2025年5月 4日 (日)

日曜の朝は孤高のブナから、ではなく「みちくさ」松木から

今日はみどりの日。愛読の毎日新聞はいつもは青い題字が緑となって、地元、下野新聞も森の問題が一面でした。そして、TBSのサンデーモーニングの「風をよむ」のコーナーでは森の特集として、なんと、わたしたち森びとの活動が紹介されました。


YouTube: 旧足尾銅山近くに立つ「孤高のブナ」 煙害で消失した森を再生する懸命の試み【風をよむ・サンデーモーニング】|TBS NEWS DIG

「みちくさ」のスタートは9時ですが今日は少しだけサボって(スミマセン)足尾町にある仲間のお宅にお邪魔し、まずはみんなで番組を見ることに。

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どんな風に紹介されるのか、取材時の話を聞いたりしながら期待感は高まります。番組では、公害の原点と言われる足尾の煙害を背景に、その象徴である「孤高のブナ」が紹介され、私たちの保護活動と、20年にわたる植樹活動についての紹介もありました。

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思った以上に丁寧にそしてたっぷり紹介頂き、皆わがごとのように(わがごとではありますが)喜んでおりました。終わってからはたくさんのメッセージが届き、まだまだテレビの力の大きさは健在だと感じ入りました。膳場さんはじめ取材にかかわった皆さま、本当にありがとうございました。みちくさにもまたお立ち寄りください。

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というわけで、興奮冷めやらぬ中、いつもの「みちくさ」がスタートです。みどりの日にふさわしい新緑にピンクの八重桜が映えます。オオルリの複雑な鳴き声とウグイスの安定感のあるさえずりにキジのケンケーンがアクセントとなって響きます。目の前をアナグマが横切りましたが、病気なのか喧嘩でもしたのか目のあたりがただれて痛々しく見えました。森びと広場の大きな石がめくれていたので、もしかしたらクマが現れ、そしてもしかしたら格闘の痕だったりするのかもしれません。

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今日は舎人(みちくさ担当)がいつもより1名多いので、私はスタッフの済賀さんに教えてもらいながら、植樹地の一つである「りんねの森」の食害防止柵(幹ガード)のメンテナンス作業を行いました。そのために鉄の棒を地面に刺すのですが、20センチも入るとたいがい岩に行き当たります。お陰で手に力が入らなくなるぐらいトンカチで叩くはめになりましたが、表土が思いのほか薄いことに驚きました。土ができていない。これが足尾の現状なのでしょう。見た目では緑が増えてはいますが、本当の森になるにはまだまだ長い年月が必要そうです。

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また、別働で、もう一つの植樹地「民衆の杜(東)」の植物を調査したところ、今回初めて「ギンラン」を観察することができたとの報告がありました。それもかなり多くでたようです。他にも確認できた植物を少し紹介します。

Dsc00381初お目見えの「ギンラン」

Dsc00346まさに筆!?「フデリンドウ」

Dsc00359山帰来「サルトリイバラ」これで柏餅を作る地方もあります

Dsc00373どこから来たのか「シロガネスミレ」

午後にニゴリ沢を目指して6名のパーティが奥に進んでいきました。うーん、楽しそう。

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その後、群馬の渋川からいらしたお二方が散策の帰りに立ち寄ってくださりました。昨年末にも来ていただいた親子で、お父さんはなんと8●歳(見えない!)。今回も森びとのタオル購入にて活動にご協力頂きました。いつもありがとうございます!四季の変化も楽しいですし、たくさんの動物や鳥(や人)たちが出迎えてくれますので、次もまたぜひ遊びに来てくださいね。

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GWも後半、毎年言っておりますが、この季節の足尾は超穴場です。街歩きもできますし山歩きもできる。そして疲れたらぜひ、ちょっと足を延ばしてみちくさにお立ち寄りください。(舎人:橋倉、清水、小黒)

R0004195そして明日は「子供の日」よいマンデーモーニングをお過ごしください。

2025年5月 3日 (土)

写真映えするGWの足尾・松木郷

 本日9時の気温は18℃、天気は晴れでした。

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20250503_093115 10時ごろに2人組の男女が松木沢より下りてきたので橋倉さんが声をかけると、中倉山を目指していたことが分かり、みちくさに招き入れて、地図等で中倉山へのルートを説明をしました。次回は中倉山へのチャレンジ成功を祈念します。

20250503_123657 また、同じ時間に埼玉県から来られたHさんも来舎されました。「3週間前に中倉山に行きました」と仰っていて、カメラで熱心に風景を撮られていました。ノートには「すてきな風景の中にあるので、何度でも遊びに行きたくなります」と書いて下さいました。

20250503_102625 11:30には3人組の男性が来舎されました。3人でバイクツーリングをしに旧松木村を目指して来てくれました。東京都杉並区から来られたKさんより、娘さんから教えてもらったという1冊のマンガ本が紹介されました。『こいしとこさめの旅チャンネル』第1巻で、その134ページに松木渓谷(旧松木村)が紹介されており、それがきっかけで2人を誘って松木沢まで来られました。

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20250503_201851 Kさんからは「美しさとそれを保つ努力に感銘を受けました。この場所は子孫に語り継がせて頂きます。ありがとうございました」、埼玉から来られたNさん「美味しいコーヒーをいただき、歴史の話も聞けてありがとうございました」、東京都北区から来られたKさん「当時のお話を有難う御座いました。情景が思い浮かぶようでした活動も素敵です。応援しております」とノートに書いてくださいました。

 また、このマンガはを進呈していただきましたので、ここみちくさに置かせていただきます。Kさん、ありがとうございました。

20250503_114519 今日は、済賀さんと山田さんが森作業に来て、臼沢西の苗木の周りを保護する幹ガードの補修等をされていました。強風によって傾いてしまったものがあり、里親植樹に賛同いただいた方々が思いを寄せた苗木を大地に根付かせるために、日ごろからの手入れは欠かすことはできません。

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1746270435443 午後は、取水口の確認をしに行き、その後民集の杜・北を散策しました。

20250503_143449_2 特に先日、スタッフの済賀さんが新しく作ってくれた木の支柱を作ってくれて、その完成具合の素晴らしさに驚かされました。植樹当時から10年ほど経過していましたので、森の観察に来る方々を迎えるにあたって、きれいな木の支柱は周りの新緑や空の色などと相まっていました。済賀さん、ありがとうございました。

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(今日の舎人は橋倉・小林、森作業は済賀・山田、報告は小林でした)

2025年5月 1日 (木)

森づくりの原点

森づくり20周年を迎える関連で、昔のデータを漁っていたのですが、故宮脇昭先生の言葉で気に入ったフレーズを自分なりにまとめた「昭語録」なるファイルがでてきて、懐かしさとともに、今読んでも全く錆びていない先生の言葉にまた力を頂きました。

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まずは大きな奇跡の話から。

「今、自分が生きていると言うことは、生命発生以来40億年、一度も遺伝子の伝達が切られなかったと言う証明です」
「生きていることは天文学的な奇跡」
「愛する人のために今残せるもの、それは緑なのです」

つづいて森を知る方法。

「見えるものを見て、それから見えないものを見る。つまり、心で見る、現場で見る」
「目で見、匂いを嗅ぎ、なめて、触って、調べろ」
「都市にも村にも、ふるさとの木による、ふるさとの森がある。現場を見ましょう。机の上でなく、現場、現場、現場」

そして植え方のヒミツ。

「その土地のホンモノの木は、厳しさに耐えて長生きします」
「植物は混植、密植が自然。好きな物だけを集めない。混ぜる、混ぜる、混ぜる。混ぜた中から本物が育つ」
「最高条件は、やがて自身を滅ぼす。最適条件がいいのです」

最後は矜持。

「木は自ら育つことに生命をかけています。私も森を育てることに生命をかけています」
「木は根で勝負。人は腰が勝負。だから、歩く、歩く、歩く」
「本気になって出来ないことは無い」
「人類に、最低限のユリカゴとして、本物の森を残したい」

出典も明らかではないので、もしかしたら間違って記録しているものもあるかもしれません。そしてもっとたくさんの紹介したい言葉がありますが、今日のところはあと少しでお終いにします。

「一番難しい荒廃地である足尾・臼沢の森づくりができれば、どこでも森は作れる!」

あの当時、折に触れて「足尾から世界へ」(どこでも〇〇から世界へ!とおっしゃっていましたけれども笑)と言っていたその言葉通り、今では先生の植え方による植樹方法は世界中で評価され実践されています。

「では君は何をやっているんだ?それが正しと思うなら、それをやりなさい」

辿るべき森づくりの原点はこの辺りにあるのかもしれません。(運営委員 小黒)

2025年4月30日 (水)

強風に耐える「孤高のブナ」の厳しさを体感し、「希望のブナ」の生長を見守る。

 4月29日(火)に開催した「足尾・中倉山のブナを元気にする恩送り」には48名(登山班43名、地上班5名)のボランティア、森びとスタッフが参加し、「孤高のブナ」の根を守る活動と2023年4月29日に植林した「希望のブナ」の生長観察を行いました。

 前日の雨も明け方に上がり、快晴の下で開催することが出来ました。

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 朝6時に足尾ダムゲートに到着し松木川源流を眺めると、中倉山から虹が伸びていました。今日参加するボランティアの皆さんと「孤高・希望の親子ブナ」をつないでくれているように感じ、寒い朝でしたが心が温かくなりました。

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「足尾に緑を育てる会」様からお借りした松木川を渡った右側の広場(仮設駐車場)に森びとスタッフが集合し打ち合わせを行い、参加者を迎える体制につきました。大野運営委員、橋倉スタッフが足尾ダムゲートにスタンバイ。参加者を確認後「仮設駐車場」に誘導しました。

 駐車場では乾燥させた黒土と草の種子の入った袋(植生袋)のセットを山頂に運んでもらうよう黒土5ℓ入りを60袋準備。加賀スタッフ、山田サポーターが受付けを担当し、山内・深津サポーターが参加者の体力に応じて黒土の荷揚げをお願いしました。到着順に7時頃から順次中倉山登山口を目指して出発しました。

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 登山口に向かう道路には、雪の多かった冬場に餓死したと思われるシカの遺体が雨で道路に流されていました。動物たちが足尾の冬を生き抜く厳しさを垣間見ることが出来ました。

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 40分ほどで登山口に到着。登山口からはつづら折りの急坂が続き、昨日の雨で登山道がぬかるんでいないか一歩一歩確かめながら、小石や落ち葉で滑らないように慎重に登りました。登山道の脇には黄色い花を咲かせたスイセンやスミレが咲き、疲れを癒してくれます。

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 最初の尾根を越え、直登の坂を登ると遠くに「孤高のブナ」と左側の斜面に食害ネットで囲われた「希望のブナ」が見えました。

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 南斜面の迂回路を歩くとピンク色のヤシオツツジが咲いており、足を止めて花見と記念撮影。ミズナラの林を抜け、視界が広がると斜面の上に「孤高のブナ」、斜面下に「希望のブナ」が目に飛び込んできました。登山経験者が多く10時20分には、最後尾のグループが到着しました。

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 尾根筋は風が強く「孤高のブナ」は大きく枝を揺らしています。風を避け、南斜面に下がり根を保護する植生袋づくりを行いました。

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 出来上がった植生袋を「孤高のブナ」東側の崩壊地に運び、山田・山内サポーターの説明と実演を受けた後、張り付けていきました。松木川から吹き上げる風に飛ばされないように押さえながら針金のペグを刺し、地面と接着するように踏みつけました。

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 尾根に立つと体が流されるような強さの風で体温も奪われます。根の保護活動終了後は南斜面に下がり「希望のブナ」の生長観察と、登山者に保護のお願いを伝える看板を設置しました。

 看板の除幕式は、ブナの幼木の植林と看板設置に協力をいただきました林野庁日光森林管理署の中村署長、徳川前署長、「孤高のブナ」の実採取から7年間育ててくれた松村さん、幼木を背負いあげてくれた大津さんの4人で行いました。雪山に生きる「孤高のブナ」の写真が写る看板に大きな拍手が送られました。

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 森びとプロジェクトより筆者・清水からお礼を述べさせていただきました。その後、ブナの保護活動への協力・助言をいただいている日光森林管理署・中村昌有吉署長より挨拶をいただき、参加された中から、群馬県水上町の松原さん、宇都宮市の木村さんより感想をいただきました。

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≪「希望のブナ」保護のお願い≫ 

【このブナは「孤高のブナ」の子で、「希望のブナ」と名付けました。過去の煙害による草木や村びとの怒りや悲しみなどの遺伝子を親から受け継いでいます。このブナには未来を生きる森(山)を愛する皆さんに、“森は友だちですよ!”と語りかけてほしいと願っています。「希望のブナ」が末永く生きられますように、皆様のご支援を望んでいます。】

 「希望のブナ」の樹高は126㎝、根元の太さは2㎝、昨年から伸びた枝の長さは10㎝でした。鹿の食害に合わないようにネットで覆いましたが、豪雪や豪雨、強風、暑さなど気候変動に負けずに生長してほしいと願います。

 看板は、親ブナが「希望のブナ」を見守れるよう北向きに設置しました。“煙害の歴史”と“未来への希望”を継承し、私たち森びとや登山者に、人生の厳しさと勇気、そして、”森は大切な友だちだよ!”と伝えてほしいと思います。

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 強風は止まず、参加者の計測では風速15m/sでした。11時30分には下山を開始し、怪我人もなく終了することが出来ました。「中倉山のブナを元気にする恩送り」に参加いただいた皆さま、大変ありがとうございました。

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 次回の開催は2025年11月3日(月・祝日)の計画です。ご参加をお待ちしています。

(報告者:清水卓)

2025年4月28日 (月)

“農民の父”として慕われた石碑で誓う

 正義と人道のために一身を捨てて尽くす民として慕われる「可児義雄」の慰霊式が4月に行われた。慰霊式には、毎年参加していましたが今年は確認不足で参加できませんでした。そのため慰霊式が終った後に、石碑のある集落の方と自分たち3人で、石碑前で線香をあげて村びとと話しをしてきました。

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私(戸松)としては、今の農村のあり方が見えてきた気がしました。村びとが高齢化してコミュニケーションを取りづらくなっています。私たちの活動も限られた方々になり、この村も来年の法要が気がかりになりました。

 慰霊式に参列する人が高齢化し式が続けられるか、その上、大事な交流会もできなくなるのか?小坂鉱山の争議を指導し、41歳で亡くなった後も多くの村びとにその心が引き継がれている。私たちも心配ですが、これからも慰霊式の継続には何かできることをしていくことを誓いました。

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 その後、村びと交流するひと時があり、その場では、同和(株)の労組もOBが高齢化し、この慰霊式参加よりメーデーに集中しているように感じる。また、毎年の植樹祭も村(細越地区)全体として行われているように感じられなくなっていること等が話されました。村びとは、植樹祭を「良いこと」と感じているというので、私たちは今後もしっかり協力していきたい。

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5月のゴールデンウィーク後には、同和(株)に植樹祭の問合せを行い、森びと秋田県ファンクラブとして参加していきたいと思います。

A690f789 同和鉱業(株)の碑文「誓い」では、『時代は、地球温暖化、資源枯渇、土壌汚染など山積された問題の解決と、自然との共生を望み、大きな変革の時をむかえております。私たちは、大切な次世代の子供たちのために、地元の夢と期待に応える・・・。』と刻まれていますが、改めて次世代の未來の基盤を築くきっかけにしていたいと思っています。

報告・秋田県ファンクラブの高杉さん、戸松さんの報告を基に文を作成しました。(運営委員・大野昭彦)