2025年5月17日 (土)

異常気象に向き合う草木の心構え?

20250517 梅雨を感じさせる足尾・「松木郷」の出会いの場・「みちくさ」。雨降る中での朝の気温は15℃。昼過ぎても気温は17℃で、いつもならオオルリやエゾハルゼミの鳴き声が聴こえるのに静かな一日中でした。この雨でヤマツツジの花びらは落ちそうです。この時季、緑一色の「松木郷」で目立つのは甘い香りを放っている白い花のミツバウツギ。何故かこの香りがすると私の頭には初夏の雰囲気が感じられる。20250517_2 昼過ぎ、雨が小降りになった瞬間に、頂いたパラソルを立ててみました。九州地方では観測史上初の早い梅雨入り。例年よりも早い時期に熱中症対策をしなくてはならないような気象予報。少しでも役に立ってほしいと願い、パラソルをたたみました。20250517_3 一日中雨の日でしたので訪問者はいませんでした。2人の舎人は、足尾町民から寄せられている草木の移植について話し合いました。町民からの高齢化が進んでいる中で、町民が大切に育ててきたシャクヤク、シャクナゲ、ゴヨウツツジ、サンショウを「みちくさ庭」に移植するスケジュール案を固めました。今月中に、町民が大切に育ててきた木々に樹種と氏名を記したプレートを付けて植えることにしました。20250517_420250517_6 昨日次世代を生きるJR東労組のトップリーダー達が植えたクリの木は今日の雨に元気を貰っている様でした。クリの木の背後に映る20年前に植えた樹々の森もエネルギーを蓄えて猛暑に向き合う準備をしているようでした。「こころの園」ではアヤメが蕾を膨らませていました。20250517_5

 千葉の森とも・相川さん、ソラマメありがとうございました。

20250516 本日の舎人は、橋倉、髙橋でした。(報告・髙橋)

2025年5月15日 (木)

2025年春の山火事

    前回はこの欄で雪害の話を書いたのですが、今回は一転して山火事についてです。

    国内では岩手県大船渡市で2月末に発生した山火事が記憶に新しいところです。これは平成以降日本で発生した最大規模のものともいわれ、焼失面積は2,900ヘクタール。数多くの現住家屋が焼失し、一人の方がなくなりました。大船渡市では、この前後にもいくつかの火災があり、他にも日本各地で発生しました。

    さらに激しいのが、1月に米国ロサンゼルス地域で発生した山火事で、その焼失面積は約16,200ヘクタール。15万人以上が避難し、この中にはドジャースの大谷選手もいたことから、日本でも大きく報道されました。この災害では24人の方がなくなっています。被害にあわれた皆様には心よりお見舞い申し上げます。Screenshot_20250515_184204_word

今年の山火事予防のポスター

 

    山火事の原因はいろいろ言われますが、その多くは人為によるものです。最近ではごみの焼却、野焼き、キャンプの焚火などが主な原因になっています。乾燥し風の強い時期、例えば北国の春の雪解け時期などには細心の注意を払う必要があります。

    国有林の職員として働いていたとき、特に北海道などでは5月の連休がこの山火事危険期にあたるため、休みの日も職員が分担して署に待機していました。もちろん対策は国有林だけではできません。危険期の前には自治体、消防、住民組織と連携して、地域住民へ注意喚起し、何かあれば消防、森林管理署へ連絡してくれるようお願いする会議などがありました。

    足尾の山林荒廃も、銅精錬の煙害だけでなく、繰り返し起きた山火事も原因の一つと言われ、日本一の造林地である北海道のパイロットフォレストも山火事の跡地です。

    山火事による被害は経済的、人的なものだけでなく、地域生態系も甚大な影響を被ります。そうした中、最近は地域の結びつきの希薄になっていることが気がかりです。

(運営委員・井上康)

2025年5月14日 (水)

「松木郷の森」は花盛り、蜜を吸い命をつなぐ森の友達たち

 5月13日(火)、足尾・松木郷の森は青空が広がり、9時30分の気温は17℃。昼過ぎになると日陰のない森びと広場の気温は26℃に気温も上昇、夏日となりました。

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 今日の森作業は、午前中は16日に「エコ散歩in足尾・20年の森の生長観察と記念植樹」に来られるJR東労組本部の皆さんの受け入れ準備。午後は「民集の杜北」の林縁に生えるムラサキシキブ(南東側)とアセビ(東側)の移植に向けた現場調査を行うことにしました。

 JR東労組は、森びとプロジェクトの活動をスタートから支援してくださる皆さんで、記念植樹には、鉄道のレールを支え、縄文時代から人間が食料として・家材として利用してきたヤマグリの幼木を植えます。ヤマグリの幼木は、高橋アドバイザーから提供いただき、栁澤スタッフが運び入れてくれました。

 植える場所は森びと広場の「記念植樹エリア」です。クヌギやホウノキ、エノキ、モミジなど大きくなる木が植えてあり、生長を見越して植える場所を決めました。

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 道具を準備し、植える穴を掘り始めました。表層は草が生え黒土もあり柔らかかったのですが、堀進につれ、砂土と小石の層になりスコップが刺さりません。ツルハシで固まった砂土に穴をあけ、崩しながらかきだしました。「カーン!」と岩にスコップが当たる音がし、手がしびれます。岩の周りの砂を崩し、ツルハシを差し込んで隙間を開けながら掘り出しました。木々を失った山から転がり落ちてきた岩の多さに悲鳴を上げながら、腰を落とし両手で持ち上げて穴の外に出します。一気に疲れがでます。交代しながら幅120cm、深さ70㎝の穴を掘りました。

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 根が下に伸びる様に黒土を10袋入れ、その土地になじむように砂土を戻して混ぜます。

 土が乾かないようにブルーシートをかけ、ヤマグリの幼木も根周りの土が乾燥しないように土を盛りました。幹が風で倒れないように竹の支柱を縛りました。

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 記念植樹エリアは獣害柵で囲んでありますが、サルの食害を警戒し、幹をガードする柵を組み立て、16日の植樹準備を終えました。

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 昼まで1時間ほどあり、広場に植えたハルニレに「次世代の木」の看板を立てました。

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 続いて、東側に植えたカツラの幹ガードが伸びた枝と葉で窮屈となって、生長を妨げており、鉄製の獣害柵に取り替えました。

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 ちょうど12時になり食事休憩としました。昼食後に16日の案内スケジュールと担当、案内ポイントの打合せを行い、午後の作業に入りました。

  「民集の杜北」の西側入口にはツツジが真っ赤な花を咲かせ、ドウダンツツジが可愛らしい花を咲かせています。

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 ムラサキシキブは密状態で柵から枝を伸ばしているため、次回根の張り具合の確認や、移植する木を選定していくことにしました。東側獣害柵沿いのアセビをどこに移植するか杜内を歩くと、東西に延びるヤシャブシ北側の堀の斜面に黄色い花が咲き、モミジやサクラの幼木が生えていました。斜面の土がふかふかし、林縁で適度な光が入り込んでいることから、アセビの移植地に良いのではないかと話になりました。

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 「民集の杜北」には、岸井成格さんと宮脇昭さんの記念樹があります。5月15日が岸井さんの命日(2018年没)となり、ホウノキの食害ネットを外して生長を観察しました。これから葉を広げる様子です。そして、2015年に岸井さんがボランティアの皆さんと一緒に植樹した苗木たちは立派な杜に生長しています。

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2015521≪2015年5月21日 足尾・ふるさとの森づくり≫

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 煙害で山の木々が枯れ、廃村となった松木村跡地は草むらが広がっています。精錬ガスから硫酸を取りだすようになり69年、閉山から52年経った今もその様子は変わらないようです。人間が草地を開墾し、わずかな黒土や腐葉土を入れ苗木を植えると、木々の競争と風や鳥、動物たちが加勢して森の仲間が増えてきました。「まだまだ20年。温暖化の影響は世界中に被害をもたらせているぞ!」と岸井さんの激が飛んできそうです。

 松木郷に蘇りつつある小さな森・杜を「母なる森」へ、多くのボランティアの皆さんと力を合わせ育てていきたいと思います。

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 作業小屋に戻りがてら「民集の杜東」のフデリンドウが花開いているか見に行きました。2㎝程の小さなフデリンドウが咲いていました。また、シロガネスミレやギンランも花開いていました。大きな桜を見上げた後は、足元の小さな花々が楽しめる松木郷の杜に生長しています。16日に来られるJR東労組の皆さんと、森に住む「友だち」探しをしたいと思います。

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 本日の森作業参加者は、大野さん、橋倉さん、加賀さん、栁澤さん、矢口さん、筆者・清水でした。

(報告:清水卓)

2025年5月11日 (日)

風は強く雲が速い、みちくさ訪問者を待つ

本日の足尾、8時50分気温16度、晴れていましたが、風が強い一日となりました。

朝、田城さんと二人で、「みちくさ」オープンの準備をし、打ち合わせを行いました。田城さんから、昨日は雨で誰も来なかったと聞き、今日は晴れているので訪問者が来ることを願って9時30分にオープンしました。

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しかし、一時間が過ぎても、「みちくさ」の前を通り過ぎてウメコバ沢方面に行く人は誰もいませんでした。

今月16日にJREU 本部の人たちが「松木郷の森」に来てくれます。その時に使用する長テーブル11台とパイプ椅子33脚の拭き掃除をしました。暫く使っていなかったので、こびり付いたホコリを濡れ雑巾で三度も拭きました。

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それから昼食をとりました。食べながら、田城さんが橋倉さんと「お花見の会」に来てくれた足尾町民の星野さん家に、シャクナゲを見に行った話になりました。1mから3mのシャクナゲが沢山あり、帰り際に「いつでも取りに来ていいよ」と言われたというので、食後にどこに植えたら良いのか、二人で民集の杜や森びと広場を散策しました。森びと広場に行くと、八重桜の花が散り地面が花びらの絨毯で足元がフカフカで気持ち良かった。

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森びと広場北斜面の「こころの園」でひと際目立つ花がありました。それは、「貧乏草」と言われている花でした。二人で少し抜いて整地しました。私は、家に帰ってネットで調べたら、「名前がハルジオン、多年草、荒れた土地でも生え、草刈りしても根を抜かないと翌年も生えてくるほど強い生命力を持っている」と書かれていました。 

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 「みちくさ」に帰ってくると、足尾町民の髙橋橋栄一さん他2名と橋倉さんが来てくれました。「花見の会」の時に「あまりにも美しい松木に感動し、友人二人を連れてきた。」と。嬉しい限りです。苔テラスのウワミズザクラの木の下で、「松木郷の森」に多くの方に来ていただきたいと、話が弾みました

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森づくり20年の「松木郷の森」と花が、少しずつ町民の方と繋げてくれ、人間は森に生かされている、“森は友だち“と感じた一日でした。

本日の舎人担当は、田城と大野でした。

<報告者は大野昭彦>

荒廃地に木を植えて20年、森を再生する懸命の試みを墓前に報告

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≪2009年5月 足尾・ふるさとの森づくり≫

 5月10日(土)、NPO法人森びとプロジェクト委員会を立ち上げ理事長として「森づくり」を牽引された岸井成格さんのお墓参りに行きました。時がたつのは早いもので、岸井さんが「天空の森」に旅立って7年(2018年5月15日逝去)になります。

 霊園の参道を歩くと、前日からの雨に洗われた霊園の木々の葉がつやつやとし、緑鮮やかです。

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 11時にお墓に到着すると霧雨の中、阿部さん、岩田さん、小林さんが伸びた草と“どくだみ”を摘み取っていました。筆者は、伸びた柘植の木の枝を剪定しました。墓石に落ちた葉を取り除き、水で洗い流しきれいにすることが出来ました。

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 お墓に岸井さんの好きだった日本酒(純米酒)をお供えし合掌。小林さんが5月4日TBSテレビ・サンデーモーニング“風をよむ”で紹介された森びとの活動(旧足尾銅山跡地に立つ「孤高のブナ」煙害で焼失した森を再生する懸命の試み)を報告しました。

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 番組では、現在も広がる足尾の荒廃地2400haの中で、森びとが木を植え手入れをしてきた20年の森が5.6ha、わずか0.2%と紹介されました。先人が緑化活動を行ってきた、むき出しの岩場や急斜面の多い松木川源流の荒廃地を緑化する難しさも20年の活動で知りました。

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≪2025年4月29日 中倉山のブナを元気にする恩送り 孤高のブナと北斜面に広がる崩壊地≫

 同時に、岩や小石の多い草地を耕し黒土と腐葉土など、わずかな栄養を与えて苗木を植え手入れを続けると、苗木自らが砂地に根を伸ばし、落葉が栄養として還元され、木々の競争で生長していくことも知りました。そして、木々が生長すると風や小鳥、アリや動物たちが木々や草花のタネを運び、森の仲間を増やし、森づくりを加勢してくれることも知りました。

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≪シロガネスミレ≫

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≪苔に包まれるフデリンドウ≫

 20年前、岸井さんが「臼沢の森」に植えた苗木は樹高15mに生長しています。落石を押さえ雨水を根に溜め、二酸化炭素を吸収し、多くの生きものの命をつないでいます。

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≪2025.5.6掲載 下野新聞社提供・承認済み≫

202556_4 ≪2025.5.6掲載 下野新聞社提供・承認済み≫

 岸井さんが「地球温暖化にブレーキをかけよう!」とスタートした森づくり。人間の経済活動によって「気候崩壊」と言われるほどに温暖化は進行し、世界各地に被害をもたらしています。墓前に立つと「食い止めるヒントは0.2%の森にあるぞ」と岸井さんの声が聞こえてきます。そして「愛する人の命を守るために木を植えよ!足尾から世界へ」と麦わら帽子に長靴姿で荒廃地に木を植える宮脇昭先生の姿が目に浮かびます。

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≪2005年5月 第1回足尾・ふるさとの森づくり≫

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 “煙害で焼失した森を再生する懸命の試み”はまだまだ続きます。松木郷の森を「母なる森」へ、森を愛する多くのボランティアの皆さんと手を携え、山と心に木を植えていきます。

(運営委員 清水卓)