉で滑らないように慎重に登りました。登山道の脇には黄色い花を咲かせたスイセンやスミレが咲き、疲れを癒してくれます。

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 最初の尾根を越え、直登の坂を登ると遠くに「孤高のブナ」と左側の斜面に食害ネットで囲われた「希望のブナ」が見えました。

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 南斜面の迂回路を歩くとピンク色のヤシオツツジが咲いており、足を止めて花見と記念撮影。ミズナラの林を抜け、視界が広がると斜面の上に「孤高のブナ」、斜面下に「希望のブナ」が目に飛び込んできました。登山経験者が多く10時20分には、最後尾のグループが到着しました。

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 尾根筋は風が強く「孤高のブナ」は大きく枝を揺らしています。風を避け、南斜面に下がり根を保護する植生袋づくりを行いました。

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 出来上がった植生袋を「孤高のブナ」東側の崩壊地に運び、山田・山内サポーターの説明と実演を受けた後、張り付けていきました。松木川から吹き上げる風に飛ばされないように押さえながら針金のペグを刺し、地面と接着するように踏みつけました。

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 尾根に立つと体が流されるような強さの風で体温も奪われます。根の保護活動終了後は南斜面に下がり「希望のブナ」の生長観察と、登山者に保護のお願いを伝える看板を設置しました。

 看板の除幕式は、ブナの幼木の植林と看板設置に協力をいただきました林野庁日光森林管理署の中村署長、徳川前署長、「孤高のブナ」の実採取から7年間育ててくれた松村さん、幼木を背負いあげてくれた大津さんの4人で行いました。雪山に生きる「孤高のブナ」の写真が写る看板に大きな拍手が送られました。

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 森びとプロジェクトより筆者・清水からお礼を述べさせていただきました。その後、ブナの保護活動への協力・助言をいただいている日光森林管理署・中村昌有吉署長より挨拶をいただき、参加された中から、群馬県水上町の松原さん、宇都宮市の木村さんより感想をいただきました。

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≪「希望のブナ」保護のお願い≫ 

【このブナは「孤高のブナ」の子で、「希望のブナ」と名付けました。過去の煙害による草木や村びとの怒りや悲しみなどの遺伝子を親から受け継いでいます。このブナには未来を生きる森(山)を愛する皆さんに、“森は友だちですよ!”と語りかけてほしいと願っています。「希望のブナ」が末永く生きられますように、皆様のご支援を望んでいます。】

 「希望のブナ」の樹高は126㎝、根元の太さは2㎝、昨年から伸びた枝の長さは10㎝でした。鹿の食害に合わないようにネットで覆いましたが、豪雪や豪雨、強風、暑さなど気候変動に負けずに生長してほしいと願います。

 看板は、親ブナが「希望のブナ」を見守れるよう北向きに設置しました。“煙害の歴史”と“未来への希望”を継承し、私たち森びとや登山者に、人生の厳しさと勇気、そして、”森は大切な友だちだよ!”と伝えてほしいと思います。

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 強風は止まず、参加者の計測では風速15m/sでした。11時30分には下山を開始し、怪我人もなく終了することが出来ました。「中倉山のブナを元気にする恩送り」に参加いただいた皆さま、大変ありがとうございました。

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 次回の開催は2025年11月3日(月・祝日)の計画です。ご参加をお待ちしています。

(報告者:清水卓)

2025年4月28日 (月)

“農民の父”として慕われた石碑で誓う

 正義と人道のために一身を捨てて尽くす民として慕われる「可児義雄」の慰霊式が4月に行われた。慰霊式には、毎年参加していましたが今年は確認不足で参加できませんでした。そのため慰霊式が終った後に、石碑のある集落の方と自分たち3人で、石碑前で線香をあげて村びとと話しをしてきました。

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私(戸松)としては、今の農村のあり方が見えてきた気がしました。村びとが高齢化してコミュニケーションを取りづらくなっています。私たちの活動も限られた方々になり、この村も来年の法要が気がかりになりました。

 慰霊式に参列する人が高齢化し式が続けられるか、その上、大事な交流会もできなくなるのか?小坂鉱山の争議を指導し、41歳で亡くなった後も多くの村びとにその心が引き継がれている。私たちも心配ですが、これからも慰霊式の継続には何かできることをしていくことを誓いました。

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 その後、村びと交流するひと時があり、その場では、同和(株)の労組もOBが高齢化し、この慰霊式参加よりメーデーに集中しているように感じる。また、毎年の植樹祭も村(細越地区)全体として行われているように感じられなくなっていること等が話されました。村びとは、植樹祭を「良いこと」と感じているというので、私たちは今後もしっかり協力していきたい。

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5月のゴールデンウィーク後には、同和(株)に植樹祭の問合せを行い、森びと秋田県ファンクラブとして参加していきたいと思います。

A690f789 同和鉱業(株)の碑文「誓い」では、『時代は、地球温暖化、資源枯渇、土壌汚染など山積された問題の解決と、自然との共生を望み、大きな変革の時をむかえております。私たちは、大切な次世代の子供たちのために、地元の夢と期待に応える・・・。』と刻まれていますが、改めて次世代の未來の基盤を築くきっかけにしていたいと思っています。

報告・秋田県ファンクラブの高杉さん、戸松さんの報告を基に文を作成しました。(運営委員・大野昭彦)

中倉山ブナ保護の土の準備ができました!

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 サクラが咲き乱れるもりびと広場にある木口に座り、山内さんは「ここで飲むコーヒーは最高です」とサクラの花と新緑を楽しんでいました。

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乾燥した黒土と種の入った植生袋の二点を更に新しいビニール袋に入れました。これでザックが汚れることはありません。 

Dsc00540 ハンマーやペンチ等と共に車に積み込みました。

Dsc00541  明日の天気は、晴れの予定ですので朝に皆さんの元気な笑顔にお会いで来るのが楽しみです。

 まだ時間が、ありましたので曲がってしまった鉄筋を真直ぐに戻しました。

Dsc00542 3時になりましたので、帰宅しました。

 明日は、中倉山ブナ保護の「恩送り」です。参加者の皆さまは、安全運転で起こし下さい。

Dsc00536  本日の作業者は、山内さん、坂口さんと筆者でした。

                               (報告者:済賀正文)

2025年4月27日 (日)

咲く花と爽やかな風吹く松木郷

本日の足尾・松木郷は、8時30分、気温12度、晴天。

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9時に責任者加賀スタッフから、「予定では臼沢西の森の“里親植樹地”の補植作業の予備日でしたが、補植は先日終了しました。そのため今日は、20年の森づくりのデータとして臼沢西の森に植樹にしている所の動画に撮りることになります。」と作業内容が報告されました。

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直ちに準備して現地に向かいました。現地では、済賀スタッフが、篠竹のある所に穴を掘り、黒土を入れ、苗木を植えて、マルチング、幹ガードの取り付けまでの一連の作業を動画に撮りました。他のスタッフも植樹を行いました。松木渓谷の奥から吹く風が汗ばむ体を爽やかなにしてくれました。

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昨日、「みちくさ」舎人で千葉県から来てくれた武田さんより、背負い籠2個を頂きました。その籠を今日の森作業で使わしていただきました。初おろしで籠を背負った済賀さんに感想を聞くと、「武田さんの森びとへの目配り、気配り、優しさを感じた」と言っていました。武田スタッフありがとうございました。

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その後は、臼沢の森、民集の杜などの動画を撮影し、やっとのことで13時30分に下山し昼食を取りました。

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 昼食後は、病気に感染したと思われる桜の木3本をチエンソーで伐りました。

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森びと広場の桜が枝の一部が膨れてコブがあり、そこから細い枝が何本も出て花も付けなくなりました。矢口森びとスタッフによれば、「木の病気でカビの菌によって起り、感染すると花も咲かず、樹勢が衰え枯れる原因になる」と言うので根元からチエンソーで伐り、フレコンに入れて済賀スタッフが自宅に持ち帰り焼却することにしました。

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それから、「みちくさ」の近くにある樹木を守っている幹ガードがサルやシカなどに悪戯されて、生長の妨げになっていたので鉄製のイノシッシのスカートを組み込んだ幹ガードに交換しました。

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松木郷は、八重桜がまもなく満開、そして足元では日当たりの良い石の間などに白色、紫色、黄色の花に心和む一日になりました。

本日の森作業は、加賀、済賀、清水、大山、そして筆者大野でした。

<報告者は大野昭彦>