2024年5月15日 (水)

草の根運動の先駆者から学ぶ

 森びとでは、4月6日に一般社団法人日本鉄道福祉事業協会との共催で「原発回帰と気候変動に向き合う生活を考える」意見交換会を開催しました。メインは科学ジャーナリストの倉澤治雄さんから原発総体を考える問題提起をいただくともに、今年1月1日に発生した能登半島地震で被災にあわれた塚本真如さんにビデオメッセージを受けて意見交換することでした。塚本さんのことで言えば、2月の新聞記事で1975年に珠洲市で原発建設計画が持ち上がり、2003年に建設の中止するまでの28年間の闘いを指導してこられ、今回の地震を受けて、見知らぬ人から当時の(珠洲市での)原発建設反対の闘いに感謝するメッセージが寄せられたことが掲載されていました。新聞社を通じて塚本さんを紹介していただき、話を聞くことができる機会をえました。

1715775786656 塚本さんは1月12日まで道路や携帯の電波が遮断されていた中におり、もし停止中の志賀原発が稼働していたら、海に逃げなくてはならなかったということだったのかもしれません。印象的な言葉として「日本人は(原発事故を)すぐに忘れてしまう。他人事」「はっきりとNOを言わない人が多い」「子や孫の世代に胸を張れる生き方をしなければならない」と言っていました。意見交換会での倉澤さんの写真で塚本さんの取材をされた様子が掲載されていました。3.11から13年が経ち、政府は原発を稼働させようと躍起になっています。この間の歴史を見ると、嫌らしいことに経済的に厳しい自治体の弱みに付け込んで原発の建設や核のゴミの受け入れを認めさせるやり方がまかり通っています。

 政治家や行政への批判は最もですが、同時に市民である私たちが自分たちの場でのいのちと生活を守るための運動づくりが大切であることを塚本さんたちの闘いで学ぶことができました。来月になってしまいますが、珠洲市や志賀町を訪れ、私たちに何ができるのだろうか掴んで発信したいと思います。

 最後に紹介したい本があります。桂書房さんから発刊されている『ためされた地方自治』です。是非、ご一読下さい。(運営委員・小林敬)

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天空の森の先人に見守られながら、「民集の杜北」の散策路を整備

 5月14日(火)、済賀さんが一足早く森びと広場の作業小屋に入り、森作業参加者の受け入れ準備をしてくれました。8時13分の気温は10℃、前日の雨で足元は湿っていますが雲も上がり青空が広がってきました。昼には20℃まで気温が上がりました。

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 作業参加者が到着し打ち合わせ。責任者の済賀さんから、「民集の杜北」の散策路の整備、草刈りと竹囲いを行うことが提案されました。前回の作業では加賀さんが竹囲い作りの指導をしてくれましたが、今日は加賀さんが不在のため、技術指導を受けた柳澤さんが手本を見せて竹囲いづくりを行いました。本日はJREU大宮の西垣さん、大室さんが参加してくれました。

 民集の杜(北)の銘板のある中央通路の整備を2人から3人のペアを組み作業をスタートしました。

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 大野さんと足尾町の中田さんが刈り払い機で通路の草刈りを行いました。

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 竹囲い担当は、通路の両脇に囲い用の長い竹を並べる担当、縦の支え竹を60㎝の長さに切り、90㎝の鉄筋を竹に通すために節を抜く担当、横の長い竹に鉄筋を刺す穴を3か所ずつあける担当などに分かれ作業を行い、通路入り口から組んでいきました。

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 縦の支え竹の芯になる鉄筋を地面に打ち込みますが、石にぶつかりハンマーを持つ手がしびれます。組み立ても慣れてくるとペースが上り、午前中は準備した鉄筋60本分、両側に20組つくることが出来ました。

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 昼食休憩をとり、午後は鉄筋100本を軽トラに積んで「民集の杜北」へ出発。

 午前中に継続して竹を組んでいきました。

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 5月15日が岸井成格さんの命日です。「民集の杜北」の東側入口には2018年に卒寿記念で植えた「ホオノキ」があり、大野さんが草刈りをしてくれました。新芽が伸び、天に向かって葉を広げ始めました。

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 今年は岸井さんの7回忌にあたり、NPO法人森びとプロジェクト委員会の結成から20年になります。「地球温暖化にブレーキをかけよう!」と宮脇昭先生(故人)と足尾の荒廃地に立ち、多くのボランティアの皆さんと森づくりを進めてきました。生長した森は生き物たちが命をつなぐふるさととなり、小中高校生や市民のみなさんが森に生かされていることを体感する場としても育っています。

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 天空の森から私たちの活動を見守ってくださっていると感じながら、杜の散策路整備にも力が入りました。

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 中央通路から左に折れる林内の道の「糺の森」入口までつくったところで15時を過ぎたので作業に区切りをつけました。午後は両側に33組の囲いをつくることが出来ました。

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 通路途中の広場には済賀さんが、丸太と甲羅板でベンチをつくってくれました。これから暑くなる季節、柔らかな日差しが降り注ぎ、風が吹き抜けるベンチは気持ちよさそうです。

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 道具を片付け、終了ミーティングをおこなって本日の作業を終了しました。

 本日の森作業参加者は、済賀さん、大野さん、橋倉さん、柳澤さん、田村さん、足尾町民の中田さん、JREU大宮の西垣さん、大室さん、筆者・清水でした。

(報告:清水 卓) 

2024年5月12日 (日)

ふるさとは淡い緑につつまれていました。親子三世代の里帰り。

 5月11日(土)、遊働楽舎 “みちくさ”の9時の気温は24℃。松木の郷は朝から青空が広がり、臼沢の森には“龍”が地上に降りてきたかのような雲が立ち上っています。

多くの訪問者を期待し、オープン準備をしました。

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 ジャンダルムを目指すクライマーやハイカーが“みちくさ”の前を通過していきます。帰りに寄ってくださいと声をかけて見送ります。

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 橋倉さんが放射線量の計測から戻り、コーヒーを飲みながら打ち合わせを行いました。

「足尾まるごと井戸端」の山田功さんが、足尾出身の3世代を松木に案内し、“みちくさ”に立ち寄ってくれるということで、楽しみに待ちました。

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 11時過ぎに松木渓谷から戻った山田さんが“みちくさ”に到着。親子三世代のご家族を案内してくれました。お茶を飲みながらお話をうかがうと、昭和20年代、中野さん(86歳)のお父さんが足尾銅山の坑内で働き、幼少期を足尾で過ごしたころの思い出を話してくれました。

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 現在は深刻な過疎の足尾ですが、当時は数万人が住む足尾で子供も多く、ラジオ体操も2回に分けて参加したり、小・中学校が本山、通洞、小滝に3つ有り、小滝のグランドで鼓笛隊の応援の下、中学校対抗陸上大会を開催したりと楽しかった頃のお話をうかがいました。医療や安全衛生に携わる娘さんからは、「安全第一」が主流の現在、「安全專一(あんぜんせんいち)」という労働安全衛生のさきがけをつくったのが足尾銅山だったことを学んだことが話されました。祖母と祖父の青春、家族のルーツが足尾にあったこと、家族の歴史を知る旅を通じて絆がより深まることを感じるお孫さんの様子は「負の歴史」で語られることの多い足尾銅山ですが、明るく、たくましく生きてきた祖父母の姿を通じて未来への希望が受け継がれていると感じました。

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 次回来られる際は、荒廃した足尾の山に蘇りつつある森を案内させていただきますのでお声掛けをお願いします。

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 次に訪問してくれたのは、オープン準備をしていた時に「松木村はどこですか?」と尋ねてくれた宇都宮市の小島さん73歳。初めて松木を訪れた小島さんは「足尾銅山は有名ですが来るのは初めてです。歴史を学びに来ました。」と探求心を持って松木渓谷を散策されました。渓谷入り口の高台にある「上の墓地」に気づき、手を合わせて下さったそうです。私たちは春秋の彼岸、お盆に掃除をして花を手向けていますが、私たちの活動を見守ってくださっている松木村民に心を寄せていただきありがとうございました。

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 次の訪問者は、矢板から来られた男性。「山登りの鉄人」のような方です。今日は阿蘇沢から日光側の黒檜岳を登り、シゲ山を越えて尾根伝いに小足沢を下り松木川に降りたそうです。「9時間歩きました。疲れたー」と、“みちくさ”でコーヒーを飲んで一息ついていただきました。にごり沢のペットボトルの小屋にも泊まったことがあり、皇海山など足尾の山々を登った話もうかがい、久しぶりの足尾の山だったようです。またのお越しをお待ちしています。

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 ロープを背負ったクライマーの皆さんも数組通過していきました。淡い緑に包まれた松木の森が微笑んでいるような1日でした。

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 咲き始めたハルジオン(春紫苑)にはシジミチョウやハナムグリ、小さな虫たちが集まっています。自然の恵みを分かち合っているようです。

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 「みちくさの庭」の野イチゴは小さな実が鈴なりです。木々が生長した森から流れる水は草花の生長を助けます。真っ赤に熟した甘いイチゴ、森の恵みを頂ける日が楽しみです。

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 多くの出会いのあった“みちくさ”舎人日となりました。「コーヒーはいかがですか」皆さまの訪問をお待ちしています。本日の舎人は橋倉喜一、清水 卓でした。

(報告:清水 卓)

命の息吹を感じる足尾・松木郷

Dsc00139 本日(5月12日)の足尾・松木郷は、曇り空で15℃(8時30分)で寒く感じました。

Dsc00138 銅親水公園の駐車場は満車でしたが、道路上に車の停車はありませんでした。

10時30分頃に東京都杉並区からお越しのHさんは、昨日足尾町内に宿泊して、今日の日の出と共に松木に入り「対岸に熊を発見して急いでシャッターを押しました」と嬉しそうな顔で熊の写真を見せて頂きました。奥様からのプレゼントの熊避けスプレーを持参していました。GW中には、北海道にラッコの写真を撮りに行きましたとのことです。休の日には、ツキノワ熊の写真を撮り続けているそうです。「ここは、良い所ですね、また来ます」と言っていましたので「森びとブログでみちくさの開舎日をお知らせしていますのでご利用下さい」と案内をしました。

Dsc00141 みちくさの脇の階段を小柴さんと大野さんが修理してくれました。7段を作り、全部で9段の立派な階段が完成しました。お疲れさまでした。Dsc00140

Dsc00143 午後には、大野さんが朝に御声掛けをした宇都宮市のNさんお二人が帰る途中に寄ってくれました。お二人とも完全装備のハイキングスタイルでした。Dsc00152 みちくさの閉舎準備をしていると「ジャンダルムを見てきました」とお二人が足早にダムゲートに向かって行きました。

みちくさの庭には、虫や木々の営みが見られ命の息吹を感じます。

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Dsc00149 本日の舎人は、大野さん小柴さんと筆者(済賀)でした。

2024年5月 7日 (火)

”つながり”から過去や未来をみつめる大切さ

20240507 「みちくさ」での出会いと森づくりで教えられたことは、人は森に寄り添っていかなければ生きていけないということ。「みちくさ」の建物は1902年に廃村になってしまった松木村跡地にある。銅の精錬過程で排出された煙害で農作物を育てられなくなった村びと。唯一、現金収入源であった桑の木も枯れ、養蚕が成り立たなかった。台風や大雨が降るとハゲ山から一気に雨水が松木川に流れ、洪水被害とともに下流の渡良瀬川流域の農民の生業も奪い、流域民の健康被害を強いた。来年は足尾の銅の精錬150年だが、森と人との“つながり”を衰弱させた傷跡は今でも消えることはない。20240507_2 自然界と人間との“つながり”から人間活動の歴史を振り返ると、人間が生きていくうえで超えてはならないガードラインがあるように思う。「地球環境の三重危機」(『毎日新聞』5/4社説)と向き合わなければならない私たちにとっては、エコシステムが健全に機能し、バランスがとれる範囲内の人間活動ということを基底にすえることではないかと思う。20240507_3 (森びとアドバイザー・高橋佳夫)